<部門新設の際に良くある問題>


さて、晴れて新部門として経営企画が立ち上がったとして、次に気をつけなければいけないのは、手段と目的を整理することです。


これをない交ぜにしたままスタートすると、新しく物事を始めても、負荷が増えるばかりで、結果に結びつきません。


最悪のケースは、責任の擦り付け合いになります。


例えば。。


役員 ...

「わざわざ役員連中や関連部門に頭を下げて、新部門にアサインされる人物が現行業務からきちんと足を洗えるよう、また社内から協力を得られるよう、調整を続けてきた。結果、晴れて部門を新設し、専任の部門長も任命した。部門長の希望とおりに人員もアサインした。なのに結果が出ないというのでは、華々しくぶち上げた自分としては面子が立たない。新設部門の部門長は何をやっているのか」


新設部門の部門長 ...

「進捗はゼロではなく、確実に前にすすんでいる。どうしても新設部門は教育や下地作りなど軌道にのるまで時間がかかり、今は産みの苦しみで、努力しているのに結果が出ない、「踊り場」にいる。周りの目もあり、部門としては一番つらい時期で、ここを乗り切れば成果が挙がるという大事な時期なのに、この苦しい時に、本来はバックアップして欲しい担当役員が、まるで自分は蚊帳の外であるかのように、新設部門に対して批判的な発言を連発する。この役員は具体的に何を求めているのか。いつまでに、どこまで達成すれば満足してくれるのか。期末に結果だけ見てNGと言われても困る」


このケースでは、役員は「部門新設」そのものが目的化しています。新設するための調整に力を尽くすことは大いに賞賛されるべきことなのですが、いざ設立までたどり着いたら、ついつい安心してしまいがちです。あるいは結果がうまくいった場合のみ自分の関与を高らかに宣言し、うまくいかない場合は自分は関係が無いような言い方をする、そのような悲しい事例もありますが。。


また部門長の方は、「部門の運営」が大変に重荷であり、それを回していくことの大変さを、ついついエクスキューズにしてしまいがちです。部門の運営、特に新設部門となれば実業務に手をつける前の段階で、整えなければいけないことがたくさんあります。確かに運営するだけでも大変です。


しかしそうは言っても、部門の新設は、本来はあくまで目標達成のためのステップの一つに過ぎません。よって明確な目標設定なくして、立ち上がった組織をただ漫然と運営しているだけでは、いくら一生懸命に頑張ったところで、本来の目的は達成できません。


少し話がそれますが、このように目標に向かってすすんでいる途中段階において、身内の人間からネガティブな情報を社内に発することは、目標達成を阻む重度の致命傷になります。誰しも責任をかぶりたくないという気持ちはがあるのは理解しますし、他部門の人間からたぶらかされて、四面楚歌にならないよう予防線を張りたくなる気持ちもわかります。しかし、そのような態度は、どうしても無責任としか見えないもので、最終的には信頼されない人間という烙印を押されることは間違いありません。経験上、注意して改心する可能性は低く、放置すると回りにも蔓延することが間々ありますから、そのような人物はアサインから外すのが賢明でしょう。


尚、ゴールが不明確な場合、会社の上層部など他の人に「決めてくれ」と迫るよりは、関与する人たち自ら積極的に掲げていく姿勢を採っていくことをおすすめします。なぜなら、このほうが部門メンバーが、より積極的に目標に対するコミットが醸成されるからです。


立ち上げて、回し続けて、目標も達成する。簡単ではありませんが、一定期間以上を経過すると、このような「有言実行」の形の方が、やりがいや達成感は大きくなると私は思います。人もついてきます。


結局は「職務分掌とゴール」に常に立ち返ること、また「目的と手段」を明確に整理すること、これを心掛けることが大事なのだと思います。


<このブログで言うところの「経営企画」とは>


そんなわけで、このブログでカバーする範囲について、私自身の経験に準じてすすめていくと、皆さんの立場における職務やゴールとは異なってしまうかもしれません。しかしそれは仕方の無いことです。


そうは言っても共通の話題もきっとあると思っています。これから先、このブログはテーマごとに各論を述べていく形式をとりますが、私の方で現在考えているテーマの一例として、以下があります。


●BCM、BCP、DRP(事業継続性計画、障害復旧計画)


