わしじゃ。柳生徳兵衛じゃ。もうなれてきたじゃろうから「徳さん」でもええぞい。便器で溺れて数日。やっと退院したんじゃ。
わしが入院してるというのに家族のやつは誰も見舞いにこんのじゃ。許せんよ。もう家に帰るのはやめじゃ。わしは旅に出る。
盛り場に向かった。ナイトキャバレーがたくさんあるわい。
ぐふっ、こりゃたまらん。しかし、わしはマネーがないでのう…
悲しげに歩いていると、綺麗系のオナゴがたくさん入り交えた場所が。
なにね?
「美容室」、このように書いてあるわい。
日本語に直訳すると
美しく、容姿を保つ、室内…
こういうことじゃよ。
わしは96歳ではあるが、美容には自信がある。
若人の頃はモボと呼ばれ、モテはやされていたんじゃ。1日、数十人のオナゴを相手しておったのじゃ。
その中のいちばんハズレが今の家内じゃよ。ふぉっふぉっふ…
笑えんがな!
まあよい。気を引き締めて
いざ、美容室へ入室。
「いらっしゃあい」
むふ。若いラムちゃんのようなオナゴが求めてきよったわい。
「パーマネントとアンマをしてもらえんか?」
わしは颯爽と語った。
しかしオナゴは、わしの頭には髪が無いではないか…と拒絶しよる。
では頭皮にパーマをかけてくれ!と頼みこみ、何とか着席した。
む、オナゴが未来系の機械を持って現れた。火箸のようなトン具と、天使の輪のような機械じゃ。
頭の上でぐるぐるぐるぐる回っておる。
「暑くて目が回るんじゃ」
わしは呟くとオナゴは
「ふふふ…ジイサン髪無いし」
ゲラゲラと従業員は大爆笑しておる。
掴んだ!
若人の心を掴んだ。わしはまだまだ現役のようじゃ。
数時間後、わしは病院内で目覚めた。ドクターによると、どうやら頭が焼けて煙を噴いたらしいの。
包帯を取って頭皮を確認してみると
皮膚病の犬のような頭になっておるよ。ドクターは、この頭は元に戻らんと言うのじゃ…
これからの長い人生、わしゃ下痢便色に染まった頭で歩まねばならんらしい。
無念かな。
わしは一言言った。
「我が頭、デンプン質…」