「オレは先生」あの日のクソガキへ①
散らかった部屋を眺めてる。
コイツら全てを居るべき場所に帰してやんなきゃ。
部屋をキレイにするのは好きだ。
風通りの良いスッキリした部屋に居れば、それはまるで旅行先のホテルみたいにバカンスを楽しめるからだ。
部屋を散らかすのは好きだ。
日々気にしてる事を全て放り投げて先の事なんて忘れて、今今今今今。後の事なんて知るかよ。
ワイルドな気持ちになれる。
-部屋の話なんて、どうでもいい-
目が覚めて、やっぱり寄りを戻しつつあるタバコに火を付ける。タバコは「何を想って吸うか」と「何を想って吐き出すか」が大事だ。
何事も考える、と想う、をゴッチャにしちゃいけない。
-コレは、オレが生きてる上で分かった事だ。教科書に載る様な大それた事件じゃない-
人間は恐れを感じた時に考える。
きっと生きていく為には沢山の問題があるから、それを解決する為に考える生き物になったんだろう。
だから良く考えてる人は問題に足を取られず歩いてる。色々が上手くいく。
-でも、ずっと怯えたままだ-
カンタンに命を落とす動物や虫を見て「弱い」「儚い」と思うかい?そこには恐れが無く、勇敢な一生とも思えなくはないかい?
ドラッグで死んだパンクロックヒーローに10代の誰もが憧れた。
18才で人生は終わるってオレは本気で思ってた。
後は全部余生だ、と。
オレは36才になった。
人生をもう二回生きた。
あの日のクソガキから言わせれば、そーゆー事だ。
(携帯電話を眺める位なら、それを使って誰かに電話した方が良い。何の料理もせずにフライパンを眺めて一日を過ごす様なモンだ)
オレは今バンドをやってる。
18才からだから18年やってる。
さっきの話で言えば、
「バンドをやるまでが一生」だった。
そして「バンドをやってもう一生」が過ぎようとしてる。
オレの人生は18年周期みたいだ。
-人生が二周年を迎えました-
カンタンに情報が手に入る。
バンド仲間の近況なんて本当はどうでも良い。
お前が元気で居るか、ワッハッハって笑ってるかが気がかりなんだ。
でもちゃんと今朝も悔しい気持ちをもらったよ。
こんなモンでも燃料にはなるからな。
直接会った時に、自分の身に起きた自慢話をひたすらドヤ顔で話す奴とは友達にはなれない。それに向けての相槌すら気づかないくらい自分の事ばっかり話す奴。
SNSってモンを使うと、何故かみんなそんな奴になっちまう。オレもそうなってるのかも。自分が上手くいってるって事を「楽しかった」って思い出話風にアピールするのが、"このクラス"での流行りだ。
好き、なんてのは人に聞かれたらその分だけ素直に答えれば十分のモンだ。小学生時代「私〇〇君が好きなんだよねー!」なんてクラスのド真ん中で大声で話してる女子がキライだった。それをニヤニヤ聞いてる奴らもキライだった。
-オレはそんなんじゃねぇ。もっとカッコ良く、自由に生きてやる-
ずっと片想いをしてる。
それはバンドを始めるもっと前から。
ブルーハーツを好きになった13才の時から。
音楽の女神は居る。
オレは彼女と仲良くしたいだけなんだ。
随分回りくどい例えに聞こえるかもしれないけど、一番分かりやすく言ってるつもりだよ。
(長くなった)
「先生」ってのは「先に生きてる」って書くって事に気付いたのは、今朝目が覚めて一本目のタバコを吸ってる時だ。
「先に生まれた」ってだけでも先生だ。
だからオレは先生。君の先生だよ。
勉強は教えてあげられないけど、君が何かをしたくなった時、自由になりたい時、素直になりたい時に力を貸してあげられると思うんだ。
それは今日という一日を、この一瞬を自分って言う世界で一番好きなマシンに乗って駆け抜ける事で、伝える事が出来ると思ってるんだ。
オレにも沢山先生が居る。
親もそうだし、兄貴もそう。
年が下だって「先を生きてるな」って思える奴もそう(シャクだけどね)。
みんなが"森のフクロウ"みたいに君に大事な事を教えてくれるハズだよ。
星ですら生まれたら必ずいつか消えていってしまう。そんな時代に沢山の「先生」の中から今日オレを選んでくれてありがとう。
続きはオレと君が好きなライヴハウスで。