東京離陸(Tokyo_Lyrics)の日常。野良猫編

東京離陸(Tokyo_Lyrics)の日常。野良猫編

猫がイメージキャラクターの東京離陸です。
まったりゆったりなおしゃれサウンドユニットです。
日々の生活で垣間見る野良ちゃん達を載せながらほそぼそブログに挑戦します!

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久しぶりのブログ。淡々と過ぎる日常の中の一幕を小説風に書いてみました。

 

 

 

ここ二日の東京は過去に無いくらい冷え込んだ。氷点下になって、4日前に降った雪もまだ道路に残っている。

 

そんな寒さのせいで私の足の指は10本全てがしもやけになってしまった。

 

今日の職場では靴下を3重履きして寒さ対策したが、しもやけの厄介な所はとにかく「痒い」こと。

 

温かくして血流が良くなるとより痒さが私を苦しめる。

 

机の下の足をずっともぞもぞさせて、左足の指先で右足の指先を思いっきり踏んずけてみたり、

 

痒さを紛らわす足技をつま先で繰り広げたがもはやどうにもならず、、、

 

痒さも最高潮に達し、心の中はかなりヒステリックになっていた。

 

「今日は絶対定時で帰る!風のように消えてやる!」と心に決めた。

 

定時になったところで帰りの支度をし、帰りがけに出す郵便物を手に持って職場を出た。

 

下町の住宅街にある私の職場は普通の家のような玄関を出て外に出る。

 

外では上司が煙草で一服していたが、私が出るなり突然

 

「あの犬捕まえて」

 

「え?犬?」

 

前方を見ると年老いた小さい小型犬がちょんと道路の真ん中に立っている。

 

そして自転車を傍らに止めたおばさんが、

 

「近づくと逃げちゃうのよー」と困り果てた様子で犬との距離を取っている。

 

後ろを振り返ると、よぼよぼのおじいさんが犬の方をみながら

 

「捕まえて下さい」 とぼやいている。

 

どうやらおじいさんが飼い主のようだ。散歩に出ている格好ではなく、今コタツから出てきたというような恰好だ。

 

私は「おいで~」と優しく犬に近づいたが、犬は近づく私を見ると少しづつ離れていく

 

犬の目線になってしゃがんでみても、犬は怯えて近寄らせてくれない。

 

自転車のおばさんが困っていたわけが分かった。

 

おじいさん、自転車のおばさん、私、犬、と微妙な距離を保ったまま見える範囲にいるのにどうにもならない状態に。。。

 

おじいさんはずっと捕まえて下さいと言い続けている。

 

この攻防戦の中、何人かの通行人が通っていった。

 

きっとみんなこの事態がどういうことかを察するものの、参戦してくれる人はおらず。

 

検討を祈る!というようにちらっと犬をみて私をみて通り過ぎてしまうのだ。

 

私は一度かかわってしまった以上、おじいさんと犬を見捨てるわけにはいかず、どうしたもんかと思っていた

 

犬も後ろ足はガクガク震え悲しい目をしている。注目されて困っているようだ。そしてこちらの動きを警戒している。

 

なので私は気にしていないよ、という風に犬から離れて気にしていない素振りをしたが、

 

ついに犬は何か吹っ切れた様におじいさんとは反対の方向に向かって走り出した。

 

するとよぼよぼのおじいさんは

 

「追いかけて下さい」 と言い出した。

 

とりあえず私は犬の気持ちをこれ以上刺激しないように、そっと後をつけるような感じで追いかけようと歩き出したが、犬は突然方向転換し右の脇道に入って行って姿が見えなくなった。

 

「え!曲がっちゃった!」 と私は驚くと同時におじいさんの方を振り返った。

 

「追いかけて下さい~追いかけて下さい~」

 

おじいさんは絞り出すような声で訴えている

 

私は犬を追いかける。犬の曲がった角を曲がると30メートルほど先にトコトコとあるく犬の姿が見えた。

 

なんとも軽快な足取りだ。そしてチラッと振り返っている

 

その時だった

 

「こんにちはーー!!!!」

 

