Amazon | スワロウテイル [Blu-ray] | 映画

 

スワロウテイルを視聴した。哲学を志す同士たちから様々な映画を紹介されるが、この岩井俊二監督作品はアーティストの知人から「全美大生の基盤科目」と副題を添えて推薦された。どのような姿のイデアを有しているか期待が高まった。

 

 

舞台は発展した経済の陰に隠れたスラム街。日本語、中国語、英語の入り交じったクレオール言語を使うことからも、人々の苦労が見てとれる。退廃とした環境下で出会う少女アゲハとグリコ、そしてその仲間たち。この作品を通して私たちは、選択を迫られたときの自分にとっての価値の決め方、本当に貫き通すべきものを知ることができる。また、自身を内省して行動を考え改めたいと思う。

 

 

ネタバレ

 

 

地の底で暮らすアゲハたちは偶然のたまものとして大金を獲得する。それぞれが夢を手にし始めたが欲をかきすぎた。歌手として成功を収めつつあったグリコの恋人、フェイホンは策略によって引き離されてしまう。大金を手にしたが彼は恋人をはじめとして、ライブハウスやバンドメンバーをすべて失ってしまった。

 

だが最終的なフェイホンの選択は我々の指針となるものだった。彼は組織に追われるグリコを救うため危険を顧みず助けに向かう。道中問題に見舞われ警察に捕まってしまうが仲間のことは決して売らない。彼は拷問の末命を落としたが夢を追いかける仲間のことを自分より大切に思い、自らを犠牲にした。この姿勢は並大抵の人間にとれるものではない。

 

 

苦難を乗り越えるアゲハにも学ぶことは多い。愚直な彼女は成長したことをグリコに見せるため、グリコと同じアゲハチョウ「スワロウテイル」のタトゥーを入れる。彼女の成長は外見だけではない。かつての輝かしいライブハウスを再興させるために膨大な資金を集めた。ここまでのことをやってのける彼女の行動力には脱帽である。だが我々が手本とすべき姿は他にもある。結局ライブハウスは買い戻すことはできず、フェイホンさえも失った。彼女はライブハウス元オーナーの反対を全く無視し、手にしていた資金をフェイホンの亡骸とともに豪快に火にくべた。ガラクタを集めて生きるほど困窮を極めて育ったアゲハはお金の力は誰よりも知っているはずだったが彼女にとって必要だったものは仲間たちだった。仲間を取り返せない円なら彼女にとってなんの価値もなかった。

 

 

彼女の行動は周りの人間にも強く影響を与えていた。ライブハウスの不動産屋は買い戻しにきたアゲハの大金をみて彼女を殺そうと企んだが思いとどまった。彼女の一貫して折れない気持ちが不動産屋の心を変えた。

 

失職したライブハウスのオーナーにも変化はあった。大量の円を燃やすアゲハをはじめは嘆きながら制すが、彼女の姿勢をみて、しまいには彼がケースごと円を火に投げ入れた。

 

 

 

近代以降我々の生活は分業がすすみ、それまで独立していた生活には、仲間や知人同士の助け合いが必要になってきた。この時代で一貫して価値を置くべき部分は金銭面ではない。お互いに協力し与え合う仲間の存在である。それなのに我々現代人は一義的な価値観に目がくらみ目先の金に飛びつき友人関係をなおざりにすることや、自分のために他者を犠牲にすることがある。

 

 

本作品はバブル以降の経済至上主義に落ちっている我々現代日本人に、普遍的に価値を有すものはお金ではないことを思い出させてくれた。

 

 

作品をみた人たち、ここまで拙文をお読みいただいた人たちと、感じたイデアを共有したいと思う。ご感想、ご批判等お寄せいただければと思います。

 

 

フリーでモデルもやっております。インスタグラム@toba_desilijic_tiure