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「いい魚はいってるよー」
「松山君!学校帰りかい」
僕の通学路の商店街を歩くと至る所から活気のある声がきこえてくる。
小さい頃から通っている
この商店街だが
挨拶程度で深入りして
ここの初老と話をしたことはない。
僕の家はこの商店街を抜けて信号を二つ渡り
角を曲がった2軒目だ。
住宅街であるため、通学路になっている商店街はこのへんの主婦がよく使うのであろう。決して大きな商店街ではないが家の食卓にならぶ食材はここの商店街から調達されている。つまりなんでもそろうという事だ。
近くに大きなデパートができて若い客が流れてしまったせいか、何件か店は潰れてしまったものの、この商店街が潰れない理由は昔から愛されている人達と店柄なのだ。
12月にはいりコート一枚じゃ寒さにたえれない。
東京とはいっても
寒さが尋常ではないくらいだ。いつもの商店街を通り学校から帰っているとみなれない看板があった。
「質屋の柿谷」
なんだろうこの店は?
ガラスの棚に
いかにも高そうな
ブランド物の鞄やネックレス恐らく有名スポーツ選手のサインが入ったユニホームなどがある。誰のサインか考えたが、筆記体で書かれ背番号が22番、あらゆる角度で考えた結果自分のなかでキンケードだという事を決定させた。
キンケード以外考えられない。店の中では年の頃で言うと50歳くらいのマダムが
まずそうなインスタントコーヒーを啜っていた。


僕の家はそこまで裕福ではない。公務員の父が毎日決まった時間に出勤し、決まった時間に帰ってくる。
中学生になってもまともなお小遣いをもらったことはない。年末に少ない親戚からもらうお年玉を使って一年間を切り盛りしている。
ある休日、家に一人だった僕はおもむろにタンスやクローゼットをあさった。
なぜかというと、最近学校で例の質屋が話題になっている。とゆうのも何でも買い取ってくれるらしい。
友人の話では
お金がなさ過ぎてうんこを塩胡椒で炒めたものを持っていったところ、45000円で買い取ってくれたらしい。
ある友人は海外で買った偽物のボッテガヴェネタの財布を持っていったところ、300万の値打ちがついたとか。
僕は高ぶりながら
狭い家になにかないか探し回った。すると、父と母の寝室にある小さい棚に大きな輝きを感じた。


「○○が脱いだ!!」
「轟大臣、西麻布で大胆な夜!!」
そんな見出しが書かれた寝室にあった雑誌を握りしめ、噂の質屋に向かった。
質屋に向かう途中
1億ほどある現金が捨てられていたり。安倍総理大臣と肩がぶつかって殴り合いになったが今はそんなことどうでもいい。両手に握りしめている少しイカの匂いがする雑誌を早く質屋に持って行きたいのだ。キンケードのサインが入ったフライパンが増えていたガラス棚の横ドアを開けて中に入った。


「左親指を増やそうかしら」店にはいって開口一番にそれを言われた僕はひるんでうごけなかった。
思い切って雑誌をカウンターに置くとマダムがその雑誌を舐め回すように一枚一枚めくって鑑賞している。
心なしかマダムが座っている椅子から少し愛液が漏れているようにもみえた。
鑑定してもらっている間店内を観察した。キンケードのサインが入ったサドルや、自転車のチェーン、挙げ句の果てにはトーマス・キンケードとしか書かれていないノートまでみつけた。恐らくこの店はキンケードと協定しているのだろうと僕は踏んだ。
鑑定が終わり
「氷川きよしマジック」と
マダムが叫んだのでカウンターの方に駆け寄ると、軽い痙攣を起こしていた。「平成10年生まれですよ!」と声をかけても反応しない、すぐ病院に電話して救急車を呼んだ。
力尽きそうなかすれた声で
「アムロいきまーす」
そう言い残して救急車へ乗り込んでいった。


病院について
カップのコーヒーを飲んでいると、いかにも足が臭そうな医院長が駆け寄ってきた。
「もぅ手遅れです」
そう言うと僕の肩をポンと叩き歩いていった。お察しのとおり、とんでもない異臭を足から放っていた。
病室へ入ると今にも愛液を吹きそうなマダムが横たわっていた。「さっきの雑誌...」
僕は今や雑誌のことなんてどうでもいい。とにかく初めて会った人間が急に倒れたのだ。初めての経験すぎて同様を隠せていない。そんな僕を力尽きている腕で僕の陰部を触ろうとしてくるが僕は振りほどき、その腕を僕のパンツの中にいれてやった。僕も愛液がでたところでまともな会話がはじまった。


年が開けて商店街はいつもより静かな気がする。柿谷の看板も下げられ、テナント母乳の紙がシャッターに貼られていた。あの後家に帰りこっぴどく父親から叱られた。泣きすぎたせいか滋賀県の真ん中に湖をつくってしまった。
柿谷の閉まったシャッターを見ると僕宛の小包が置かれていた。路地裏に行きその小包を開けてみると中には少しイカ臭い見覚えのある雑誌が入っていた。それと一緒に恐らくマダムの親族であろう方から手紙が書かれていた。
「叔母が鑑定した雑誌です。雑誌の間に鑑定結果の金額とその現金が入っています。どうぞお納めください。p.sオカリナを吹くのがマイブームです。」少し涙が出てきた。雑誌をめくり挟まれていた茶封筒を開けると現金らしきものがはいっていた。鑑定結果の紙と一緒にだ。
「鑑定結果.15000ペソ」そうか、この雑誌は15000ペソなんだ。
上に羽織ったロングコートを脱ぎ捨て、涙をぬぐった。錆びれた商店街を駆け抜け、笑顔で家に帰った。






著者
覚野元気