2月1日(水)午後3時30分から、さいたま地裁で行われた第12回裁判では、原告・飛行双方の最終意見陳述書が提出され、原告側訴訟復代理人弁護士が「弁論要旨」を読み上げました。
そこで、その内容を転載させていただきます。(サイト管理者)
これにより本件裁判は結審となり、5月24日(水)午前11:30に判決が出されます。
弁 論 要 旨
平成29年2月1日
第1 本意見陳述の趣旨
本意見陳述では,既に提出しております最終準備書面に相当する準備書面(6)を踏まえて,本件訴訟における原告らの主張を簡潔に述べたいと思います。
第2 戸田市議会における海外派遣の決定手続
1 戸田市では,従前から,議員の海外派遣に際して,いくつもの悪しき慣行が行われていました。
第一に,予算要求時に派遣の目的・必要性・内容等を議論することなく,漫然とどこかの目的地に派遣することとして予算要求を行っていました。実際に,平成25年の本件派遣においても,同年3月に予算要求を行った時点では,派遣先・派遣目的等は全く決まっていませんでした。
2 第二に,戸田市議会では,リバプール市や開封市との姉妹都市協定を締結する前から,任期に応じて,恩恵的・報奨的な海外派遣が行われていました。このような慣行は,姉妹都市協定締結後も引き継がれました。また,原告らが極めて問題であると考える慣行として,訪問団のメンバーを内部的に決定した後に,同メンバーが訪問先,目的及び行程等を決めてきたことがあります。これは,単に訪問の中身を決定する議論が密室で行われるという点で問題であるのみならず,市民から選ばれた市議会議員による,議会でのチェックの機会が与えられないという点で,極めて問題です。
その後,実際に実施された本件派遣の行程内容が,後で述べる通り,著しく不合理なものとなっているのも,このような慣行が原因といえます。
3 第三に,先に述べた慣行は,戸田市議会規則167条に違反しています。
議員の海外派遣についての判断がなされた最高裁判決等を受けて,地方自治法100条13項が改正され,これを受けて,戸田市議会規則167条2項において,「派遣決定を決定するに当たっては,派遣の目的,場所,期間その他必要な事項を明らかにしなければならない。」との定めが設けられました。同項の趣旨は,予算を伴う議員の海外派遣に際して,市民の代表である議員を通じて,当該派遣の中身をチェックすることにあります。しかし,戸田市においては,上記慣行が継続し,派遣について,議会によるチェックがなされなかったのであり,同項に違反する派遣決定が繰り返されました。
4 同項が設けられて以降も,訪問団のメンバーが派遣の中身を決定するという悪しき慣行は続き,その延長として,平成25年度の本件派遣が実施されました。本件派遣の中身は,合理性を欠く極めて不適切なものでしたが,そのような結果となったことの大きな原因は長年にわたって続いてきたこの慣行にあります。
第3 平成17年度リバプール派遣の決定経緯
既に述べた議員によるチェックが例外的に機能した事例として,平成17年度のリバプール派遣の決定経緯があります。
このときは,議会運営委員会において,行程表が開示され,行程に観光地が多く含まれていることが批判され,議会運営委員会において,議論が行われました。その結果,行程案から観光地が削除され,その代わりに,リバプール市との交流が加えられるという大幅な変更がなされました。
この平成17年度の経緯からは,議会によるチェック機能の重要性は明らかであります。のみならず,このような経緯は,議会がそのチェック機能を発揮するためには,行程表等の資料が事前に議論の前提として提出されていることが不可欠であることを示しています。
第4 平成25年度の本件派遣の決定経緯
1 本件派遣がなされた経緯については,準備書面(6)等で記載したとおりです。
2 かかる経緯にまつわる問題点は,以下の通りです。
第一に,平成25年5月の時点で,リバプール市への訪問を希望した議員が全くいなかったにもかかわらず,行き先がリバプール市へと決定されました。 第二に,リバプール市側で公的な受入れが可能なのは,10月18日の1日のみであることが判明して以降も,訪問期間の短縮が行われませんでした。また,旅行業者が日本旅行に決定した後も,訪問団のメンバー内で訪問の中身を決定するという悪しき慣行により,本会議に具体的な日程を提出することができたにもかかわらず,これをしていません。
第三に,リバプール市側は,受入れ日程の行程表につき,9月6日の派遣決定から一ヶ月以上経過した,派遣直前である10月8日に提出しています。リバプール市側が戸田市からの訪問団受入に消極的であったことがみてとることができます。
第四に,本件派遣が決定された9月6日の本会議において,派遣先の一つにシドニーが含まれていること等は明らかになっておらず,議論が全くなされないまま,漫然と起立多数で派遣決定がなされてます。
このように,本件派遣の決定経緯には,いくつもの問題点があります。
第5 本件派遣決定の裁量逸脱
1 判断の枠組
