冬の鍋シリーズ。
第一回は、冬の王道、フグ。
第二回は、昔ながらの(予約困難店)東京
軍鶏鍋。
今回は、魚に戻り、「鮟鱇(あんこう)鍋」
を紹介しよう。デートで「鮟鱇鍋」を指南
するのは、極めて、稀有かもしれないけれ
ど、君の懐の深さをさりげなくアピールし
よう。
ただ、できれば、彼女がフォアグラ(肝)
好きであることを事前に確認して、誘おう。
では、お誘いの口上。
この間のフグは、どうだった?
お刺身からちり鍋、雑炊まで、おいしかった
よね。
鮟鱇鍋って食べたことある? 実は、通の間
では、西のフグと並び称される東の冬の鍋の
王様なんだ。そのグロテスクなルックスからは
ちょっと想像しにくい、白身、皮とゼラチン質
(つまり、コラーゲン)、そして、言うまでも
なく、あん肝、つまり和製フォアグラだね、こ
れがうまいんだ。
鮟鱇鍋には、東京風の「お醤油味」の鍋と、鮟
鱇鍋の本家、北茨城で食べられる「味噌味+あ
ん肝すりつぶし」の鍋の2種類があるんだけれど、
フォアグラが好きなら、だんぜん、本家がお勧め。
さて、場所は勝どき。名前は「さより」。
勝どき駅から、5~6分。ただ、これがまた、
わかりにくい路地の奥にあり、さらにまた、一
般家庭の家屋を改造した居酒屋で、彼女を連れ
て行くと、彼女は、「えっ、どこに行くの?」、
「えっ、ここ??」というような不安感いっぱい
で、ドキドキになり、そこで、玄関を開けると
アットホームな雰囲気の居酒屋
という具合になります。まあ、こういう落差を演
出しよう。こんなところを(秘密基地みたいな)
知ってるの? と、彼女は、またまた、君の懐
の深さに敬意を払うに違いない。
ご主人は、以前、対岸の築地市場で、仲買人を
していたとかで、もちろん、新鮮な魚介類は、
今も、その伝手で仕入れているとのこと。また、
国産のいい鮟鱇はいつもあるとは限らないので、
鮟鱇鍋は、予約制となっているので、できれば、
余裕をもって、4、5日前には、予約を入れるの
が良い。
1階は、カウンターとテーブル席。2階は座敷
と思いきや、一般家庭の、元、畳の部屋に、レ
トロなテーブルを椅子をしつらえた趣のある
部屋。
まず、お通しとして、「あん肝」が出てくる。
丸々した国産鮟鱇の良質な肝。こってりした味
で、日本酒が欲しくなる。
次は、新鮮な刺身を味わおう。
内容は、その日で変わるが、どれもネタがよく、
しめ鯖など、きっちり仕事がされており、ご主
人の目利きと腕が確かなことが伝わってくる。
珍しい、「マグロの脳天」があるか聞いてみよ
う。あったら、絶対、注文すべし。その名の通
り、脳天の下の部分の希少部位で、赤身と
中トロの間のような味わい。
そして、お待ちかねの鮟鱇鍋。
既に、一通りの具が入っており、後は、火をつ
けて、煮えばなを頂く。あん肝はすでに、出汁
に混ぜ込まれているが、それとは別に、具とし
ての人数分のあん肝があるので、お楽しみに。
白身の部分は、ある意味、僕は、フグより好き。
皮とそれに付随しているゼラチンは、コラーゲン
そのもの。そして、最後に残しておいたあん肝
を頂く。
雑炊がまた、絶品の旨さ。ちり鍋の雑炊がやさ
しい、体に吸収されやすい品位とすると、本家
の鮟鱇鍋の雑炊は、肝のエキスが絡まり、濃厚
な美味しさ。だけど、しつこくない。
この間、55歳過ぎの広島出身のおじさん(西の
出身なので、鮟鱇鍋は食べたことがない、が、
瀬戸内海の海の幸に精通しているグルメおじさ
ん)と食べたんだけど、感激してた。「ほんと
うに旨い。いや~、こんなに旨いものを紹介し
てくれてありがとう」と、仕事抜きで、本気で
感謝されたんだ。
あ~、お腹いっぱい。
さて、この後は、どうしようかな。
次回に2軒目を紹介しますね。
なお、東京風鮟鱇鍋も、とっても昭和レトロな
お店(戦災を免れた、黒光りする、何とも風格
のある一軒家をそのままお店にした)があるの
で、またの機会に紹介します。