『第2章』 シーン1 大学に入り・・・
信也は何とか1浪してヤマト美大に入りグラフィック・デザインを学ぶことになった。しかし、憧れていたデザイナーの実態を知るうちにデザイナーになりたいという気持ちに陰りが見えてきた。
「ねぇ、信也、今夜はどうする?」と同じサークルで親しくなった澤田 裕美が校舎裏の土手でボーっとしていた信也に声をかけた。
「うん、今夜って、コンパのことかい?」
「そうよ。ワタシ、あんまり出たくないわ。だって、あの人、来るでしょ。」
「そりゃ、来るだろうな。あいつは授業はサボっても飲み会だけは皆勤賞ものだもんな。」
あの人、あいつ、と呼ばれているのは信也と同級の田浦 弘明という無類の女好きで、酒好きの寒いギャグを所構わず発するお調子者で、女子達からは大不評の男のことであった。
「あいつって誰のこと?」
その背後の声に信也と裕 美は飛び上がるほど驚いた。
『第1章』 シーン5 「いよいよか」
さぁ、入ってくれたまえ、と古河の知り合いが
我々を導いた。
しかし、何か変だ、とてもこれからエロスの香り
漂う、めくるめく快感が期待できる雰囲気ではない。
『今日は妹の蘭子の誕生パーティーにようこそ』
俺たちは愕然とした。
「ら、蘭子のパーティー?」
信勝はことの真相が飲み込めず、一人ズボンを下ろそうとしていた。
さぁ、どうなる・・・
構えがどっしりとした門が、まるで来る者を選別しているような
面持ちであった。
「お、おい、ほんとに俺らが行っても大丈夫なんだろなぁ」
信也と共に誘われた信勝は、声を震わせて古河に聴いた。
「ばか、何言ってんだよ、気楽に来てくれ、大勢の方が
楽しいから、って言われてるんだから。」
そう答えた古河だったが、本人も足が震えていたのだった。
信也は女性との経験が無いわけではなかったが、
決してその方面に自信のある人間ではなかった。
「さ、い、行くぞ。」
高揚した古河の声に、俺と信勝は夢遊病者のように
彼の後に付いて行った。
ベタな展開
第1章 シーン5 パーティー
「ら、乱交パーティー!」信也は思わず大声を出した。
「しっ、静かにしろ。」古河は信也の口を手で押さえ
「いいか。落ち着いてよく聴けよ、分かったか」
古河の言葉に頷いた信也は彼の手をゆっくり払って
「分かったよ、話し聴くから。」信也は古河の表情を
思い返し、期待を膨らませつつ、古河の話に耳を傾けた。
どうやら古河の親戚に今で言うセレヴがいて今夜、
乱交パーティーをするから友人を誘って来いと
言われたそうだ。しかし、友人は選んで連れて来い、
とも言われたらしい。
信也は、突然の誘いに収拾がつかなくなり
ましてこんなうまい話にすぐに乗ってもいいのか、
という躊躇いも手伝い即答しかねていた。
「おいっ、信也、どうすんだよ?」
古河の言葉に我に返った信也は
「あ、あぁ、い、行くよ、勿論、行くとも。行くぞ。行かせてくれ。」
と自分でも次第に気が高まるのを感じながら返事をした。
そして、その時がやってきた。
『第1章』 シーン4 恋人の出現 間近
信也は現役では、塙先生の言ったとうり、どこの美大にも受からなかった。
信也は両親に頼み込んで一浪だけさせてもらう事になり、御茶ノ水の美術系の予備校に
通い始めた。しかし、真面目に受講していたのも初めの内だけで次第と予備校は
友人との待ち合わせ場所と化していった。
そんなある日、古河という松田優作をソフトにした風貌を持つ友人が信也に声をかけてきた。
「信也、今晩ヒマ?」となにやらにやけた顔で言うので、信也は怪訝そうに答えた。
「何?暇なら売るほどあるけれど・・・」
次の 古河の言葉に信也はわが耳を疑った。
やってられねーよ
信也は『自分は一体どうなるか、っていうかどうなりたいかが見えていないこのままで一生過ごすのだろうか』と悩み始めた。
時に流されて何も見えなくてカオスの中に舌鼓を打って俺を惑わせる悪魔に身を売ってもいいや、という気分になっていた。
さて、どうしたもんか
『第1章 シーン3 』
信也の前に座ったいかにも危なそうな男は、「兄ちゃん、どっから来たん?東京は初めてか?」と完全に信也を地方から出てきた家出人と決めつけていた。「いいえ、僕は東京です。」と英語に直訳したらNo,I'm Tokyo.となるくらい妙な返事をした。しかし、男は「あんな、ええ働き口 があるんやけど。ま、ちょこっと車に乗って・・・」どうやら『たこ部屋』というひとたび入ったら死ぬまで働かさせられる所の話をし出したようだ。
信也は「すみません、僕眠たいので少し寝てもいいですか?」と後から思えばそら恐ろしいことを言った。
ところが意外にも男はすんなり、信也の言うことをきいて、他のボックスの女性のところに行ってしまった。
信也は暫くうとうとし、気が付くと男はもう居なかった。
自分って・・・
『第1章』 シーン2 「深夜喫茶にて」
もうどうでもいいや、という感情と、いや・ここで発奮しなければ、という感情が交錯していた信也は、ある夜、
あてもなく新宿をうろついた。まだ、未成年であった信也はさすがに飲み屋には入れず深夜喫茶と当時呼ばれていた、とある地下の喫茶店に入った。店には、ほとんど客が居なかった。紅茶を頼み(彼はコーヒーを飲まないので)これからのことを考え始めた。街を徘徊していた疲れと暫く続いていた睡眠不足のため、座って間も無く、頭が朦朧とし始めた時、いかにもヤクザ風の男が信也の前の席に他の席から移ってきた。
ストーリー開始
いよいよ本格的にストーリーを始めようとしています。人生は短いのか長いのか分からないまま生かされている馬鹿でどうしょうもない男の話がいつ終わることなく始まります。
『第1章』 シーン1 「高校の美術の授業中」
塙先生「確か、君は美大を狙っているんだったな。」
俺「はい、一応・・・」
塙先生「こんなんじゃ、とても美大なんて無理だね。入れるわけないね!」
俺「・・・・・」
周りの同級生も気不味そうな雰囲気になり、その美術の時間は終わった。
俺は、榊 信也(さかき しんや)という進学校に在籍していた頃、何となく将来は美術関係の道に行けたらいいなと思っていた特に可も無く不可も無い平凡な高校生だった。
平凡というのは、実は大変なことだと俺が知るのは、それから、何十年も立ってからだった。