議会による海外派遣の決定が違法となる場合についての裁判例は,既に主張したとおりです。本件では,派遣計画の相当性については,目的の正当性に関する議会の裁量はより制約されると考えるべきです。さらに,治安確認目的という後付けの目的は,本件派遣の目的として考慮すべきではありません。仮に,考慮されるとしても,その手段との関連性は,厳しく判断されるべきです。
2 本件派遣決定手続の違法性
既に述べたように,本件派遣決定の手続面には重大な違法があります。
平成25年9月6日の派遣決定時に,派遣の具体的行程,シドニーも訪問先となっていること及び派遣の目的としてシドニーの治安安全確認があることのいずれについても説明がなされませんでした。これは,訪問団メンバーが行き先等を決定するという悪しき慣行によるものです。
結果として,決定に至るまでの一連の本会議において,派遣の要否,派遣行程の妥当性等について,議論がなされず,議会がこれらをチェックする機会がありませんでした。
3 本件派遣の必要性が乏しかったこと
まず,本会議において,本来ならばされるべきリバプール市への派遣の要否派遣行程の内容妥当性等について,前回の派遣時期,派遣内容を踏まえた議論がされませんでした。
次に,平成25年5月の派遣参加者への意向調査では,リバプール市を希望した議員はいませんでした。
4 治安確認目的の不当性・不合理性
被告は,シドニー市内に訪問日程の大部分を割いたことを正当化するために,同市内の治安確認目的が存在したと主張しています。
しかし,外務省が作成している「海外安全ホームページ」には,信頼性の高い治安情報が掲載されていること及び過去に事務局及び旅行業者によってシドニーの治安安全確認を行った実績があることからすれば議員による治安確認は必要性が無かったことは明らかです。
また,客観的な証拠からは,訪問団がこの目的に初めて言及したのは,派遣が実施された後であることは明らかであります。これに加えて,議員の宿泊先が中学生とは異なる髙いランクのホテルであったことや,訪問団が外務省の「海外安全ホームページ」すら確認していないこと,帰国後作成された報告書にも何ら言及がないことなどからすれば,この目的が後付けであることは明白です。
5 目的との関連における派遣行程の不当性・不合理性
まず,訪問団は,その内部で派遣先や派遣目的を担当する者を決めていません。
次に,派遣日数についてですが,実際の派遣行程をみると,10月17日は,午後4時にホテルへ到着し,19日は午後4時30分にホテルへ到着し,20日は午後3時30分にホテルへ到着しています。このように,訪問団は早い時間帯にホテル入りしており,日程を1日削ることは十分に可能でした。しかし,訪問団は,このような日程について短縮・変更等をしませんでした。
さらに,本件派遣において,誰の目にも明らかな問題点として,派遣先としても派遣目的としても明示されていないシドニー市内の滞在時間が,全4日の実質的な滞在時間のうち53%を占めていることがあります。そして,同市内の訪問先は,そのほとんどがいわゆる観光地です。また,訪問団がシドニーで実施したという安全確認については,これを示す客観的な証拠がありません。
6 戸田市・リバプール市中学生派遣交流事業の再開
戸田市側は,この目的が派遣目的の一つであったと主張しています。
しかし,派遣再開を実現するためには,両市の事務方レベルでの話合いが不可欠であり,単に議員が訪問して懇願するだけでは不十分でありますし,実際に「懇願」がなされた場所も,公的な場所ではなくレストランでした。
また,再開の窓口となってるのが州の教育訓練省であることやリバプール市の予算編成の時期についての事前調査はなされていません。
さらに,戸田市側が再開の障害と認識していた放射性物質についても,そのデータを持参して,手渡すといったことがなされていません。
このような経緯もあって,現在に至っても,リバプール市との中学生海外交流派遣事業は再開されていません。
7 その他のリバプール市内での訪問先
これについては,目的との関連で,必要性・相当性を欠くことについて,既に原告が提出しました従前の準備書面で詳しく検討しています。
8 まとめ
以上のように,シドニー市内の派遣行程及びリバプール市内の派遣行程は,いずれも派遣目的との関連で,戸田市に実益があるものではなく,全額税金を投入して実施するには,著しく不相当なものでした。
第6 まとめ
以上のように,戸田市議会の本件派遣決定は,戸田市議会の裁量権の行使に逸脱又は濫用があったことから違法です。そうすると,地方自治法の規定により,被告戸田市長は,高橋議員ら5名に対して,旅費(1人あたり47万8800円)を請求せよとの判決が下されるべきである。
裁判所におかれましては,原告である230名を超す戸田市民の訴えに対して,公正な判断をして頂けるようお願い致します。
以上
■「市議の海外派遣をやめさせる会」ブログ
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