新刊「前借り先進国」文在寅政府自評
「韓国を先進国入りさせた」牽強付会
空しい宣伝は止め、失敗を乗り越える道を探すべき
曺国(チョ・グク)元司法長官は自分の新刊『前借り先進国』で文在寅政府を「初めて大韓民国を先進国入りさせた政府」と自評した。韓国日報の資料写真
曺国(チョ・グク)元司法長官の言葉をめぐり、改めて問題を提起するのは意味のないことかもしれない。にもかかわらず、あえて彼に関する話をするのは、彼の最近の供述が聞き流しできない、穏やかでない内容であったためである。
彼は文在寅(ムン・ジェイン)政府のことを「初めて大韓民国を先進国入りさせた政府」と評価したらしい。出典は最近出版された『前借り先進国(가불선진국)』という本である。曺氏は同書で「世界的に韓国の地位が高まり、発言権も強くなった」、「南北軍事的緊張が最小限に抑えられ、コリア・ディスカウント(南北分断による軍事的対峙状況、財閥の支配構造による二重化、景気状況に敏感に反応する産業の高い輸出依存、労働市場の硬直性、会計の不透明性など、経済状況の不確実性により韓国の株価価値が実際より低く策定されること)という言葉が消えた」と述べた。
現政権の中核としての5年間の思い出を独白することなら何の問題にもならない。しかし、少なくない人々に彼の言葉は依然として厳正さを備えた知性人による発言と捉えられ、彼自身も本を通してその言葉が歴史的評価として残ることを願っているように見える。そのため、その意中を真顔で問い詰める必要が生じたのだ。
まず曺氏は、文在寅政府が「先進国入りさせた」と言ったが、「させる」という使役動詞を使ったのは妥当でない。「漢江の奇跡(朝鮮戦争後からアジア金融危機まで韓国の半世紀に及ぶ急激な経済成長を示す象徴的な用語)」が朴正熙(パク・チョンヒ)政府ではなく、国民の血と汗で成し遂げたものなら「先進国入り」ということも文在寅政府がそう「させた」と表現するのは間違っている。そもそも現政権の政治目標は先進国入りではなく、正義と平等だったはずだ。そのため、曺氏は一歩譲っても「(任期中に)先進国入りした」という程度で発言すべきだった。
問題はまだある。曺氏が語った先進国の定義がとても漠然としているのはそうだとしても、「世界的に韓国の地位が高まり、発言権も強くなった」という発言や「南北間の軍事的緊張が最小限に抑えられ、コリア・ディスカウントという言葉が消えた」という発言は納得しがたい。
1994年の外交現場のことを曺氏はわからないと思うが、当時の孔魯明(コン・ノミョン)外交部長官(外相)が四者協議のため中国に訪れた際、江沢民(チャン・ツェーミン)主席はわざわざ執務室の外まで出迎えに来て孔長官の到着を待った。3分余りだったが、正しい姿勢で立ち、ポケットからコームを取り出して何度も髪を整えていた江主席の洒落な姿が目に浮かぶ。そして、これは少し滑稽にも思える話だが、金泳三(キム·ヨンサム)前大統領は各国の代表が集まる首脳会談でもリーダー役を務めようとする人物だった。そのためか、ビル・クリントン(Bill Clinton)前米大統領は柔順な態度で待遇し、橋本龍太郎元首相は金前大統領を自分の兄のように接したという逸話がある。
もちろん、当時の韓国の国民所得は3万ドル以下で、今のようにG7サミットに参加することもできなかった。しかし、現政権の文大統領の国賓訪問の時に中国側が見せた無礼はどうだろう。金前大統領や孔長官が受けた待遇と比べてみると少なくとも韓国の国際的地位が現政権下で突然高まったように話すのは牽強付会であるに違いない。そして、北朝鮮がICBMなどを利用して軍事挑発を続けている現状だけ見ても「南北間の軍事的緊張が最小限に抑えられた」という話は言うまでもない。
現政権は任期中に韓国の国際的な地位が大きく向上したことを成果としてそれとなくアピールして来た。文大統領の「誰も揺るがせない国」という文句もその一例である。しかし、そのようなフレーズに触れるたび米中央情報局(CIA)の鼻息をうかがっていた軍部独裁時期(①1961年、朴正熙(パク·チョンヒ)らが5・16軍事クーデターを起こし、第二共和国を崩壊させ、国家再建最高会議を運営した時期②1979年、全斗煥(チョン·ドゥファン)などの新軍部が粛軍クーデターを起こし、政権を掌握することで国家保衛非常対策委員会を設置した以降の時期)や南米のような新植民地(第二次世界大戦後、形式的には独立したが、軍事的には事実上他国の支配を受ける国、又はそのような地域)状態の国を見ているようでとても不思議な気分になる。
現に「共に民主党(더불어민주당)」は政権を明け渡した。従って、失敗を直視して実力を伸ばし、未来の政権獲得に備えるのが政治的責務であろう。曺氏も改革勢力(歴史発展の合法則性により社会の変化や発展を追求する勢力)の発展を望むなら出鱈目で実質を糊塗(こと)し、自足するのは慎むべきだ。

