非日常を求める国の時-toki-

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その子と出逢ったのは
ちょうど去年の今頃。

春輝がいつものように客を呼んだのだが、珍しくそのお客さんが枝(新規の知り合い、友達等)を2人連れてきた。

その春輝のお客さんとは普段から仲良く、話す機会も多いお客さんだった。

その日は少し忙しくてあまり席に着けなかったのだが、最初見た時の感想は『普通の子』。

別に悪い意味ではなく、水商売してるらしかったが、その割にはホストに通わないような感じの普通そうな子だな、と言う意味だ。

肩より少し長い黒髪に整った顔立ち。大人しそうで清楚なイメージ。

正直タイプだったが、何が惹かれるわけでもない。

その時はホストとはそういう生き物だと思っていたし、何より売上しか見えてない当時の私にとって可愛さや雰囲気は問題では無かった。

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結局少ししか着いてないし、何を話したかなんてほとんど覚えていないが…

「髪の毛さらさらだね。黒髪好きだよ」
時「まじっすか?触る?」
「ほんとにさらさら。」時「貴女もさらさらっすね。お返しに触って良いっすか?」

なんて会話をして髪の毛を触り合ったのを覚えている。

特に深い意味は無かったが、今思えば普段から髪の毛を触られるのを嫌がる私が髪の毛を触らせたのは珍しい事だった。

それからその子はちょくちょく店に来るようになった。

『仕事お疲れ様。帰ってゆっくり休んでね』

とメールを送ればメールもらったしと言って会いに来るし…

『今日酔ったわ』や『今日ちょっと風邪気味やけど』

なんて送れば、店に来てとも言ってないのに心配して自ら進んで店に来た。

本当に楽な客。良い子。

大して太客でもなかったし、楽なだけで情を持ったなんてありえないし馬鹿な話だが、それから色んな話を重ねる度に性格や考え方を知り、その健気さと真っ直ぐさに情が移っていった。

相手が特別な関係や他の何かを求めてる訳では無かったが、気付けば私はその子に好意を持っていた。

『好き』

その言葉に気まずさを感じ始めたのはいつからだろう。

嫁と子持ちの私が他の誰かと付き合って良いはずが無い。

ただもうその時には、私の頭の中から黒髪の少女が離れる事は無くなっていた。

いつも頭に浮かぶ彼女に心奪われていた愚かな私を、今私は嘲り笑いたい…
新人の名前は春輝。
四国出身の元ホストで、ホスト歴は四年。

年は私と同い年だが、さすがに十代やそこらからホストしてるだけあって実力は大したものだった。

みるみる内に売上を上げ、1~2ヶ月もするとナンバー入り。

店での発言も増えていき、私に指示を出してくるようになった。

「○○してくれないと困る」
「頑張ってるのは分かるんスけど」
「もう俺がやるから」

確かに売上は春輝の方が上だったし仕事も出来たが、気付けばタメ語で話され、先輩の威厳もプライドもズタズタだった。

歴が長い分私より仕事が出来るのは仕方ない。

でも悔しかった。
単純に悔しかった。

見下した態度、圧倒的な実力差。お互いすぐ口論になり、店公認の犬猿の仲になっていった。

人一倍負けず嫌いな私はそこで張り合ってしまったのである。

何が何でも負かしたい、少しでも良いから近付きたい。

それから私のホスト人生が始まったといっても過言では無いだろう。

それから約3ヶ月。
死に物狂いで営業した。

昼の仕事の休み時間、さらに睡眠を削っての営業、同伴やアフターを時間の限り尽くし努力した。

その頃もともと家での時間が少なかった為か、Yともあまり話さなくなり、子供に夢中な姿に寂しさを覚えながらもひたすら仕事に打ち込んでいった。

『色恋営業』

私はその時初めて今まで守り通してきた一線を越え、色はしないと言う考えを捨てた。

そうしてそんな3ヶ月が過ぎ…

春輝がNo.3の時は私がNo.4。
春輝がNo.2の時は私がNo.3。

そんな月が続いている頃、いつもと変わらない日常、その後過ごしたであろう人生を大きく変える大事件が起こる。

人生最大の大事件。

その日その子に出会った事が私の人生の全てを変えるとはその時思うはずも無かった。

続く

子供と結婚を承諾。

けして安請け合いした訳ではなかった。しかしその時の私は考えが甘かった。

所帯を持つことの大変さや苦労を知らず、ただただ憧れていたのだろう。

『普通の家庭』に…

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それから私は夜の仕事を辞め、昼の仕事をするようになる。

と言っても大検を受けて大学に行き、その大学も辞めてしまったのだから稼げる仕事なんてそうは見つからない。

正社員として働いたものの、月給15万。

途方もない現実が襲いかかる。

貯金もない私達が生活していくには全くと言っていいほどお金が足りなかった。

親から出産費や出産後の子供用品などの援助は約束されたものの、免許や資格を取るなんて余裕は当然無く、その後の生活や未来に不安を抱いた私は一つの決断をする。

もう一度夜の街に戻ること。

それはYも了承したことだった。

掛け持ちすれば何とか生活出来るし、貯金も出来る。

家庭を持ちながら夜の仕事をする事に抵抗はあったが、売上を上げればもっともっと余裕のある生活ができる。

そう思いまた夜の世界に足を踏み入れたのだった。

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それから一年は
あっという間だった。

昼夜仕事を両立し、寝る時間すらほとんどない。

売上を上げる以前にお客さんに連絡をする時間も無ければ会う時間もないのだ。

その後一年は給料が上がることもなく黙々と働く日々が続いた。

ただそんな中、籍も入れて子供も生まれ、昼夜の両立はある程度生活を満たし、これで良いんだと思い始めた頃、店に新人が入ってきた。

この新人が現れた事、それが私の人生の二つ目の大事件である。

続く