都電の線路と沿線の家々は、距離が本当に近い。  東京において、電車と家の距離が近いのは、なんと言っても都電がナンバーワンだろう。    当然のことながら、軌道内を歩くことは当然法律で禁じられている。とはいえ、都電の軌道内を歩かないと、自宅の玄関にたどりつかない家もある。  そんな感じだから、都電沿いの家々に住む住民たちは、都電の線路をわが家の庭のように使っている。  例えば、軌道の隙間に洗濯物を干したり、漬物を置いていたりする。超私的な空間になっているのだ。東京都交通局も住民には強く言えないようで、このあたりは住民との距離に折り合いをつけているようだ。  今日の一葉は、軌道内に立てられた交通局による注意書き。以前、軌道内を歩いてはいけないとする地元警察署による看板を紹介したが、交通局の看板は「歩くな!」どころではない。犬の散歩するな!である。  軌道内で犬の散歩? 犬の散歩という言葉に、いかにも地元密着という感じが表れている。  都電は全長12.9キロメートルしかないから、東端から西端まで散歩することも可能といえば可能だが、だからといって散歩している人が、どれぐらいいるだろう。歩いている人や猫が横切っている様子はたまに見かけるが、犬の散歩している人は見かけたことがない。 軌道内散歩禁止