紅麹(紅曲)は中国では千年以上の歴史があり、紅麹に関する記述が最も早くみられるのは五代末期に陶谷が記した『清異録』が最初とされる。

 

薬用としての紅麹について記された文献は、元代の吴瑞が1392年に記した『日用本草』が最初とされる。吴瑞は『日用本草』の中で、「酿酒则辛热,有小毒,发肠风痔瘘、脚气、哮喘痰嗽诸疾。(紅麹の醸造酒は性質が辛熱であり、小毒があり、血便や痔瘻、脚気、喘息、痰を伴う咳などの諸病を発症する)」と記している。

 

16世紀には、李時珍が『本草綱目』の中で、「红曲本草不载,法出近世,亦奇术也。(紅麹は神農本草経には記されておらず、製造方法が考案されたのは近世、まさに奇薬である)」と記している。

 

李時珍は紅麹について、「食物は胃に入ると中焦の湿熱薫蒸と精気の影響を受け、自ずと赤みを帯び、臓腑経絡へ巡り、気血に変化する。これは人体、自然の奥深さを象徴している。人が作る紅麹も白米が蒸気の湿熱を受け、赤色へ変化する。これは自然の色であり、ずっと変化することがない。紅麹の発明は人類が自然の観察に長け、それをうまく利用することができた結果である。紅麹の性質は甘、温、無毒であり、主な効能は消食活血(食物の消化を助け、気血の流れを改善する)と、健脾燥胃(脾気を補い、胃熱を鎮める)である。紅麹の醸造酒は気血の流れの改善や、マラリア、打撲、生理痛、産後出血などに効果があり、特に紅麹をすり潰して酒に入れて飲むと効果が良い。」と記している。