●KPI、ABM(ABM)、管理会計


●業務設計、プロセス可視化、BPR


●システム導入の手法


●コンプライアンスプログラム構築


●BSC(バランストスコアカード)、評価制度


●グループ企業管理、組織設計


●部門の新設、運営


テーマが流動的である点については、ご容赦いただければと思います。。

<正解は?>


前述のように、たとえ同じ会社の中であっても、一つの部門に対する見方が、人によって異なるケースも、実際に多々あります。

では経営企画部門に所属する立場になったとして、実際にどのような立場をとるのが正解でしょうか。


答を先に言えば、


「職務分掌とゴールの明確化」


を掲げることが先決です。


職務分掌とゴールを明確化するには、「トリガー」に立ち返る方法が効果的です。


<「トリガー」に立ち返る>


どんな部門でもそうですが、その部門を新設する時点までさかのぼれば、必ず何かしらの「思い」が込められているはずです。


例えば、ある役員がリスク管理部門の新設を提案する場合。その役員の頭の中には、


・部門によってばらつきのあるリスク評価に統一感を持たせ、


・これも部門によってばらついているリスク対策を、全社横断的な形態に切り替える。


・これらの結果として、リスク対策の効果を平準化し、また財務インパクトを最小化し、


・これまで「間接業務」的な扱いで当事者意識なくおざなりになっていた各部門のリスク対策を、独立した部門で一括管掌することにより、責任の所在が明確になる。


・またその費用対効果の測定も正確になる。


このくらいのことは考えると思います。いや、最低限考えておかないと、稟議が通らないでしょう。


このように、何かを新しく始めたり、何かを変えたり、という「変化のきっかけ」となる事象を「トリガー」と呼びます。


このトリガーを深堀して、整理していくことにより、責任範囲や達成目標をあらためて定義しなおすのです。


とくに経営企画のような、解釈がぶれる可能性のあるアサインメントについては、トリガーを深堀し、「そもそもの存在意義」を明確に定義しなおすことが、成果を挙げるためには大変重要になってきます。


これは所属メンバーが使命感を感じることにつながるので、良い意味でのプレッシャーになります。


また社内における位置づけを明確化することによって、社内各部門との連携が円滑になります。


勿論、職務分掌やゴールを明確化することによって、逆にコンフリクトが起こることもあり得ます。あるいは言葉は悪いですが窓際的な役職の場合は、クリアに業務を定義することが難しいケースもあります。


このあたりは組織論として、各論で別途お話の場を設けたいと思います。


実は、このように「そもそもの存在意義」を定義することは、必ずしも新設部門のみならず、経理や人事など、多くの会社で既に存在している部門についても同様、実施することの価値は大です。


これは、複数の部門で同じような業務を重複して担当していたり、逆に重要な業務であるにもかかわらず、どこが担当するのか明確になっていなかったりすることを、解消するきっかけになるためです。


そして、ひいては会社全体の目標達成のために、各部門のベクトルが揃っているかどうかを検証する際にも、避けては通れないステップとして、定期的に実施しておく価値があるものです。


この意義とすすめ方についても、後段の各論の中で述べていきます。



< 「経営企画」という言葉の意味>


言葉自体は良く耳にします。


そして、その意味するところは、おそらく人によって定義や解釈に大きな開きがあるのだろうと思います。


そもそも「経営」という言葉。それそのものが広く深い意味を含んでいて、「経営って具体的にどんな業務?」と聞かれても、会社によって目指すところや実状が異なり、具体的な業務を示すものとして、一般論の共通解が存在するような類のものではありません。


「企画」の方はどうでしょうか。


「経営」よりも少し具体的ですが、それでもどんな作業が「企画」に含まれるのかについては、自由な解釈が許されてしまいます。


例えば構想を練るだけが企画なのか、実行まで含むのか、など。


そんな「経営」と「企画」という、ある意味ぼんやりした意味合いの二語が組み合わされて、「経営企画」という言葉ができています。


言葉自体は新しいものではなく、よって既に市民権を得ている印象があります。


人から「経営企画」と聞かされて、「聞いたことのない言葉だな」と感じる人は少ないと思います。 しかし同時に、具体的な業務は何なのか、ピンとこない仕事でもあるでしょう。


なにやらその言葉の響きや雰囲気から、とても崇高で難しい仕事のようでもあり、あるいは特命を受けた者だけにしか知らされない影の仕事のようでもあり、気軽に「経営計画って何やる部署?」と聞き返すのもはばかられるような、そんな空気感をかもし出しているのではないでしょうか。


<実際の経営企画部門の社内における位置づけ>


実在のある人物の、経営企画部門に対して持っているイメージ。


・会社の方向を定めるべく常に第一線の仕事を任されていて、


・マネジメント直轄で、他の部門をぐいぐい引っ張るリーダ的な存在で、


・社内でも目立つ部門の一つであり、生え抜きの従業員が担当している、


という印象。


翻って、これも実在の別の人物の解釈では、


・常に陰の役割で、別の部門がリーダーを務める案件を支える立場を演じていて、


・存在が感じられない地味な部門で、


・皆が嫌がる仕事を、他部門の顔色を伺いながら、自分の主張なく落としどころを探って調整するのが任務。


・「御用聞き」あるいは「下請け」の部門と見られている。


異論反論あるでしょうが、しかし現実に、このように相反する声があるのも、また事実です。