お若くして、認知症を発症したK様のお話です。

K様はお若い頃に幼稚園の先生をされていました。
また、高齢者に対するボランティアをされていたそうです。
そのためなのか、症状が進みほぼ一日中、デイルーム内を歩き周られているのですが、時々体調の悪そうなご利用者様や年齢の高いご利用者様の側に寄り添われます。

現在、コミュニケーションを取るのが難しくなりつつあるK様ですが、サポーターの真理ちゃんが何か出来る事がないかと考えました。
幼稚園の先生をされていた当時から音楽がお好きだったとお聞きしていましたので、寄り添って歌を一緒に歌を歌う事にしました。

はじめはあまり反応が無かったのですが、少し反応をされているご様子。
そこで、K様はとなりのトトロがお好きで、「サンポ」という歌がお好きだということと思い出し、YOUTUBEで検索して聞いて頂くと、前奏で明らかに反応され、ミルミルと笑顔になり、楽しそうにリズムを取られていました。

認知症が進んでコミュニケーションが難しくても出来る事があると感じた事。
認知症があっても心は生きているという事を考えさせられました。
(なべちゃん)

とびっきり伝説利用者様のO様は大の入浴嫌いです。
長い間毎日とびっきりを利用して頂いていますが、お風呂は絶対に入ろうとされません。
家に帰られてからも入浴されている様子はなく、翌朝お迎えに伺っても服装も昨日と同じ、着替えも拒否されます。

O様は陽気でおしゃべり好き、歯に衣着せぬ物言いですが、他の利用者様やサポーターのことを気遣われたりしてくださる優しい利用者様です。
その一方でとても頑固で思い込んだら動かれない側面もお持ちです。
O様がどのような理由で入浴しないのかは定かではありません(理由などないのかもしれません)が、O様の健康面や生活面などを考慮すると入浴はしていただかねばという思いです。

O様がお風呂に入りたいと思ってくださるにはどうすればいいのか?
私達サポーターは試行錯誤しながらO様にアプローチし続けました。
O様が入浴に対していいイメージを持てるようにアプローチすることは、同時にO様の気分や体調のご様子を注意深く慮り、私達がどこまで信頼を得られるのかということに繋がります。
他店のサポーターも一緒になってO様に接し続けました。

そんな中、O様の送迎時、とある銭湯の前を通るとO様は
「ここの銭湯すいてるな。今度行こか~」
と言われました。
それは気まぐれの一言だったかもしれないですが、私達は「是非行きましょう」と大乗り気でO様の気持ちが途切れないように、そしてO様が自然に入浴できる条件を整え、O様が言われた銭湯へご一緒しました。

O様の入浴介助は大変なものでしたが、サポーターもO様のご様子を見ながら慎重に入浴を進めました。

やがて銭湯から帰ってこられたO様が笑顔で皆に
「すっきりした、ええお湯やった」
と楽しそうに話される姿には私達も思わず顔がほころびました。

O様が入浴された経緯に「こうすればこうなる」という安易な法則を見出だすのは難しいのですが、利用者様にとことん寄り添うというとびっきりの姿勢を再確認できた瞬間でした。
(桑ちゃん)
まさに「実直」を絵に描いたようなA様、普段は寡黙な印象の方ですが、カラオケや合唱では、朗々たる歌声をご披露いただいたり、ゲームでは表情豊かに、お茶目な笑顔も見せてくださる男性ご利用者様です。しかし残念ながらA様は今日付けでとびっきりのご利用が終了となりました。
明日からの施設入所が急遽決定したからです。

さて当日、朝の申し送りでは、サポーターに対して、A様ご本人が混乱されないようにとの配慮から、A様に対しては特別なことはせず、「普段どおりのケア」で普段どおり送り出しましょうと申し合わせをしました。
そして今日一日、A様はごく「普段どおり」に笑顔をお見せいただき、ごく「普段どおり」に、すばらしい歌声を聞かせてくださいました。

しかし、そのお過ごし方に接し、「普段どおり」できなかったのは、ほかならぬこの私でした。
しかしご本人様には、わからぬよう、ご家族様に向けての最後のノートを短くこうしめくくらせていただきました。

『A様とは、昨年の9月27日に初めてお出合いしてから今日まで、たくさんの笑顔とすばらしい歌声をお聞かせいただきましたことをたいへん感謝しております。
明日からA様がいらっしゃらないことを思うと、少しさびしく感じますが、なによりA様ご家族の新しい第一歩を、心よりお祈りしております。ありがとうございました。』
(ならちゃん)
8号店のオープンより、ご利用されているT様がおられます。

