最高評価S~最低評価F
【文章力】A
【構成力】A
【キャラクター】A
【設定】A
【総合】A
【あらすじ】
出版大手「薫風社」で、カルチャー誌の編集長を務める速水輝也。笑顔とユーモア、ウィットに富んだ会話で周囲を魅了する男だ。ある夜、上司から廃刊の可能性を匂わされたことを機に組織に翻弄されていく。社内抗争、大物作家の大型連載、企業タイアップ…。飄々とした「笑顔」の裏で、次第に「別の顔」が浮かび上がり―。俳優・大泉洋を小説の主人公に「あてがき」し話題沸騰!2018年本屋大賞ランクイン作。
【感想】
すごく面白かった。なにせ出てくる登場人物が個性がありつつ魅力的で、キャラクターが物語を動かしていくのを感じる。
編集長の速水が無理難題、多くの問題を抱えるようになり、それを必死に乗り越えようと奮闘する様は、読んでいて自然と応援したくなった。
速水が頑張っていくのに、状況はどんどん悪くなって、最後には窮地に立たせられる。いったいどうやってこの物語を閉じるのだろうと考えていたら、全く予想外の方法でクライマックスを迎えた。
この小説の評価はエピローグをどう読むかで決まると思う。
エピローグでそれまでの物語の印象をがらりと一転させる手法はよく使われるが、この小説ではそれが速水の人間性にまで及ぶ。これまで主人公の立場で読者に感情移入させていた速水の内面性がひっくり返るので、それを面白いと思うか、それとも逆に裏切られたと感じるか。
裏切られたと感じたら、まさにタイトル通りなのだが、もしかしたら読後感は悪くなってしまうかもしれない。
けれど総じて質は高く。最後まで楽しんで読めた。エンターテインメント作品としてのクオリティは非常に高い。
また出版業界の情報が沢山詰まっているので、本好きの人はその部分も楽しめるだろう。