ザックジャパン “スーパーサブ”に滑り込むのは誰だ? | 注目ニュース情報ステーション

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ファンとメディアに開放され、ほぼ満員で埋まったメインスタンドのちょうど反対側。ハーフウェイラインの延長線上で、アルベルト・ザッケローニ監督が腕組みをしたまま目を光らせている。

 千葉県内で行われてきた日本代表候補合宿の最終日となる9日、20人のフィールドプレーヤー全員に45分間ずつのチャンスが与えられた流通経済大学との練習試合で、立ったままの指揮官は選手たちの一挙手一投足を注視しながら、求める「適性」があるかないかを確かめていた。

 「慣れない選手たちとプレーする中でスムーズに力を出せるかどうかを、この合宿で見極めることが重要だと考えていた」

 これまでザックジャパンに招集された選手たちが攻撃陣を占めた前半は、ゴールを奪うことができないまま0対0で終了した。メンバーが入れ替わった後半。今合宿で初めてピッチ上でプレーした選手が大半を占める中で、FW川又堅碁(アルビレックス新潟)が躍動した。

 依然として無得点で迎えた30分。右サイドバックに入った鈴木大輔(柏レイソル)が攻め上がり、ゴール前へ低く速いクロスを入れる。トップスピードでニアサイドへ飛び込んできたのは川又。宙を舞いながら効き足の左足で確実にボールをとらえ、ネットを揺らした。

 ゴールという結果を残した川又だったが、試合後の言葉はなぜか弾まない。
 「ただ単に取っただけなので。もうちょっと(ゴール前に)顔を出せる場面はあったし、もっとゴールに向かうプレーを多くしないと。ゴールに直結するような、裏への抜け出しとかもできなかった。そういうところを、もっと意識しないといけない」

 1点だけじゃ物足りない。決して満たされることのない川又のハングリーな思いが、周囲にひしひしと伝わってくる。後半の開始6分。右サイドを攻め上がったDF]塩谷司(サンフレッチェ広島)のクロスに同じように飛び込んだが、左足によるボレーはバーの遥か上を超えてしまった。

 決定機を外した事実を、脳裏から消去できないのだろう。川又の声のトーンは上がらない。
 「もっと点を取らないといけない場面があった。そっちを反省しないと」

ブラジル行きの切符を手にできるのは23人。ザッケローニ監督が「4年間やってきてベースになるグループがある」と明言するように、特にフィールドプレーヤーの20人のうち17人から18人はすでに確定していると言ってもいいだろう。

 残りわずかとなった枠に割り込むために必要なのは、すぐにチームに馴染める順応性を示した上で、複数のポジションをこなせるユーティリティーぶりか、あるいは攻守のどちらかで突出した「個」をアピールするしかない。

 右サイドバックの内田篤人(シャルケ)、センターバックの吉田麻也(サウサンプトン)が故障離脱している状況において、その両方でプレーできるポリバレント(多様性)を示した鈴木と塩谷の存在感は今合宿で大きく増した。

 左サイドから相手の最終ラインの裏へ抜け出せる選手を必要とするザッケローニ構想の中で、前半にプレーした齋藤学(横浜F・マリノス)と後半に出場した原口元気(浦和レッズ)、35分に2点目をあげた南野拓実(セレッソ大阪)の争いは今後も激しさを増していくだろう。

 そして、勝ち点が欲しい場面で相手ゴールをこじ開けられる力を秘めたスーパーサブとして白羽の矢を立てられたのが、生粋のゴールハンターである豊田陽平(サガン鳥栖)と川又となる。

 ザックジャパンで4試合に出場したアドバンテージを持つ豊田は前半のピッチに立ったものの、17分に放たシュートが相手GKの真正面を突くなど、FWにとっての絶対的な指標となるゴールを刻めなかった。J1で5ゴールをあげ、得点ランクのトップに並ぶ豊田は短い言葉に無念の思いをにじませた。

 「今日は結果を残せなかった、ということです」

 昨シーズンに得点ランク2位となる23ゴールをマークし、無名の存在から一気にブレークを果たした川又は自身の武器をこう表現する。
 「泥臭いプレーじゃないですか」

 昨年8月以降のザックジャパンのワントップは、柿谷曜一朗(セレッソ大阪)と大迫勇也(1860ミュンヘン)が務めてきた。ともにスマートなプレースタイルを身上するだけに、守備を含めて前線を愚直に動き回る豊田、元日本代表のゴン(中山雅史)を彷彿とさせるようにゴールを追い求める川又はそろって異質に映る。

 しかし、同じタイプは2人も必要ない。スーパーサブとしてザックジャパンに生き残れるとしたら、どちらか1人。もちろん、ともに涙を飲む可能性もある。意思の疎通を欠くことの多い急造チームで指揮官が求める結果を残した川又は、しかし、まだ1ゴールしかあげられていないアルビレックスにおける現状をしっかりと見つめていた。
 「最近点を取っていないので、今日のゴールを勢いにつなげたい。チームに持ち帰ってプラスにしないと」

2008年にU‐19代表に選出されたのを最後に、川又は日の丸と縁がなかった。候補とはいえ、A代表の雰囲気を味わったのも今回が初めてとなる。緊張と興奮が交錯したはずの3日間を、しかし、成長途上の24歳のストライカーは「楽しかった」と振り返っている。

 「いろいろと勉強になった。みんな上手いし、いつもだったらボールが出てこないタイミングでも、自分を見てくれている。すごく刺激になった。もっと、もっとサッカーが上手くなりたいと思った。こういう場所にまた来られるように頑張りたい。そのためにはチームで結果を残さないと話にならないので、そこはシビアにとらえないと」

 川又のファインゴールの感想を求められたザッケローニ監督は「個人に言及したら、他の22人にも触れないといけない」とはぐらかしたが、最後にこう言い残すことも忘れなかった。
「できる限り、ぎりぎりまで悩みたい」

 ブラジルの地に臨む日本代表23人が発表される5月12日まで、残り1か月とちょっと。その間に行われるJ1の8試合で確固たる結果を残し、心身のコンディションがW杯仕様になっていることを証明できるか。すべては、その点にかかってくる。

 帰りのバスに乗り込む間際。アルビレックスでは不動のエースを務める川又に、90分間ではなく、途中出場でも結果を残す自信はあるのかと聞いた。
 「(スーパーサブが)得意かどうかは分からないけど、いつもゴールは狙っています」
 髪を短く刈り上げ、あごひげをたくわえたワイルドなマスクに、ようやく笑みが浮かんだ。

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