当初は、落ち着きなく、昼間、夜間、関係なく動き回られ、感情の浮き沈みも激しく、意思疎通も難しい状態でした。
時間が少し経過し、T様自身が環境に慣れてきたこともありますが、サポーター皆が、粘り強く対応し、寄り添う介護に徹した結果、徐々にではありますが状態に改善がみられ、動き回られることも減り非常に穏やかになり、少しではありますが、コミュニケーションもとれるようになってきました。

先日、T様の誕生日でしたので、ささやかではありますがパーティを催しました。
ケーキを用意し、T様の奥様が持ってきて下さったお花を渡し、他のご利用者様と一緒に歌のプレゼントをいたしました。

その席でT様が突然
「幸せです。みなさんのおかげです。ありがとうございます。」
と、お礼をのべられました。

以前のT様では、そのようなことをおっしゃることは想像もできなかったことに、その場にいた全員が、とても幸せな気持ちになりました。
誠意を尽くすことで、想像以上の結果を得られる、とても温まる場面に感動致しました。
(徳ちゃん)



いつも、物静かで、穏やかに過ごされているN様がおられます。
ただ、お食事となると、肉類は、お好きで、よく召し上がられるのですが、魚類は、食べてはいけない訳ではありませんが、基本的に手をつけられませんでした。
健康のことも考慮し、何とか食べてもらえないかと、いろいろ考えてみたものの、その後も召し上がっていただけませんでした。

そんなある日、N様が魚料理のことを
「味気なくておいしくない」
と一言おっしゃりました。
確かに、お食事をお出しするタイミングと数量の兼ね合いで、いつも配膳準備してから提供するまでに少し時間があり、その間に、魚料理の香りや食感が、損なわれているのではないかとサポーターと話しをし、試しに、手間は、いつもよりかかりましたが、お出しする直前に準備し、温かく、柔らかい状態で提供いたしました。

そうすると、今まで見向きもしなかったのに、何と、全て召し上がってくださり、一言
「おいしかった」
とおっしゃって下さいました。

相手を想う気持ちと、少しの手間で、出来ないことはないのだと思い知らされました。
その日の、ブリの照り焼きは、最高においしい思い出の料理になりました。
(徳ちゃん)
10月から7号店に来られたF様は、絵を描くのがお好きな方です。
色とりどりの彩色を施した画をかかれ、F様の世界観が絵と文字であらわされています。

ただ、7号店に来られたて間もないということもあり、なかなか周囲の方々とあまり交流されず、大好きな絵に没頭される日が続き、少し心配でした。
お食事も、普段絵を描いているテーブルで摂ることを希望され、なんとか、他の方々と交流が持てないかと考えていました。

そこで、10月のF様のお誕生日会を開催しました。
この日はF様も、ご自分のお誕生日を意識されていたのか、レクリエーションへのお誘いにも即答で応じてくださり、参加してくださいました。
他の方々も、普段絵を描いているFさまにはいろいろご興味があったのか、お話に花が咲いていました。他の方々は、やはり一生懸命絵を描いていらっしゃるFさまのお邪魔をしてはならないと思い、話しかけるのを控えていらっしゃったのだとか。

このお誕生日会をきっかけに、F様も他の方々と交流をもたれるようになり、また他の方々も気さくなF様の人柄がわかって以前より気兼ねせずお声かけをされるようになりました。
今は、絵だけでなく、美容や風習などいろいろな話題に花を咲かせておられます。
(享ちゃん)
ある女性の利用者様が、お泊まりで来られました。
明治生まれで104歳の方ですが、大変お元気でとびっきりにもすぐ馴染んで頂けました。

しかしお泊まりも続き『家が心配だと』言われはじめたので何とか気分転換して頂こうと近所のふれあい喫茶に歩いて行くことにしました。

秋晴れの日で、着くまでも色んな話ができ喫茶に入ってからも他のお客様と一緒にお話やカラオケを楽しまれ大変喜んで頂けました。

元々テニスをされていた方ですので、今では素振りをされたり、他の利用者様の車椅子を押されたりして更にお元気になられました。

これからも日々笑顔で過ごして頂けるよう頑張りたいと思いました。
( 高ちゃん)
U様が「とびっきり」にご利用になられて1ヶ月半が経ちました。U様は帰宅願望が強く食事もとって頂けず暴力も振るわれ、初めは
「利用が無理なのではないか?」
「U様ご本人やサポーターがケガをしてしまうんじゃないか?」
と思い迷いました。
そんなU様の連絡帳に「とびっきり」でのご様子を包み隠ず書き家族様にお渡ししました。暴力を振るわれた時の状況を聞きお家ではどのような対処をされているのかをお聞きしました。すると「家でもまれにパンチが飛んできます。なだめすかします。」と連絡帳に返事が来ました。

