貴婦人
出かけようと玄関を出るとカンナもちょうどお袋に連れられ裏口を出るところだった。まるでどこかの貴婦人のように。背筋をぴんと伸ばし日傘さして、颯爽と歩み出る…そんな風に見えた。物静かだがお転婆な彼女は外へ出ると捕まらない。この日も首輪を付けての外出だった。いつもの事さして珍しい光景ではなかった。この春を感じる長閑な光景が、僕が最期に見たカンナの姿だった。
見上げる瞳
昨年10月末のある日の事。僕はいつものように遅い夕食を終え、そそくさと部屋へ戻ろうとした。するとお袋に‘裏口へ行ってみ’と呼び止められた。早く部屋へ戻って休みたいのにと煩わしく思いながらも裏口を覗いてみた。
暗くて、よく見えない。
明かりを燈そうと半歩前へ踏み出そうとしたその時足元の何かに気付き下をみた。子猫と目が合う。「ミャア~」「わっ!びっくりした!」カンナとの出会いである。勿論まだ名前はない。以後彼女には何度もこのパターンで脅かされることなる。目が合う前に鳴いている事教えてくれよ、カンナ。
暗くて、よく見えない。
明かりを燈そうと半歩前へ踏み出そうとしたその時足元の何かに気付き下をみた。子猫と目が合う。「ミャア~」「わっ!びっくりした!」カンナとの出会いである。勿論まだ名前はない。以後彼女には何度もこのパターンで脅かされることなる。目が合う前に鳴いている事教えてくれよ、カンナ。
08.3.16 11:56 カンナの死亡を確認しました…
「え~たった今カンナの死亡を確認しました…」その瞬間僕の心臓は一度だけ熱く強く鼓動した。
兄貴から、貰う初めての電話は愛猫の唐突過ぎる別れ‘死’を告げる留守電でした。
折り返しの電話に出たのは母でした。「なんやった?」拍子抜けするような返答に何かの間違い?兄貴に担がれた?と一瞬期待しましたが、兄貴がそんな事しないのは言うまでもなく、改めて聞き直しました。「カンナが亡くなったって聞いたんだけど…」
僕は愛猫の名を口にしたのはその時が初めてでした。
兄貴から、貰う初めての電話は愛猫の唐突過ぎる別れ‘死’を告げる留守電でした。
折り返しの電話に出たのは母でした。「なんやった?」拍子抜けするような返答に何かの間違い?兄貴に担がれた?と一瞬期待しましたが、兄貴がそんな事しないのは言うまでもなく、改めて聞き直しました。「カンナが亡くなったって聞いたんだけど…」
僕は愛猫の名を口にしたのはその時が初めてでした。
