ここで、ヤバイ脚本家、ダルトン・トランボについて語らねばならない。
昭和世代にとっては、やっぱり…ヤバイという表現がただしいとおもう。

彼はハリウッド史上、最悪の…レッドパージ・非米活動委員会により失墜する。
が、それ以降も、匿名で八面六臂の着想を続けている。
これは最近になって知られたことだ。

ハリウッドは戦前と様変わりしていく。

彼と共に仕事をした人物は
強烈な個性の持ち主ばかりである。
ウィリアム・ワイラー。そしてヘプバーン。さらに驚くべきことに、キューブリックの名前が浮上している。

ローマの休日について

まず、彼は1953年の『ローマの休日』の原案、脚本を手掛けた。
この作品はじつは曰く付きのカルト作品である。

イタリアのリラ建ての収益を回収せねばならない。
これが、『ローマの休日』の企画が持ち上がった背景だった。
この50年代、ヨーロッパ各国の通貨はキャピタルフライトを抑えるため、
持ち出し額が厳密に管理されていた。

ユニバーサル映画は戦後6年で世界的な興行をたたきあげた。
当時、世界大戦後…マーシャル・プランの時代である。


アメリカ経済はインフレーションスタビライザーと言って、成長率そのものGDPで図るようになっている。

ケインズの言うように、もはや民主主義というシステムでは、19世紀のビスマルクのような国家システムは機能しない。
また、チャーチルは戦後のフルトン演説にかけて、実際にドイツ軍と本格的に戦ったのは…旧ソ連であることを語っている。

さて、第一次世界大戦戦後処理の最大の失敗はドイツ・ワイマール共和国化させてしまったことだった。

したがって、戦勝国は第一次世界大戦の如く、ドイツに賠償金を請求することは不可能であると。
これが、当時の歴史観だ。

が、ためにアメリカはマーシャル・プランを発動する。

結果として為替政策はドルとのペッグがセットになっていた。

日本円は固定レートで約300円。
これほ、ニクソン・ショックからドルが金との兌換不可能となって揺らいでいく。
数年前にイギリスの元首相、ジョンソンはウクライナ侵攻のロシア・プーチン政権にたいして、スウィフトの凍結という策を打ち出した。
ところが、ロシアじたいはルーブル経済圏をつくって、いはば自給自足化してしまう。
ロシアは戦略物資である『石油』に困ることはないからだ。
このシステムは、ニクソン政権以後、
アメリカの石油、ドル決済を前提としたシステムのこと。
ところが、ユーロ誕生から、ベルリンの可部崩壊、ロシアの資源国有化を経てスイフトのシステムは戦略的な耐性を骨抜きにされていた。

少しでもBBCの報道に
トランプ政権の国務長官マイク・ポンペオの発言に、
ノルドストリームのパイプラインに関する危険を示唆したものがあった。

いざ、NATOとロシアが対立してみると
先ず、フィンランドの政権は全くの骨抜きになっていた…という塩梅である。

マリン首相…はほぼ無知だった。
ロシアを茶化している。
苦笑しかなかったご
今のロシアを読み解くには、
どうしてもウクライナ侵攻よりも以前の
グルジア戦争、カラー革命まで読み解いていかねば、ロシアの抱えるジレンマは読み解けない。
九十年代、ポンド暴落から始まった通貨戦争だ。
ルーブル危機の時代、如何にしてそれは起こったか、ここを読みとかねばとても、ウクライナ問題は語れない。




話は戻る。
戦後…の日本。


昭和二十年代後半…つまり、サザエさんの時代である。
野良猫はお魚をくわえ、箒をもった主婦に追っかけられる。



父、波平の2度目の奥さんがフネさん。
戦後は腹違いの兄弟はわんさかいた。
戦争の関係でである。
金になる話はごまんとある。
価値をフェイクする
誘導型広告ではなく、新しいニーズは常にあった。
小説は、たんにストーリーとか起承転結になる。メタファーが消滅する。

