ジョン・レノン./『GIMME SOME TRUTH.』

 

 

 

 

2CD Album 『GIMME SOME TRUTH.』  (2020)

 

 

 

またか、という声が聞こえそうなくらい、ジョン・レノンのベスト盤は多くリリースされている。

ポール・マッカートニーのように、勤しんでアルバムを発表していたわけではないし、

40年も前に亡くなっているのだから、音源に限りがあるのは、致し方ないところである。

 

 

今回は、全曲リミックス、という触れ込みだが、

ダンス・ミュージックのリミックスとは違い、大きくイメージが変わる事はあり得ない。

マルチ・トラック・テープに残された音を再検証して、

より良いサウンドにしようという意味のリミックスなのだ。

 

別のコーラスとか、多めに録音されていたギターとか、

そういうものが新たに加わった感じはないようで、新しい驚きは皆無だ。

だから、リミックスというより意味合いとしては、

マルチ・トラック・テープをパーツごとにリフレッシュさせた、

手間をかけたリマスターといったところだろうか。

確かに音的にはクリアになり、楽器ごとの分離もメリハリが付いて、今風だと思う。

だが、この現代的な音に、昔からのファンは違和感を感じずにはいられないだろう。

 

何かモコモコした、モノラルっぽい感じが好きだった人には、

この‶新しくなったジョン・レノン"は厳しい。昨日までのジョンではないからだ。

でも、若い人には、最近の音楽と同等のサウンドで、耳劣りしない音圧なので、

ジョン・レノンの音楽にのめり込むには充分に違いない。

 

しかし、音がいい、というのは、個人的な解釈で、十人十色であるんだよなぁ。

 

僕としては、音が痩せていて貧弱だけど、

何かジョンのヴォーカルに凄みを感じる昔のCDやアナログ盤が好きだ。

‶ジョンの魂"が伝わってくるような音なのだ。

今回の『GIMME SOME TRUTH.』は間違いなく、現代の最高の音質で聴かせてくれる。

でも、何か、大事なものを失ってしまった気がしなくもない、というのが、僕の意見だ。

 

やっぱり、制作に本人が絡んでない!というのが、仕方のない事だが痛いのである。

 

 

 

 

 

ここに収められた楽曲が素晴らしい音楽である事は、

今更、何の説明も必要はないだろう。

選曲もスペシャル・エディションの2 CDなら、

主要曲は殆ど入っているし(大好きな「Mother」が未収録なのが残念!)、

通常盤でも、コンパクトにそれなりに纏まっているのではないだろうか。

 

 

若い人には、是非ともこれをきっかけにジョン・レノンの音楽を聴いて欲しいし、

その窓口には十分過ぎるアイテムではある。

 

 

 

 

最後に...。

 

今回のアルバム・ジャケットはモノクロ写真にゴールド刷りでプチ豪華な作り。

ミニ・ポスターまで付いている。

『DOUBLE FANTASY』以降の曲が多めに収録されているが、

ジャケットを含めたブックレットには、

それ以前の『ロックン・ロール』までの写真が多く使われているのが意味深でもある。

 

何といっても、タイトル文字の‶GIMME SOME TRUTH."と‶JOHN LENNON."で、

語尾の‶.(ピリオド)"が気になってしまう。

このピリオドは、どういう意味なのか?

ジョン・レノンは死んだ、という事なのか?

それとも、ジョンの作品のリリースは、これが最後という事なのだろうか?

 

興味は尽きないし、答えはわからない。

 

 

生誕80年、没後40年をひとつの区切りと考えているのかもしれない、ねぇ、YOKOさん。