【その8SKを休憩室にする女性清掃員たち
 
この病院は、1階は外来診察室や受付、検査室などで2階から上が入院病棟でした。各階ごとに整形外科病棟とか小児科病棟とかに分けられていて、それぞれ1人ずつ担当清掃員を配置していました。
 
病棟の清掃は、各病室や廊下のモップ掛けとトイレの掃除が主でしたが、結構広くて半日はかかりました。特に各病室の患者の寝ているベッドの下にダスタークロスや水拭きモップを差し込んでいくのは重労働だったようです。多くの患者のベッドには色々な機械が置かれていてコードやチューブなどが何本もあり、これをうっかりモップで引っ掛けて抜いてしまったりすると大事故になるのでとても神経を使いました。
 
また、暇を持て余しているような患者から色々と話しかけられる事が多く、こちらは忙しいのにおしゃべりの相手に時間をとられて困りました。多忙な看護師やナースエイドたちは話相手になってくれないので、私たちがターゲットにされていたようです。
 
さて、朝から長い時間病棟にはりついて清掃作業をしている訳ですが、休憩できる場所はありません。昼休みは病院の外にある休憩室に戻って食事できますが、水分補給とかちょっと一息つきたい時には時間がかかるのでいちいち戻る訳にはいきません。
 
そこでどうしているかというと、それぞれの病棟にあるトイレのSKの中で休憩するという方法です。SKとは、簡単に言えば道具置場のことです。なぜSKと呼ばれているかというと、大抵あの中には大きな流し台が設置されていますが、そのメーカーの型式がSKという記号なのでそう呼ばれるようになったという説が有力なようです。
 
女性たちはみんなそのSKを自分のお城のようにしていました。道具を置くだけではなく色々な私物を持ち込んでいました。多くの人は、私物の入ったポーチはもちろん小さな腰掛や鏡や汗をかいた時の着替えの下着やタオルなどを持ち込み、綺麗に並べていました。
 
また、水分補給のためのペットボトルや小腹がすいた時のおやつまで置いていました。お菓子だけではなく、菓子パンや弁当などを置いてこっそり早昼をする人までいました。朝早くからの重労働なので12時の休憩時間までお腹が持たないようです。
 
隣の個室では入院患者たちがブリブリとかプーとか音を立てながらウンコしてるだけではなく、付き添いの看護師たちのやかましい声がのべつ響き渡っている場所でよく食事なんかできると思うのですが、特にP国人の清掃員はそんなこと一向に平気なようでした。