後ろから元気のいい声がして振り返ると、職場の斜向かいに住んでいる絵描きさんがいた。

 

絵描きさんの家では見た目は怖いけど性格はとってもおとなしいボクサー犬を飼っている。

 

毎朝私が職場につく頃に、ボクサー犬は外に出て毛をといたり爪を切ったりとお手入れされているのだ。

 

時間があればそこで少しボクサー犬の頭を撫でて元気をチャージしてから職場という戦場へ向かうのが小さな日課となっていた。

 

私と絵描きさんは犬繋がりということである。

 

心強い人物の登場に私は必至で訴えた

 

右手でおじさんを指さし左手ですたこら歩く犬をさしながら

 

「あのおじいさんが犬を追いかけてと言うので追いかけてるんです!!!!」

 

「犬は綱つけてる?」

 

「何にもつけてないです!」

 

「わかった!今すぐ綱とってくるから先に犬を追いかけてて!」

 

最強の仲間が出来た気がして少し心が軽なったところで、犬のあとを追った。

 

犬との距離は依然として30メートルほど。そして犬はまたしてもその先の十字路を右へと曲がった。

 

すると前方から自転車で走ってきたおばさんが一人で歩く犬を見て自転車を降りた。さっきの自転車おばさんとは別のおばさんである。

 

そういえばさっきの自転車おばさんはいつの間にか消えていたことを思い出した。私にすべてをバトンタッチして帰ったのだろう。

 

この犬とおじいさんの運命を背負っているのは私か?!

 

こんな小さな下町の住宅街でちっぽけな光景に映るだろうけれど、当事者にとっては壮大なミッションをに手を出して後に引けない状況だ

 

定時で帰るはずの軽かった私の背中には今、プレッシャーという重みが降ってきたのを確かに感じている。

 

第二の自転車のおばさんは一人で歩く犬を不思議そうに見つめていたが、犬を追う私がやって来るのを見て

 

「あら、飼い主さんいたのね!よかった~~。あの子一人で歩いてたからどうしたのかと思っちゃた」と陽気に話してきた

 

「違うんです!もう一本隣の通りにいた飼い主のおじいさんから逃げちゃって!追いかけてっておじいさんが言うから追いかけてるんですけど、、、」

 

話しながら、おばさんが自転車で犬を追いかけて犬の行く手を阻んでくれやしないかと思い描いたが、

 

「あら~~」といって私と犬を見ているだけだった。

 

犬はちらちらと後ろを振り返りながらこちらの様子をうかがっている

 

「あ!いた~~!!!」

 

そこへ綱をもった絵描きさんが元気よく駆けつけてくれた。待っていました!!!私の心は一気に明るくなった。

 

そこからは犬と私と絵描きさんの追いかけっこが始まる。

 

二人に追いかけられて先ほどよりも明らかに犬が焦っているのがわかる

 

犬は十字路に差し掛かった。そこは右に行ってくれないとおじいさんのいる通りに行けない!!

 

「あーーー!右に行ってくれーー!!」

 

犬に向かって後ろから二人で叫ぶ

 

声が届いたのか犬は右に曲がった

 

「よっしゃ~~~!!!!」

 

二人のテンションも上がり、右に曲がって犬のあとを追う

 

するとさらにその先の十字路を犬は左に曲がった。それはおじいさんのいる道とは反対の方向である

 

「あーーー!!!そっちじゃないよーーー」

 

右の道をみるとよぼよぼのおじいさんが遠く先に見えた。

 

一番最初に犬が曲がってしまった曲がり角のあたりにようやくたどり着いているという感じだった。

 

歩くので精一杯。ありゃ犬を捕まえられるわけがないよなと、おじいさんを横目に見つつ

 

左の道をみると犬は相変わらず、我が道を行くというようにトコトコと歩いている。

 

そしてここで二人で協力して勝負に出た。

 

絵描きさんが猛ダッシュをし犬を追い越した。

 

突然の追い越しにビビった犬は後ろを振り返り逃げようとするも、後ろには私がいる

 

渾身の挟み撃ち!

