戦後、米軍に接収されたことによって、多摩ニュータウンの中に173haにおよぶ広大な手つかずの森が残った。

そんな場所が自宅の近くにあった!何と刺激的な話だろう!

 その森の規模は、まさに野生生物の宝庫。サンクチュアリ(野生生物の聖域)といってもいい。

そして、残っていたのは森だけではない。弾薬庫だったころの施設も当時のそのままに残っていて、ここだけ時間の流れが止まっていたようだ。

トコロジスト生活

道のわきには、深さ5mほどの深い水路が掘ってある。コンクリート製の水路の底がところどころ大きな穴があいているが、特に補修もされずそのまま残っている。落ちたら出てこれないだろうな。

トコロジスト生活

ここは弾薬を収納していた倉庫。この出入り口にトラックをつけて、弾薬を運び込んでいたのだろう。山の斜面をくりぬいて作ってある。
トコロジスト生活

そしてこれもまた別の場所の倉庫。70年前の建造物とは思えないほどまだしっかりしている。旧陸軍が建設して、米軍に移ってからも継続して使われていたようだ。
陸軍時代はむき出しのコンクリートだったが、米軍になってからレンガ色に塗装されたそうだ。塗装はボーイスカウト活動の一環として行われたらしい。アメリカ人はなんにでもペンキを塗るんだなあ。

トコロジスト生活
建物だけでなく、こうした石垣やトンネルも随所にある。これなど通行にまったく不安を覚えないほどしっかりした作りだ。いい仕事してるよな。
トコロジスト生活
ここは、事務所の跡。屋根が残っているのはトイレで、今人が立っているあたりに事務所がたっていたそうだ。部屋の間取りの跡も残っている。トイレはちゃんと男女別々のトイレが作られていた。当時の様子がリアルに伝わってきて、人の動きが見えるようだ。なんがか怖くなってくる。
トコロジスト生活
森を出て、この施設の中心地に向かっていると、レンガに埋まった巨大な設備が見えてきた。高さ15mほどの煙突もある。ここは、ボイラー施設だ。重油を燃料にしてお湯を沸騰させ、パイプで各施設に配っていたそうだ。
戦時中ここで火薬を製造していたのだが、その火薬を乾燥させるための熱源に、このボイラーで温められたお湯を使用していた。なぜお湯を使っていたのか、その理由は、火薬を乾かすのに火を使えなかったからということらしい。

トコロジスト生活

約2時間ほど、森の中腹辺りをぐるりと一周して元の集合地点の近くまで戻ってきた。
そこには、
子どもたちが好きそうな動物のモニュメントがたくさん置いてある。森の中の遺構物から伝わってくる重みとは対照的だ。あえてこういうものを置いて気分を明るく演出する必要があったんだろうな。

今回、はじめてこの森に入ってみて、想像以上に豊かな自然に驚いた。そして、当時の面影をそのまま残している遺構物は、胸に迫るものがあった。こんな場所が多摩ニュータウンの中に、注目もされずに残っていたとは奇跡に近い。今後、この場所の返還、といった話が出てくるかもしれないが、ここは手つかずで保全すべき場所だろう。しかし、あまりにも情報が公開されていないため、一般市民にはここの価値が伝わってこない。もう少し情報を開いてゆく、ということはできないものだろうか?