都電の話を聞いて回っていると、年配者から話を聞く機会がたびたびある。。
都電の全盛期を知っている世代はそうでもないが、そのさらにもっと昔、つまり戦前に生まれた世代の年配者と話をすると、都電は都電ではなく、王電と呼ばれる。
都電はいくつもの鉄道会社を合併し、紆余曲折を経て、現在は荒川線が残るのみとなっている。
その荒川線の源流は、王子電気鉄道、つまり王子電車の愛称で親しまれ、だから王電と呼ばれた。
近年、都電は荒川線と呼ばれる。一系統しかなく、それ以外に呼びようがないのが、その所以だが、荒川線と呼ぶとどうしても荒川区の電車のような気もしてくる。
しかし、荒川線は、あくまで新宿区・豊島区・北区・荒川区の4区を走る。
中でも、基点となっているのが王子駅前電停なのである。
王子駅前電停は、北区にあり、荒川を冠する路線名をつけられたのでは、北区としては面白いはずがない。
実際、議会でも「王子線」と呼称変更するように都に働きかけようといった答弁がなされたことがあった。
しかし、実際に王子線に変更されることはなく、またそれほど北区側も都電に何か力を入れているわけでもない。
ただ、王子駅前電停を挟んで、都電の色が東西で分かれるのは乗車してみると、手に取るように感じられる。
王子駅前-早稲田は都会的であり、王子駅前-三ノ輪橋は下町的である。
それは、日比谷線や半蔵門線を介してつながる東急と東武の関係にも似ている。
東急沿線はどこか都会的で、街並みもカタカナのブランド品店が軒を連ねている。
東武沿線はどこか田舎的で、垢抜けなさが残る大衆的な店が軒を連ねている。
もちろん、東武の沿線にだって東急的な店はあるし、東急の沿線にだって東武的な店はあるだろう。
それでも、人々が描く路線のイメージは定着化している。
王子駅前を軸に、都会的な早稲田側と下町的な三ノ輪橋側が交錯する都電の風景。
全国的にも知られる早稲田大学が立地するだけに、全国的な知名度はどうしても西側に軍配が上がってしまいそうになる。
とはいえ、王子もまた、全国的に知られている町ではない。東京在住者にも「八王子」の近くと勘違いされてうぐらいのレベルでしかない。
都電の沿線は、やはりメジャー化できない宿命なのだろうか?