9月12日、代々木公園で、第7回スリランカフェスティバルが開催されました。この催しは、在日スリランカ大使館が主催し、多くの在日スリランカ人が出店やステージでの出し物を通して参加するもので、毎年多くの日本人、スリランカ人などが会場に訪れます。記者が訪れたのは、フェスティバル二日目の日曜日。会場には子供連れを中心に多くの人がいましたが、それでも毎年このフェスティバルに通う常連の方から言えば「今年は少ない方」なのだそうです。「今年の猛暑の影響だろう」とも、ある出展者はおっしゃっていました。
映像では、スリランカティーの出店、アーユルヴェーダの出店、ある変わった材料の文具店、スリランカ仏教寺院、を順番に紹介しています。
出店の種類で、飲食以外で最も目立ったのはスリランカティーの出店でした。紅茶は、スリランカの総輸出収入の15%、GDPの2.5%にも上る、スリランカにはなくてはならないもの。政府は「紅茶局」を設置し、その品質管理に努めています。紅茶局が検査したセイロンティーには、シンハラ人(スリランカ人の多数民族)の象徴であるライオンのシールが貼られているそうです。
スリランカ仏教寺院の出店は、テーラワーダ仏教という教派のものでした。この名前ではなじみがないですが、「上座部仏教」「南伝仏教」と言えば、世界史で習ったという人も多いのではないでしょうか。現在も、スリランカ人の70%を占めているシンハラ人の大多数がテーラワーダ仏教を信仰しています。
今回のフェスティバルのテーマは「スリランカ、新たなる時代の幕開け」。昨年の2009年に、スリランカ政府は、「タミル・イーラム解放の虎」(LTTE)という反政府武装組織の最高幹部らを殺害し、組織を壊滅、1983年から26年続き全土で6万5000人以上の犠牲者を出した内戦を終結させました。ただ、LTTE支持者は未だ国内に多くいるとされ、スリランカ政府も兵数を20万から30万に軍拡する計画を立てるなど、予断を許さない状況にあります。LTTEを支持する人々は、スリランカ人口の30%であるタミル人で、その多くがヒンズー教徒です。そもそもこの紛争の端緒が、1970年代初頭のシンハラ・ナショナリズムの高揚と、政府によるシンハラ人優遇処置(シンハラ語公用語化・仏教国教化)であることを考えると、現在シンハラ人を主体とする政府側もタミル人に対する宥和策を取らなければならないと考えます。
日本は紛争中も多くのODA(政府開発援助)をスリランカ政府に援助し続け、スリランカの仏教徒の中からも「日本は同じ仏教国として自分たちの味方になってくれる」という意見が支配的だと言います(※1)。私たちはスリランカを遠い国と思いがちですが、ODA拠出額をみると日本はスリランカ政府総受入額の25%を占めて一位となります(※2)。また、明石康元国連次長が政府代表としてスリランカ紛争停戦に向けて積極的に関与してきました。決して遠い国ではないのです。
今回のフェスティバルで最も印象的だったのは、スリランカの方々の活気です。会場隅で自然発生的に皆で太鼓に合わせてダンスしているのも印象的でした。停戦がこのまま継続し、シンハラ人タミル人のわだかまりのない歴史を歩むことを祈っています。
1951年日本が独立を果たしたサンフランシスコ講和会議に置いて、スリランカは他国に先駆けて賠償要求を放棄し、外交関係を結びました。会議の壇上で当時のスリランカ大統領、J・R・ジャヤワルダナ氏が言った言葉が議場の感動を生み、日本を大変勇気づけたと言われています。
「憎しみは憎しみでなく、愛によってこそ消える。」
スリランカが憂いのない平和な国になることを祈って。
(参考文献)
※1…澁谷利雄『スリランカ現代誌-揺れる紛争、融和する暮らしと文化』(2010 彩流社)
※2…日本国外務省HP(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/srilanka/data.html)