親友が私にウェディングドレスの製作を任せてくれた

『いつか結婚するときは私の作ったウェディングドレス着てよね』

そんな一言をきちんと真に受けてくれてまだまだ一人前にはなれない私に本当に依頼してくれた親友。

絶対ガッカリさせたくない一心で一生懸命だった。




『先に寝るわ。無理すんなよ。』

笑顔でそう言い、ドアを静かに閉めたのは付き合って5年、同棲し始めて2年の彼氏だ。

他の仕事とも両立しながら親友のウェディングドレス製作に勤しんでいるこの半年。

『あ…ありがとうって言ってないな…』

手を止めた私はふと思う。

朝は遅く起きてくる私のために朝ごはんを作ってくれて食べ終わった食器を片付けて足早に職場へと向かっていく。

私が帰るとキッチンの机の上には綺麗に夜ご飯が並んでて、食べ終われば朝のように即食器を洗って片付ける。

食事中に吐き出す私の職場での愚痴も笑顔で頷きながら聞いてくれる。

愚痴を言うだけ言って、スッキリしてお風呂場に向かえばお風呂が沸いている。

お風呂から上がり即ウェディングドレス製作にいっぱいいっぱいな私に静かにコーヒーを差し出してくれて笑顔で去っていく。

休みの日だって一日中ウェディングドレス製作に夢中な私に特に何か文句を言うわけでもなく、変わらない充実したサポートを続けてくれる。

『大切な親友のためだから頑張らなきゃな』

そう言ってくれた翌日からずっと、私の身の回りが整ってるのは彼のおかげだ。

当たり前のように棚から取り出したタオルだって彼がいつの間にか洗濯して、たたんで並べてくれたものだ。





『好きだなぁ…ありがたいなぁ…』

小さく呟いてあとは仕上げだけのウェディングドレスを見つめる。

『でも、キミはどう思ってるんだろう…』

感謝を忘れてキミを当たり前に思う私をキミはどう思ってるんだろうか。

キミだって吐き出したいものもあるだろうに…





知らない間に寝てしまっていた私の肩にはタオルケットが掛かっていて、

(ちょっと出掛けてきます。)

