40系統もあった都電は、荒川線を残してすべて消えた。


 都電は東京の文化遺産であると、たびたび言われる。


 実際、都電廃止を打ち出した美濃部都知事は、そう宣言して都電を残すことを強調している。


 ところが、である。実は、まだ都電が全廃してしまう可能性が0ではないのだ。


 京成電鉄・東京メトロ千代田線と乗り換えが多く、利用者も多い町屋駅前電停。電停の傍らには、駅前広場が設けられている。


 町屋駅前から梶原まで、都電に沿うように幹線道路がある。正式名称を補助90号線と言われるこの道路は、近隣住民からは都電通りと呼ばれている。この都電通りが、実はまだ完全に完成していないのだ。


 その完成していない部分が、この町屋駅前に形として残っている。


 この駅前広場は、敢えて言うなら仮の姿。そのうち、補助90号線として自動車がひっきりなしに往来するようになるかもしれない。


 そして、補助90号線が完成すれば、今度は拡幅しよう!ということにだってなる。なし崩し的に、都電を廃止する動きが出てくる可能性が高いのだ。


 補助90号線は明治通りの抜け道として計画された。

 その明治通りには、都バスが走っている。


 「都電には草64(浅草-東池袋)という代替路線があるから、廃止しても影響なし!」

 という論調が、議会で出てこないとも言えなくもないのだ。



 都電がこの世から消えてしまう可能性、それは荒川区にかかっていると言っても過言ではない。



町屋駅前広場