あれは大学3年の春のこと。大学の構内にも所々に桜が咲き乱れ、今年も新入生が春の装いに身を包み、これから始まるであろう新しい人生の門出に胸躍らせている季節。
意気揚々と歩いてくる若人を尻目に、私はバス停の脇にあるベンチに座ってぼんやり空を見上げていた。
「ハァ。」ふとした瞬間にため息がもれる。
いつも変わらない毎日、マンネリ、いや一人倦怠期とでいうのだろうか、なんともいえない閉塞感が漂っていた。
当時、田舎から出てきたばかりの純朴な新入生だった私は、ここぞとばかりに思い切って華やかなイメージのあるテニスサークルに入ってみたものの、どうにもイマイチ馴染めない日々が続いている。
「ここらで新しいサークルに入ってみるのも悪くないか。」
唐突な思いつきではあったが、そう考えるやいなや早速、サークル募集の掲示板に一通り目を通す。
さすがに3年ともなると入れるサークルも少なかったが、学年不問と書かれている一枚の張り紙を見つけた。
さすがに3年ともなると入れるサークルも少なかったが、学年不問と書かれている一枚の張り紙を見つけた。
どうやら、旅行サークルらしいのだが、名前は「唐津沢研究会」という少々相容れぬものである。
しかしながら、他にめぼしいものも見当たらず、これも何かの縁だと膳は急げとばかりに、現代っ子らしくメールで連絡を取った。そして後日、サークルの説明会に赴くことへとなったのである。
きたる説明会の当日、私はやや緊張しながらもサークルの部室の前まで行くと、震える手でドアノブをぎこちなく回した。
「ガチャ。」なんともいえぬ金属の乾いた音が周囲に響き渡る。
中に入ると、サークルの部員とおぼしき人達が妙にあたたかい目でこちらを見ていた。
どうやら新入生と間違えていたようである。そうそうに誤解を解いたものの、途端に3年から入るという恥ずかしさが込み上げてきてやや伏目がちに説明を聞いていた。
時がたち緊張もほぐれ目の焦点も合ってきたころ、私は、目の前にいる人たちの顔を改めて見回した。
すると明らかにストライクゾーン一直線の可愛らしい女の子が一人いるではないか、
そうそれがまさに現代版「未知との遭遇」であった。
つづく。

