作家の川端裕人さんから連絡をいただき、「見えないモノへの不安と向き合うセミナー」に参加してきた。

トコロジスト生活

原発事故以来、福島からの避難者が差別されていたり、デマや憶測など様々な情報が飛びかう中で、不安ばかりが増幅されていくという状況になっている。


しかしながら、そんな中にあっても、親や教師は正気と冷静さを保ち、子どもを守り育てていかなければならない。


そのためには、まず、放射線という見えないものについてしっかり理解し、そのリスクを正しく認識しよう。このセミナーは、そんな趣旨で緊急企画されたものだ。


全体が3つのテーマで構成されていて、各30分ずつのレクチャーを聞くというスタイルで進められた。


1「放射線、放射能ってなんだろう?」東京大学 横山宏美
2「科学的確率統計の考え(VSゼロリスク)について 岡山大学 津田敏秀
3「震災・ストレス、メンタルケアについて」東海大学 芳川玲子


3つとも、短時間で効率的にエッセンスを伝えられるよう工夫されていた。この事態を冷静にとらえていくために必要な視点を教えていただけた、と思う。


特に、講演タイトルを見て、「おやっ」と思った。

1と3は「当然」入ってくる内容だったけど、2は今までほとんど意識したことのない分野だ。多分、「リスク」というモノをどのようにして科学的にとらえたらよいのか、という話なのだと思う。


人間生きているだけで様々なリスクにさらされている。放射線のリスクだけがクローズアップされているけれど、実はリスクは数え切れないほどあるのだ。


そして、いくら子どもを安全に育てたいといっても、そのリスクを限りなくゼロに近付けよう、なんていうのはナンセンスだ。


そんなことを言い出したら、子どもと森へ散歩することも、畑に行って遊ぶこともできない。子どもを森に連れ出せば、たとえ放射線がなくても、ヘビにかまれるかもしれないし、ハチもいる。ガケだってあるし、木の枝で目をついて失明するかもしれない。


生活すること、子育てすることは、食べて寝るだけではない。放射線リスクは、他のいろんなリスクに加えて、新たに加わったリスクということだ。


新しいリスクだから分かっていないことも多い。常に最新の情報に目を配っておくことが必要だ。その上で、過大に考えることなく、他のリスクも含めて総合的に判断していく姿勢が必要なんだと思う。


今の生活を大きく変えることなく、でも科学的な視点を忘ずに、注意は怠らないようにしていこう、といったところか。


そして、もしかしたら、このリスクは、子どもたちが大人になるまで続くリスクになるかもしれない。ということは、野外における様々な危険への対応方法と同様に、野外で遊ぶ作法として、親や野外活動の指導者がしっかり教えていかなければならないことなのかもしれない。


タイトル通り、放射線リスクから逃げずに向き合っていくという感覚が必要なんじゃないか、ということを思った。