戸田学の映画誌

戸田学の映画誌

映画を中心とした事柄をあれこれ書いてゆく雑記帳です。

ブラッドリー・クーパーの監督、出演の第3作。

第1作は、『スタア誕生』(37)の3度目のリメイク作品『アリー/スター誕生』(18)。

当初は、クリント・イーストウッドの監督予定だったが、彼から逆に監督を勧められた。

カントリーロック歌手と無名の才能との音楽と恋愛模様。

第2作は、『マエストトロ:その音楽と愛と』(23)は、作曲・指揮者のレナード・バーンスタインのその芸術と人生模様。

そして第3作が、この『これって生きてる?』(26)。倦怠期の夫婦の、夫がふとしたことから 、スタンダップ・コメディアン(漫談家)としての道へ歩みだす。やはり夫婦の物語で、本作ではブラッドリー・クーパーは、友人役で助演している。

考えたらブラッドリー・クーパーが演出した3作は、いずれも「芸道もの」ということになる。

う~ん、芸道ものといえば、日本では溝口健二や成瀬巳喜男といった巨匠、名匠の得意分野である。

 

小学校の体育館で、中国の巨大な赤い獅子が立ち上がり、子どもたちの声援が聞こえ、銅鑼や太鼓の囃子が聞こえる。

そしてタイトルロールとなる。スロープの階段のいちばん上の席に柱へ寄りかかって呆然としている、アレックス(ウィル・アーネット)。目は死んでいる。

 

朝、妻のテス(ローラ・ダーン)が歯を磨いている。その後ろのシャワールームからアレックスが出てくる。

「もう終わりにするべきよね」

「俺もそう思う」

子供部屋の外にいるウィル。ドアが開き、テスが出てくる。

「荷物をまとめてホテルでも行くか」

「そんな必要はない」

子どもが出てきて、「どうした? 喧嘩でもしたの?」

犬のチャーリーも部屋から出てくる。

 

ウィルとテスは、倉庫のような通路を通り、学生時代からの友人クリスティーン(アンドラ・デイ)と俳優であるボールズ(ブラッドリー・クーパー)夫婦の部屋でのホームパーティにやってくる。他にも男性の友人ふたりもいる。

ボールズは部屋へ入ってくるなり、コケて牛乳パックを押しつぶして、床が牛乳だらけになる。

ボールズは、代演でキリストを題材にした舞台へ出ている。クリスティーンはハイ状態だ。

テスは、部屋が妙な匂いがすると思う。二人は部屋を出て駅へ向かう。テスは先ほどの部屋からクッキーを1枚持ってきていて、それを食べるとふたりともハイになってくる。コカインが入っていたようだ。

やって来た電車に二人で乗るが、間違っていたことに気がつき、電車を降りようとするが、ウィルは降りれたが、テスは閉じ込められて、電車は走り去ってゆく。ホームにひとり取り残されたアレックス。そこでタイトルが入る。

 

帰る宛てもなく、「オリーブ・ツリー・カフェ」というバーの前でメニューを見ていると、ドアマンに「席料15ドル」といわれる。「出演すれば席料15ドルはただだ」とも。実はこのバーの地下では、舞台でスタンダップ・コメディを披露しているのだ。

アレックスは、名前を書いて入場した。「アレック・ノヴック」と呼ばれた。「明かりがついたらトークをやって!」と言われ、初めて舞台へと立つ。

「あん……ジョークはあまり知らない。それに……俺の名前はアレックス・ノヴック…両親は怒らない。何を話そう、どうやら俺は離婚する。気づいたきっかけは独りでアパート暮らししてから…」と訥々と自らの話をし出す。

お客からもそれなりの反応もあり、同じく舞台へ出ている芸人たちには好意的に迎えられる。

自分の居場所を見つけたようで、家族には内緒で出演を続ける。

 

妻のテスは、元バレーボールのクラブチームの選手であった。アレックスもテスも浮気などもない。真面目な夫婦であるが、お互いの気持ちにずれが出ていた。小学生の子供が二人いる。

アレックスの母親マリリン(クリスティーン・エバーソール)は、テスと仲が良く、アレックスに対しては批判的だ。夫の外国人であったヤン(『ベルファスト』(21)の名優キアラン・ハインズ)とは仲良くやっている。ヤンは、アレックスを見守っている。

 

つかず離れずの関係で、再び互いへの好意に気づずいたりする夫婦と周りとの関係をスケッチしてゆく。

ブラッドリー・クーパーの友人の実話をもとにしたストーリーだが、久しぶりにアメリカのホームドラマを見た感覚。

「君と不幸になりたい。一緒に不幸になろう」なんてセリフと互いの顔をハンドキャメラで行ったり来たりの撮影もある。

相変わらずローラ・ダーンは、上手い。魅力的だ。なんとなく見ているこちらも幸せになる映画だ。

 

ディズニーからの招待。

4月6日(火)大阪東映試写室

これって生きてる?(4月17日(金)劇場公開)|映画|サーチライト・ピクチャーズ公式