バッテリを使用するのであれば、
ぜひとも満充電にしてから使いたいものです。
●充電完了を知る方法
まず鉛バッテリの特性として、充電率が上がるにつれて充電電流が減りますから、これを監視すれば良さそうです。
今回は実測から、充電電流が50mAを切ったところで満充電とし、LEDを光らせたいと思います。
秋月の鉛蓄電池充電器パーツキットでは、シャント抵抗(R7)で充電電流を見ながら、出力する電圧を決めています。
充電電流が50mAということは、シャント抵抗が1Ωの場合、抵抗両端に50mVの電位差が発生します。
これをコンパレータで比較すれば、LEDを制御できそうです。
コンパレータ出力はVin-がVin+を上回るとLowを出力します。
これでVCCから電流を吸い込んでやれば、LEDが点灯します。
なお今回はオペアンプLM358をコンパレータとして使います。
シャント抵抗の電位は、入力側が出力側より高いのでこれを基準電位とし、コンパレータの+に入力します。いっぽうーの入力ですが、VR2の中点を+25mVオフセットすれば、点Aではちょうど50mVオフセットしたことになり、シャント抵抗両端の電位差が50mVになったとき、オペアンプのVin+とVinーは同電位になります。
充電電流がさらに少なくなり、シャント抵抗両端の電位差が50mVを下回るとVin-の電位のほうが高くなり、コンパレータはLowを出力します。
オペアンプからはあまり電流を取れないので、トランジスタで一旦受けてからLEDを駆動します。
●回路図
電源はバッテリ充電に使用するDC12Vと共通とし、先ほどの比較回路をオペアンプLM358で作っています。VRはワイプ幅を狭くして精度を上げています。
●バッテリからの逆流
この回路はACアダプタの電源を利用していますが、ACアダプタを接続していないとき、バッテリから充電回路を通して本回路に逆流が発生します(このとき、シャント抵抗出力側から電流が流れるのでVin->Vin+が成立し、LEDが光ってしまう)。
これを防ぐために、LEDと直列にツェナダイオードを入れています。バッテリの電圧は6Vですので、逆流による電圧は高くても6Vとします。逆流時のLEDまでの電圧降下は、次のようになります。
(バッテリ電圧)ー(レギュレータのドロップ電圧)ー(ツェナ電圧)ー(トランジスタのエミッタコレクタ間電圧)=6-1.5-2-2-0.2=0.3[V]
これで、LEDが点灯する電圧(VF)を十分に下回ることができ、バッテリの逆流でLEDが光るのを防ぐことができます。
またトランジスタのベースに入っているLED(LD101)ですが、これはオペアンプLM358の最大出力電圧がVCC-1.5V程度であるために、たとえ出力がHighになっていてもLEDが点灯してしまうのを防ぐためです。
いわゆる「レールtоレール」や「フルスイング」といわれるオペアンプを使用する場合は、このLEDは不要です。
充電が完了するとこのLEDも光るので、外付けランプを接続しなくてもわかります。ここのLEDは何でも構いませんが、VFの極端に高いものや、VFの変わってしまうものは避けましょう。自動点滅LEDや抵抗内蔵LEDは使えません。
なおこの回路は12Vバッテリにも使用できますが、実験はしていないので組む前に設計を充分に検討してください。
●部品表
基本的には秋月電子で揃うはずです。
半導体や抵抗など、汎用のもので大丈夫でしょう。
ツェナダイオードは4V程度もの1本でも可能ですが、ほかのプロジェクトでも使用している2.0Vのもので統一しています。
●基板の組立
背の低い部品から実装していきます。U101は調整後ICを取り付けます。
ユニバーサル基板の四隅はドリルでネジ穴をあけておきます。
赤い線はビニル線等でジャンパします。
●回路の調整
基板を組んだら、電源を入れる前にまず電源ラインのショートを確認します。
J101を抵抗レンジで測り、ショートしていないことを確認します。
それからJ101に+12Vを印加し、ICソケットの8-4番ピンの電圧が9V出ていれば電源はOKです。
続いて電源を入れた状態で、J102の1番ピンーGNDに10.0Vを入れ、ICソケットの3番ピンが5.0VとなるようVR101を調整します。
今度はJ102の2番ピンに10.0Vを入れ、ICソケットの2番ピンが10.025VとなるようVR102を調整します。ここの調整は2種類の電源が必要になるので、J102に入れる電圧は、電源と共通としてもかまいません。
いずれにしても、オペアンプの2番ピンの電位が+0.025Vのオフセットされるように調整すれば良いのです。
この調整は非常に微妙なもので、VR101と102は、2kΩ程度の多回転ボリュームのほうがよいかもしれません。
調整していてもズレはありますので、実際に使用するさいに充電回路のシャント抵抗両端の電圧が50mVになったとき、LEDが光るようVR102を調整します。