 

あたふた逃げ惑う犬だがあと一歩のところでするりと脇から取り逃がしてしまった

 

しかしながら捕まえるなら「この方法だ!」とわかり、もう一度同じ状況に犬を追い込んだ。

 

こんな風に犬を追い込められたのも年老いた犬だったからだ。

 

そしてついにその時が来た

 

片手には手紙をいくつか抱えながらも犬の背後からがしっとと犬を捕まえた。

 

犬の前足の脇の下に手を入れて犬を抱き上げる。

 

犬は体を左右によじり後ろ足をジタバタさせて大暴れ

 

ここでまた手放しては振り出しにもどるとこちらも必死である

 

抱き方を整えてようやく私の腕の中に犬は落ち着いた。とはいってもブルブル震えている

 

絵描きさんのもってきた綱をつけて反対の道で困り果てているおじいさんの元へ急ぐ。

 

「おじーーちゃーーん!犬捕まえました~~♪」

 

ほっとするおじいさんの胸に私の抱いている犬を受け渡そうとするのだが、また犬が暴れを始めた

 

犬と一緒におじいさんも必死であたふたしている

 

こりゃダメだと思い

 

「私が家まで抱っこしますから、一緒に帰りましょう!」

 

「ありがとうございます、助かります、ありがとうございます」

 

おじいさんはほっとしたようだった。

 

「よかった!ではあとは宜しくお願いします!」

 

と、ここで綱を外して絵描きさんとも別れた。

 

「おじいちゃんの家はこの道をまっすぐですか?」

 

「そう。この道をまっすぐ、、、」

 

またしても絞り出すような声だった

 

歩きながらおじいさんは犬を抱いている私の腕と肩にガシっとしがみついてきた

 

思ったよりも力強かったので一瞬私はドキッとした。

 

このドキッとはもちろん異性に対するトキメキのドキッではない。

 

実は年末年始に歩きなれた地元の帰り道で突如後ろから強い力で首元に飛びついて抱きしめられるという痴漢被害にあったのだ。それから無意識に掴まれたり背後にだれかいることに恐怖を感じるようになってしまったらしい。(この事件についてももっと詳しく書きたい!)

 

しかもおじいさんはハァハァと息も荒い

 

おじいさんと言えど男性である。20代女性が横にきて発情してしまったか?!などといらぬ考えが頭をよぎってしまう。

 

全てはあの日の痴漢のせいだ!取り逃がしたがやはり許せぬ。ぐぬぬ。

 

するとおじいさんは絞る様に喋りだした

 

「私は96歳なんですけど、娘が入院してしまって娘の犬を預かっているのです。2匹いるんですがこいつが突然逃げ出して」

 

なんと!96歳だったとは。預かっていた犬が逃げ出して必死でここまで歩いてきたのだろう。

 

そして雪もまだ溶けきらぬこんな寒い東京。気が気じゃなかったし、疲れてしまって今必死で私につかまって、息もあがるなかやっとの思いで歩いているのだと分かった。

 

おじいちゃん、変な疑いを持ってごめんなさい。すぐに頭が切り替わった。

 

背の低いおじいさんの身長に合わせる様に膝をかがめて歩く私

 

複数の手紙を器用に指に挟み、震える犬を抱え得ながら腕と肩にしがみつくおじいさんをサポートして歩く

 

周りからはどんな光景に映っているだろう。

 

まもなくおじいさんの家に着いた。

 

引き戸の玄関は開けっ放しである。そして玄関から続く廊下の奥の部屋にはやはりコタツがあった。その奥にはもう一匹の小型犬がいた。

 

キョトンとしたような、それでいて興味深々の目つきでこちらを見ている。

 

私は玄関の中に犬を解き放った

 

犬はドタバタしながら家の奥へと走っていった。

 

「ありがとう、ありがとう、今度ゆっくりしにきてください」

 

おじいさんは玄関にしがみついてバランスをとりながら私にそう言ってくれた。

 

私はここまで歩いてくる中、実はずっと気になっていたことが一つあった。

 

それは、「なんかうんこ臭いな」ということだった。

 

犬を解き放ってわかった。

 

