付き合って2年目くらいの夏のことだった。
ビンソンに
「今週末は、クラブに行かない?」
と誘われた。私は何となく気が乗らなくて
「たまには友達と行ってきたら?」
と返事をした。
彼は「OK」と言って、男友達数人で横浜へ出かけた。
翌朝早朝、電車に乗って帰ってきて、ベッドルームにいる私を起こし
「朝ご飯を一緒に食べよう。」
と提案された。
見ればシャツの左胸あたりに口紅が付いている。
私は聞いた。
「楽しかった?」
答えは
「うん、とっても。」
私は
「楽しかったのは知ってるよ。だってここに口紅ついてるもん。」
と言うと
「君は意地悪だな~」
と笑って見せた。
きっと女の子と踊ってる時に付いたのだろうと推測して
「それ洗濯するから脱いで。」
と言って、一緒に朝ご飯を食べた。私は気持ちに余裕のあるいい女を演じた。
恐らく男はここでガミガミ言われたら、めんどくさいだろうし
いい気はしない生き物なはず。
しかもちゃんと帰ってきてるんだから大目に見よう。
朝食を食べ、歯磨きをして眠りに落ちたビンソン。その寝顔を見ているだけでも、大の男が安心しきって無防備な姿で私の横で休んでいることに幸せを感じた。
私も彼のぶっとい腕をブンッと引っ張って、自分の体にまとわらせ抱き枕のようで安心した。
週末はいつもこうやってお互いの凸と凹を合わせて寝ていた。
日曜日の夕方頃から、私たちは少し悲しくなる。
また一週間離れて生活しなければならないからだ。
ダイニングで話していた時、一度こう質問された事があった。
「もし僕が軍から逃げたら助けてくれるか?」と。
私はかなり戸惑った。彼をかくまえば私も捕まるし、逃げ続けて生活はできない。
だから正直に言った。
「今は辛いけど、もう少し辛抱しよう。」と。
うな垂れて悲しい顔を見せた。
私はビンソンの大きい体を抱きしめて頭を撫でた。
そうしてビンソンが帰る時は、
駅まで口数少なく歩き、まるでまた数ヶ月会えないような寂しい気持ちで電車を待つ。
電車が来たら
「Basaに戻ったら電話するよ。OK? BABY.」
と優しく言って HUG をしてさよならする。
物理的な距離はあっても、精神的距離は物凄く近かったカップルだった。
< 続く>