やがて、昭和が終わり波平さんは記号となる。記号としてのみ存在を許される波平は、もはや、日本の歴史が消滅したことを意味する。
ユングのアニムスのような世界である。
つまり、鬼子母神が子供を喰らう。
数秘でいう、2のみの世界

ジレンマは存在しなくなり、ドラえもんは記号として存在する。
ドラえもんのドラマツルギーは
登場する全員に、何らかの欠落を課してあり、それが、ドラえもんのポケットから出てくる、なにがしかのアイテムで、願望実現される。それから、バッドジョークでおわる。




井上靖の『氷壁』という山岳小説を読めばわかるが、この時代、あらゆるものが富を生んだ。
この小説は当時珍しかったナイロンのザイルを巡っての、遭難事故がモチーフになっている。主人公はある山岳用品の輸入商社に勤務しているサラリーマン。
この描写が、ほとんど植木等の世界である。

エンジンへの飽くなき
こだわり、これが
すなはち、ブランド

この時代背景から本田技研のスーパーカブ(ドリーム号)が生まれ、富士通のLSIによるコンピューター技術のコペルニクス的発想が生まれる。
少なくとも戦中戦後の技術者は門戸を開放していた。
この中で、本田宗一郎はエンジンの技術を夜学で学び、実用化する。
後の1961年、ホンダのRC143がマン島でのレースに優勝。
ホンダのエンジンというのは、別名、
『変態エンジン』と言われるまで独創的なものだったという。
ジョブズが死ぬまでこだわったソニーのウォークマンも、変態的発送から生まれた。
設計のミスだった。

小型のラジカセを作るつもりが、スピーカーの回路をつけるのを忘れた。
ところが、これほ面白そうだ、ということで市場に登場したのだ。
この当日、マエストロ、カラヤンがウォークマンを使って読譜する光景がテレビでオンエアされていたのを覚えているが、
カラヤンはウォークマンに全く関心を示していない。だが、時代は変わった。



1953年

このとき、イタリアの資産は持ち出し額が厳密に取り決められている。
そのため、リラは安易にドルと交換することは原則禁じられていた。
これほ日露戦争の時の日本の財務原則と全く同じである。

この中で、ユニバーサル映画も例外ではなかった。
イタリアで弾き出したハリウッド映画の興行収益は、リラでしか保有できない。
つまり、ドルに兌換できなかったのだ。

このユニバーサル映画の資金回収作戦として、『ローマの休日』は企画された。
資金をローマでのオールロケに使ってしまう。
これが、ウィリアム・ワイラーとトランボの作戦である。
さらに、大作狙いではなく、カルト・アイドルムービーとする。
最初に王女のキャスティングにのぼったのはエリザベス・テイラーだった。
ところが、ここであるパーティー会場で女流作家コレットがサラとオードリーを偶然、発見する。
お騒がせ作家だったコレットは、その場で『貴女がキキよっ!』
突然、オードリーの前に立ちはだかる。
コレットは彼女にすぐ、ミュージカル『キキ』に出演するよう、懇願する。
この一報に海を隔てたアメリカでは、騒然となっていた。
チャプリンの元婦人だったポーレット・ゴダードが彼女の存在を確認した。
このパーティー会場の異変で、ワイラーは突如、スクリーンテストをヘプバーンにオファーする。

当日、彼女はウィリアム・ワイラーとビリー・ワイルダーの名前をよく間違えていたという。

ウィリアム・ワイルダー

ヘプバーンは彼のことをそう呼んでいた。
さて、ワイラーとトランボのカルト映画はこの後、空前の成功を収める。
ラストのシークエンスで、アン王女は『祈りの壁』を発見する。
ここで、一夜の恋は終わりを告げ王室に帰る決意をする。
この伏線は深い。
この十年前の冬、彼女は母のサラと共に『マーケット・ガーデン作戦』の真っ只中で生きていた。