チョコレートショートケーキのはがしたフィルムについているような感じで、私のダウンコートに臭いの根源が塗られているではないか

 

こげ茶のコートよりもこちらの方が明るい色なのでよく見える。

 

「うんこが、、、うんこが、、、」

 

 心の声がかすかに漏れていたがおじいさんには届いてないようだった

 

ふと見ると指に器用に挟んでいた一番上の郵便物にも、、、、薄い水色の柔らかな色の封筒の上にサッと塗ったようについていた。

 

ちーん。。。

 

「では、失礼します」

 

そいうっておじいさんに手をふって一度でた職場を目指し歩き出した。

 

私はふいに呟いていた

 

「あのクソ犬ぅ、、、」 

 

玄関を開けて職場に戻ると、帰り支度を始めていた上司があれー?どうしたの?と笑っている。

 

「犬は無事に捕獲しておじいいさんと共に無事家に届けましたが、腕の中でうんこされました。」

 

腕の中でされたのかもともとうんこが犬の体についていたのか、もはやどっちがどうだったのかはわからないが

 

犬が先か、うんこ犬が先か

 

コートを脱いで、ティッシュを濡らし丁寧に拭き始めた。

 

しかしもうそれでは時間もかかるし効率が悪いとわかった

 

コートを床に思い切り広げて雑巾で豪快に拭いた

 

その様子を見て上司は笑いながら携帯で写真を撮っている

 

「さっきのおじいさんね、ずっとバカ犬、バカ犬ってぶつぶつ言いながら歩いてたよ」

 

「そうなんですか。うわぁ、ダメだ臭すぎる。これじゃ電車に乗れないよ。でも寒いから着ないわけにもいかないし。。。」

 

「ファブリーズすれば?ほら、そこにあるじゃん」

 

おそらく何年もずっと放置されているであろうファブリーズがそこにはあった。

 

「もはやこのファブリーズが怪しいですけど、、、とりあえず」

 

シュッシュッとコートに振りまいた

 

さすが消臭剤。いくらかましになった。

 

雑巾がけとファブリーズで濡れた状態になったコートを干している間、うんこが塗られた封筒を書き直した。

 

封筒を書き直しながら、しもやけの痒みが再び私を襲ってきた。

 

足の指をぐいぐい曲げて床に押し付け痒みをごまかす。

 

そうだよ、痒いんだよ、だから早く帰りたかったのに何やってんだ私。

 

なんだか急に笑えてきて、クスクスしてしまった。

 

ほのかに香ってくるうんこ臭のコートを身にまとい、寒空の東京を早歩き。

 

そして帰路に着く多くの人を乗せたJRに乗った。

 

臭いの状態を把握するためにマスクは外し、なるべく臭いが広がらぬように微動だにせずに立つ。

 

しかし心の中では周りの人の反応が気になってしかたなかった。

 

乗り換えた次の電車では全身ほわほわの真っ白い服に包まれた女子大生くらいの女子が私の横にきた。

 

くるなくるなと思っていたのに横にきたのだ。その真っ白な服にうんこ臭が染みついたらどうしよう

 

いや、そもそも自分で思ってるほどうんこ臭はしてないはずだ、ファブリーズは偉大なり と思ってみたり。

 

電車の中ではみんな無表情である。本音は分からない。実際どうだったかわからない。

 

なんかうんこ臭いなぁと思っている人はいるだろう

 

地元の駅について電車を降りたとき、やっと全てから解放された気分になった。

 

冷たい空気すらも気持ちいと思えるほど心はすがすがしくなった。

 

こんなことですがすがしさを感じられるなんて。

 

家につくと外で飼ってるうちのワンコが盛大なお出迎えをしてくれた。

 

しかし私に飛びつくなり、あれ?という表情になった

 

それからは私の足にしがみついてクンクンクンクンずっと嗅ぎまわる

 

やはりうんこ臭は健在だったのか

 

そのダウンコートは風呂場でよく水洗いした後で洗濯機で洗った。柔軟剤もいれて仕上がりもばっちり

 

今日も私を寒さから守ってくれている。

 

 

                                                   私の日常から ~うんこまみれ事件簿~