Cold blows the wind to my true love and gently drops the rain

寒さは我が恋人に風を吹き付けしめやかに雨を降らせる。

I only had but one true love and in greenwood she lies slain

たった一人の恋人は深き森の土の下に死んでいる。

I'll do as much for my true love as any young man may

若造ならだれもがするように私も自分にできる限りを尽くそう。

I'll sit and mourn along her grave for a twelve-month and a day

墓の傍らに座り込み十二月と一日嘆くとしよう。

 

When the twelve months and one day was past the ghost began to speak:

十二月と一日が経った頃幽霊が出てきて話し始めた。

"Why sit thou'st here along my grave and will not let me sleep?"

「何故ずっとお墓の横に座り私を眠らせてくれないの?」

"There's one thing that I want sweetheart, there's one thing that I crave

「いとしの君にはたった一つ、心の底からの願い事がある。

And that is a kiss from your lily white lips then I'll go from your grave"

君の白百合の如き白き唇に口づけを、さすればお墓から立ち去ろう。」

"My lips they are as cold as clay my breath smells earthy strong

「私の唇は粘土の如き冷たさ、息は酷く臭うわよ。 And if you kiss my cold clay lips your days they won't be long

そして粘土のような唇にキスすればあなたの命はもう長くはない。 Go fetch me water from the desert and blood from out of stone

砂漠から水を汲んできて、岩からは血を汲んできてよ、 Go fetch me milk from a fair maid's breast that a young man never had known"

そして美しい乙女の胸からどんな男も味わったことない乳を搾って私に飲ませてちょうだいな。」 'Twas down in Cupid's Garden where you and I would walk

キューピッドの庭でよく二人は一緒に歩いたものだ。 The finest flower that ever I saw is withered to a stalk

最も美しき花でさえ枯れて茎のみになってしまった。 The stalk is withered and dry sweetheart the flower will ne'er return

茎さえ枯れて乾いてしまい恋人よ花はもう二度と戻らない。 And since I lost my one true love what can I do but mourn?

そして唯一の真の恋人を失い嘆く以外に何が出来よう?

"When shall we meet again sweetheart? When shall we meet again?"

「恋人よ次またいつ会える、次は又いつ逢えるだろう?」 "Ere the oaken leaves that fall from the trees are green and spring up again"

「落ちた枯れ葉が緑に戻り生き返ったならその折は又お会いしましょう。」

 

 

 

 

 

これはグリフォンというバンドによる歌詞で、同じ歌でも様々なバリエーションがあり、別のバージョンではこのように歌は締めくくられる。

 

 

“The stalk is withered dry, my love, so will our hearts decay,

「茎は枯れ乾き、恋人よ、我らの心臓もやがては腐る、    

So make yourself content, my love, till God calls you away.”

あなたは満ち足りた生を送りなさい、我が恋よ、神に召されるその時まで。」

 

 

 

 

 いずれのバージョンも恋人のしつこい嘆きを迷惑がる幽霊が、あなたが私と共に死んだなら二人とも土の下で腐るだけ、無駄なのであなたは最後まで生きなさいと突き放して諭す内容である。旋律の起源は古く16世紀ごろからあったらしい。私がこの旋律を初めて聞いたのは小学生のころ、ボーン・ウィリアムスの「イギリス民謡組曲」の3つのイギリス民謡の旋律(日曜日には17才、綺麗なキャロライン、富める人とラザロ)からなる第1曲の3番目に登場する「富める人とラザロ」であり、この「騒々しいお墓」とほとんど同じ旋律なのである。これ以外にもボーン・ウィリアムスの「富める人とラザロ」の五つの異版ではやはり同じ旋律が五つの異版となり変奏されており、霧のかかったようなイギリスの田園風景を彷彿させるような素晴らしく幻想的なvariantsに仕上がっている。おそらく歌の内容は全く違うのであろう、まるで霧のかかった泉から妖精でも出てきそうな神秘的なムードからは、お墓から出てきた腐りかかったお化けといったものは連想されない。同じイギリス民謡のいろんなvariantsを聴いていると実に興味深い。