新幹線の雑誌編集長からお呼び出しがかかる。

 何度かお会いして面識があるのだけど、今回は事情が異なる。

 新しいコラムを担当するアイドルさんとの顔合わせなのだ。


 これまで、鉄道+アイドルの組み合わせは精力的に撮影してきたのは2人 いるわけだが、今回の3人目の女の子は、また違った雰囲気を放っている。お会いするまでは、ちょっと不安だった。

 正直、カメラで金を稼いだこともあるので、純粋なアマチュアカメラマンではない。

 かといって、カメラで糊口を凌げるほどのプロでもない。

 

 だが、私は純粋なプロではない。

 この純粋なプロではないという思いには2つの意味がある。

 ひとつは、技術的な問題。要するに、腕。プロと呼ぶには到底まだ修行が足りない。

 もうひとつは、自分が傾注した被写体じゃないとキレイに撮れないのだ。つまり、ある程度、被写体に思い入れがないとダメなのである。 


 金をもらって仕事をするからには、発注主の意図を汲み、自分の好き嫌いは後回しにしなければならない。 それがプロのゆえんであり、仕事で写真で食べるとはそういうことだ。思い入れがないからモチベーションが上がらないなどと小言を言っているようではプロになれない。半人前である。


 今回、新幹線雑誌でカメラマンを命じられて被写体となる女の子と会ってみた。

 女の子の評判は各所から聞いていた。

 だが、不安ではあった。

 この子を編集長に推薦したのが私だったから責任という意味もあるが、果たして自分はこの子を撮影できるほど、傾注できるだろうか? と。

 ただ、いたずらに撮るだけなら、それは彼女にとっても失礼だ。仕事と割り切って撮影するのだとしても、私にはそこまでの「腕」がない。


 ところが、そんな不安はすぐに氷解した。

 放つ雰囲気もそうなのだが、節々から感じられる彼女の気持ち。

 うまく言い表すのは難しいのだが、単純化してみれば「真摯な眼差し」と「鉄道への思い」いうことに集約されるだろうか。


 これまで、私は好きという気持ちだけで都電を撮り続けてきた。

 沿線で都電を楽しむ人も住む人も、みんな目をキラキラさせながら、普段は表出させないながらも都電を好いているのだ。それは飛鳥山で花見をする光景からも感じられる。


 別にテツヲタ的な知識は必要ない。ただ、都電が好きという気持ちが、こうした人たちの顔をほころばせる。


都電ひとつばなし-都電を楽しむ


 新幹線の雑誌で被写体となる女の子は田舎が青森だが、帰省するときは青春18きっぷを使うことが多いという。

「次に帰省するときは新幹線雑誌で連載を持ってるんだから、新幹線で帰らないとね?」

私が笑うと、彼女は新幹線について語り始めた。


一通り話し終えた後で

「でも三陸鉄道にも乗りたいんですよね。ローカル線が好きなんですよね。秋田内陸縦貫鉄道とか、3セクを少しでも応援したいんです。でも、これからは新幹線も頑張ります」


 都電の沿線で笑顔を見せる子供たち。

 同じような眼の光を持つ女の子。

 まずは、楽しむ。楽しめること。それが第一。

   

 鉄道+アイドル。

 連載スタートを告げる号砲が頭の中で鳴り響いた。