トコロジストの参考になりそうな本を探していて、「川の名前 」という小説を見つけた。487ページと少し長めの小説だけど、面白くて引き込まれるようにして読んだ。

トコロジスト生活
内容はこんな感じ。
父親の仕事の都合で転勤を繰り返していた主人公の少年が、ある街に引っ越してきた。新しい土地で過ごす初めての夏休みに、ふとしたことがきっかけで友達と近くの川のことを調べ始め、そのことが回りを巻き込む騒ぎに発展していくというストーリー。

この小説の中では、少年の心の中にある「どことなく自分の居場所がない」というフワフワした感覚が描かれている。風船そして川を調べていくうちに、次第に川とその土地に対する愛着がわいてきて、その場所を守るために自分でも信じられないような活躍をしていく。そしてとうとう少年は自分の居場所を獲得していく。


ボクは読みながら、なんとなく自分の生い立ちと重ねながら読んでいた。


ボクもこの主人公ほどではないが、小学校を3校、中学校を2校通っており、引越しが多かった。働き始めてからも6回住むところを変えている。そのたびに環境も友達も生活もすべてリセットされ、過去住んでいたときの人や場所の記憶はなくなっていく。大人になってからも「どうせすぐにまた別の土地に引っ越すから。」という感覚が無意識のうちに、こだわりや思い入れを持たないようにしようとしてきたような気がする。


この感覚が変わってきたのは、自分の子どもが生まれてから。

特に子どもが成長していくと、周辺の環境に無関心ではいられなくなる。そして、「自分は子どもに何を残してやれるだろう」と考えたとき、自分の子どもの頃の感覚を思い出して、逆に「大人になっても心のよりどころになるような故郷を残してやりたい。」と思った。そのためには、自分自身が根なし草でいつまでもふわふわ漂っていてはいられない。これが、僕がトコロジストという言葉にひかれた理由かもしれない。つまり「ないものねだり」だったのか。

子どもの存在ってのはやっぱり大きい。親の生き方を180°変えてしまうんだから。