アン王子は『祈りの壁』に平和の誓いをするのが己の責務であることを初めて気づく。
彼女はつかの間の恋と別れを告げ、
聖母マリアに祈りを捧げる





、表現主義の真骨頂とも言える作品
『2001年宇宙の旅』
スタンリーキューブリック。
後にスター・ウォーズを生みだす
特撮技術と恐怖感に満ちた作品。
キューブリックの作品は『フルメタル・ジャケット』以降、もはやブランド化してしまう。
そのため、失敗作ともなんとも言えない。


彼は1950年代後半に、俳優のカーク・ダグラスに見出された。
後にキューブリックは、イギリスで映画を撮り続けるが…。

初期の作品『突撃』『スパルタカス』の2作品は、完全にハリウッド映画だ。

これにキューブリックは相当の不満を漏らしている。
これに激怒したのがカーク・ダグラス。

彼はキューブリックをハリウッドから追い出してしまう。

ところで『スパルタカス』の脚本…意外な人物が担当している。





が、後に彼は『カリガリ博士』も吹っ飛ばす、狂気の名作を生みだす。
『博士の異常な愛情』







この当時、戦後のアメリカに嫌気がさしたチャプリンはスイスへ移住している。
あと、クルト・ワイルの『モリタート』で有名な三文オペラの作者、ブレヒトも亡命。
ジャズ…のソニーロリンズファンなら
『モリタート』の名演をご存知だろう。
まさかこの曲が三文オペラのために作られたとは知らなかった。
やがて、アイゼンハウアーの時代は終わりを告げ、ジョン・F・ケネディの時代が始まる。
この時、アメリカは中南米の独裁政権を抱え、核の問題を抱え…迷路に陥っていた。



シュタイナーと
ミヒャエル・エンデ


ブレヒトの劇団員が『モモ』や『エバーエンディングストーリー』『ジムボタンシリーズ』で有名な、ミヒャエル・エンデ。


エンデにはもう1つの履歴がある。
シュタイナー学校よ出身者だったのだ。

今日では誰でも知ってるシュタイナーだが、この神秘思想家は極端にストイックな唯心論者である。
彼はもともと、クロアチアの森林管理をやっている父のもと生まれた。
しかし、小学校で無実の罪に嵌められる。
ここから、シュタイナーは『人はどう生きていくべきか、善とは何か?』探求が始まる。
シュタイナーが定義する次元移行は、
むしろ感性の問題となる。



『引き寄せの法則』に疑問を抱いておられる方は結構いるはずだ。
例えば、旨い寿司を食べたいと願う。
そしたら、日本に行けばいい。
江戸前寿司を食べればいい。
箱寿司が食べたければ、大阪に行けばいい。
これがとりもなおさず、引き寄せの法則である。


実際には、かなり雑な話なのだ。
シュタイナーは、にんげんのアストラル体が過剰に『物質』に好奇心を抱いたために、人は奇跡…ないしは『超常現象』にオカルトの証明を求める…と、一言に切って捨てる。
つまり、すべては心の問題だと彼は言う。


シュタイナーは二十歳の頃、生活のためある貿易商の長男の家庭教師をすることになった。

それまでの彼は、極貧の中でゲーテの研究を行っている。
ゲーテから近代哲学の開祖、エマニュエル・カントの『純粋理性批判』を独りで読み進める。
個人的には、カントの『純粋理性批判』を読んでいくのは、荒業に近い。
『カントはこう考えた』という石川文康という哲学者の本がわかりやすいので紹介しておく。
シュタイナーは…ある少年…当時精神科医のブロイラーの患者だった…の家庭教師になる。
オーストリアにおいて、つまり、精神分析学が誕生した場所でのこと。
ブロイラー、ユング、フロイド…。
この3者の流れを傍流として眺めている位置にあった。
後に、シュタイナーは…おそらくはナチスに毒殺されたとも言われているが…
ヒットラーと対立している。