って置き手紙がそばにあった。

当たり前のようにキッチンには朝ごはんが並んでいて…

それを頬張りながら何だかモヤモヤした気持ちを抱える。

『キミがいなくなる…なんてね。』





私はやっとやり遂げたのだ。

モヤモヤは抱えていたが日付を考えると今日までに作ってしまわなければ間に合わない日にちだったから。

我ながらの出来に感動しながら、これを着てバージンロードを歩く親友の姿を想像する。

涙が溢れて、色んな感情で騒がしい。





いつもなら夜ご飯が出来てる時間。

私は見ているようで見ていないテレビを見つめなから彼の帰りを待っていた。

携帯に電話をしたかったが、不思議なことに昨日からの不安が襲って電話をする勇気を持てないのだ。

『もう嫌いになったんだ…キミを当たり前に思う私を嫌いになったんだ…ありがとうも言えない私に嫌気がさしたんだ…』

笑い声で溢れるテレビを横目に必死に涙を拭う。

もう彼は帰らない。





その時、私の携帯が鳴り始める。

彼からの着信じゃないことは音ですぐ分かる。

覗きこむと彼の親友からだった。

何だか分からない感情で電話に出た。

『ごめんな。朝からコイツ連れ回して、昼から家で早めの飲み会してたら二人して寝ちまってた!これからコイツ起こして送るから!』


『大丈夫!歩きとはいえ二人とも酔っぱらいなんだから気を付けて帰ってきて!』

ホッとし過ぎて声を裏返しながらそう返す。

電話を切ったら急にまた泣けてきて…

『ごめんね。ありがとう。』

ってずっと呟いてた。





『ただいま!本当にごめん!ご飯食べた?食べてないよな。今から作るわ!いや、待てないか。どっか食べに行く?』

帰るなり間髪入れずに一方的に喋り出すキミ。

『大丈夫!ありがとう!大好き!』

咄嗟に返す私を不思議そうに見るキミ。

言葉でわからないキミにギュっと抱きつく。

『本当にありがとう。本当に大好き。』

とりあえず念押しで言葉も付け足す。

『ありがとう。俺も。』

そんな言葉を聞いたあと、それからお互い特になにも探り会うこともなく、二人で手分けしてご飯を作り、お風呂を沸かして、交代で入った。





『やっと出来上がりました!』

キミに報告して出来上がったドレスを見せる。

キミは上から下まで見渡して思い付いたようにドレスを私から奪う。

不思議そうな私の体にドレスをあてがいながらそばにあった花瓶に刺さった花を手に取り私に渡す。

『うん、イメージ出来た。』

よく状況をつかめない私をよそにスエットのポケットから小さな箱を取り出した。

小さな箱の中からキラキラ輝く指輪を取り出して私の左手薬指にはめてくれた。

『ずっと頑張ってる姿見てきて支えたい気持ちがいっぱいになった。早く作る側から着る側にしてあげなきゃって思ってた。

…結婚してくれる?』




私にはこの人しかいない。

後にも先にもいなくなっては困る人なんだ。

キミと一緒に選んだウェディングドレスを着て深く思う。

あっ、心配しないで。

お互いのサポートはお互いで助け合ってしてるから。

ありがとうも毎日伝えあってるから。




























『今日も一日おつかれさま。』

君に送ったすぐ後に
『電話していい?寂しくて眠れない。笑』
って君から返信。

君を思い続ける私にもお疲れさまのご褒美かな?

#妄想 #恋愛 #片思い
久しぶりに会えたのにキミは本を見つめてる。

寝たふりしながらキミを見つめる私。

分かってるんだよ、本に嫉妬する女とかキミにとってはウザいだけだろう。

だから言わない。

ただとりあえず気付かれないようにキミを見る。

時々ずれたメガネをくいって上げる。

その仕草に顔が熱くなってニヤケかけて暴れる感情をキミに背を向け、寝返りでごまかす。





『起きた?』

キミが突然聞いてくる。

何だかよく分からないけど恥ずかしくなって寝たふりを続けてみる。

構ってほしくて嫉妬してたのにいざ声をかけてくれたら無視とか…矛盾してる。

ただ私を忘れた訳じゃなかったんだと嬉しくて更にニヤケそうになる。

いや、ニヤケてる。

キミが立ち上がる気配がして心が脈打つ。





と、喜んだのもつかの間、キミがキッチンに向かう気配。

コーヒーの良い香りが立ち込め始めたと思えばキミがさっきまでいた定位置に腰を下ろす気配。

ゴクっていう喉の音とまた本をめくる音が聞こえた。




『わぁーっ!』

しょうがなかった。

もう抑えきれなかった。

寂しかったんだ。

許しておくれ。

布団から叫びながら立ち上がり、キミから本を取り上げる。

我ながらウザい女だ、という感情を片隅で巡らしながら、ビックリした顔のキミを一方的に抱き締める。

『ちょっと、寂しいじゃあないか。』

本音を冗談っぽく呟きながらキミの顔を見つめる。

『もっと早く言えばいいのに。』

笑いながらキミが言う。

他愛もない話が途切れた瞬間、本を取り出し自分の世界に入っていったキミの邪魔をしたくなかった。

そんな恩着せがましい気持ちを発することが出来ないまま『すいません…』と弱々しく呟く。

変な空気に耐えきれず私はキミのメガネを取り上げかけてみる。

キミは『やめなさい』と諭しながらも子供のような私の行動を見届ける。

『似合う?』

『裸眼だからよく分かんないわ。』

耳を赤くして目をそらすキミに自意識過剰になる私。

『早く返しなさい』

スッと奪ったメガネをかけ直して、キミは私を抱き締める。

『せっかく一時間も読んだ本なのに内容、覚えてないわ。いつこう出来るかって考えるほうが大変だったもんな。』

キミの告白に心臓が踊り出す。