「入浴を拒否されました。」
「お食事を拒否されました。」

一見してネガティヴな「連絡帳」でしたが家族様も一緒になって真剣に対処方法を考えてくださいました。
そしてサポーター全員で家族様のアドバイスを参考にU様が穏やかに過ごせるように実践しました。

険しい表情が少しずつ表情が緩んできたちょうど1ヶ月目、U様に初めて入浴していただきました。

「気持ちよかった、、、」
とぽつり一言。サポーター全員でガッツポーズして喜びました。
その事を「連絡帳」に書かせていただいた翌日家族様から「ありがとうございます」と嬉しいお返事をいただきました。
初入浴から2週間経ちましたがずっと嬉しい言葉のやり取りの「連絡帳」が今も続いています。
(ツッキー)
比較的まだお若いN様のお話です。
N様は認知症があり、現在要介護5ですが、身体にはほぼ障害はない方です。
そのN様は朝お迎えの車に中々乗って下さいません。しばらくは奥様に車に乗って頂き、ご本人が乗られた後、奥様に降りて頂くというようにしていました。しかし、ご本人は覚えておられ、奥様が降りようとすると暴力を振るわれる事がありました。そこで、奥様もとびっきりに来て頂き、途中でお送りすることにしました。そのやり方はもう一つ通われているデイサービスでやっていたやり方の為、ご本人も奥様がいつ帰るかをすごく警戒されて、奥様のそばから、離れようとされません。
隙を見て、奥様をお送りしようと思っていたのです。

そこで、一つ気が付きました。N様は奥様が車から降りてしまう事や、帰る事を覚えているという事は、ひょっとすると、キチンとお話すると納得して下さるかも知れないと思い、説明をしてみる事にしました。
N様に『奥さんは大事な用事があるので帰ります。帰りは私が送って行きますから安心して下さい。』と説明すると『わかったよ。』と納得されました。

次のご利用の時も、乗って下さらなかったのですが、娘さんと仕事に行くという事で話を合わせ、『これから仕事に行きます。仕事だから、奥さんは家で待ってますからね。』と話をするとこれも納得されました。

今はそのお話で落ち着いて通われています。N様は理解力が一時非常に悪い時期があり、そのイメージのまま介助をしていた事に気が付きました。
ご利用者の容態は常に変わっており、その日その日の状態に合わせた介助をしていかなければならないと改めて思いました。
(なべちゃん)
A様は京都の老舗和菓子店に就職され、京都本店と出店先である阪急百貨店とをかけもちで長年にわたり接客勤務をされていらっしゃいました。A様はその和菓子店で、老舗和菓子店らしく、お点前での接待もされるほど、お世話好きな女性ご利用者様です。
 
ところで、A様がとびっきりをご利用になったのはA様が独居生活をされており、近隣に親戚・知人も無いこともあり、毎日の食生活や・服薬管理・入浴が乱れがちになっていることを心配された弟様の依頼によるものです。特に入浴については弟様が「私が知る限り入浴しているとは思えない」とのことで、デイサービス利用の主目的は入浴による清潔の維持でした。
 
しかし、ご利用開始から3週間経った3回目にしてやっと入浴をして頂けたのですが、その後続かず仕舞いの利用日が一ヶ月程続きました。当初は、入浴するかしないは気分的なものと考えていましたが、実はそうではありませんでした。
 
そして、もともとお世話好きのA様のフロアでのご様子からヒントを得ることができました。A様はご自分より20歳程度お年を召された女性ご利用者様B様のお世話をほんとうによくされているのでした。A様は、「なにかをしてもらうこと」よりも「なにかお役に立ちたい」とのモチベーションがとても強い方だと気づいたのです。
 
そこで、サポーターはどのようにすればA様の「なにかお役に立ちたい」とのモチベーションを引き出すことができるかを考えました。
 
つまり、「B様の入浴のお手伝いをしてくださいませんか」というストーリーがそれでした。狙いは的中し、その後入浴に対する拒否はなくなりました。
(ならちゃん)