元気が取り柄のまことです。
みなさん夏バテしてませんか?熱中症とかなってませんか?まことはほんとに丈夫だから色んな人のこと心配しちゃう。余計なお世話だろうけど。
まあそれはさて置き、今回は高校デビュー、しかもまことの場合高2デビューの話です。もしとても暇で時間がある人は読んでみてもいいかもしれない。
まことの中学から、同じ高校へ行った人は1人しかいなかった。しかも男子。まことはそのころ男子とは一切話していなかったのでほぼ1人だ。教室の1番前の席で一人で弁当を食べ、ホームルームが終わった瞬間に教室を出て、東校舎(利用者が少ない)を一段抜かしでダッシュで降り、自転車置き場へ移動し、キチガイみたいに他の生徒が学校から出る前に帰宅していた。
高1のときは、クラスの目立たない暗めの帰宅部のメガネ、だった。家に帰って来る日も来る日もお笑いばかり見ていた。新聞にアンダーラインを引いていた。バイトのお金も全て劇場へ行ったりDVDを買ったりするのに使っていた。
高2になる前、あるバンドとある映画を見た。こういう生き方もあるのか、と思った。すぐさま初心者セットのギターを買い、そして髪を切った。まことは超絶カッコいいギタリストになって学校中の注目の的になってやる。と思っていた。
髪を切って登校した日、なんと珍しく寝坊して遅刻した。着いた頃にはホームルームが始まっていた。静かな教室に新学期の新しい先生の声が聞こえる。後ろのドアを開けた瞬間、全員がこっちを見た。そして、一瞬時が止まった次の瞬間、ドッと爆笑の嵐が巻き起こった。
全員がまことの髪型を見て(顔面も含む)爆笑していた。先生が席を教えてくれて座った。先生が話の続きを始めた。前のヤツはまことがイヤホンをつけていたのを見て、音楽の話をいきなりし始めた。
高2デビューはえげつないスタートを切った。クラスのまことを見る目が少し変わった。半分が面白いから話してみよう、もう半分はキモい、といったかんじだった。
ギターを毎日弾いた。本当はもっと丸っこい形の綺麗なタクシーみたいな緑色のギターが欲しかったけど、まことが出せるお金で買えたのは初心者セットのミントグリーンのストラトキャスターだった。これでも必死で絞り出したほうだ。
その初心者セットには小さいアンプも付いていた。繋いでギターを弾いたら音が鳴った。うわ。エレキギターだ。おおお!エレキだ!学校なんか一瞬で燃やせそうなくらいのいい気分になった。
しばらくすると、形も色もどうでも良くなった。ほんとになんにも分かってなかった。ギターにコードを指してアンプに繋げば音がでる。すごい電化製品だなーとか思ってた。ほかのツマミなんか音が出ればどうでも良かったし、それよりも弾けるコードが増えるのが嬉しかった。音などどうでもよかった。
しばらくして、コピーバンドに誘われてギターを弾いた。チャットモンチーというバンドの楽譜を渡され、読めもしないのになんとかコードは叩き込んだ。高2デビューのまことは、ここで仲間を失うわけにはいかなかった。一応弾けるようになった。控えめに言って死ぬほどつまらなかった。
もっとこう、エレキギターってのは、
『ジャガジャーン!!!!!!!』
みたいな爆発的なものだと思ったからギターを買ったのだ。それなのに、テレレン、みたいなもんばかり弾いてたら、本当につまらなかった。なにがギターソロだ。どんどんチャットモンチーが嫌いになっていった。
嘘だ。エレキギターってのはもっとド派手で心の1番裏っ側から蹴っ飛ばして全部なにもかもひっくり返してくれるはずだ。
ある日、耳コピという言葉を知った。それから、まことはたくさんの知ってる曲を耳コピした。耳コピは難しい。未だにこうだ!と思ったら全然違うこととかよくある。
耳コピした曲を文化祭で披露する日が来た。9月の夏の終わりかけの時期、コンバースにピタピタのスキニーに1番お気に入りの柄シャツを着ていたのを覚えてる。
まことが登場したフロアの第一声は冷やかしの野球部員の『下半身タイツ』という言葉だった。
全まことが一瞬ひるんだ。ただでさえ下の下な顔がひきつり余計にボロボロになり、緊張に体の9割が引っ張られて思うように動けなかった。記憶も無い。ライブが終わった直後、まことは完全にギターに取り憑かれていた。絶対にこれで食えるようになってやると思った。それまで殺されても死ぬもんかと思った。
悔しさを食い物にしてまことは成長してるようなもんだと思う。今も変わらない。今も良く食う。そして食う量は増えてく。
終わったあと、東校舎の一階で、一年生の男の子がひとり、『めちゃくちゃカッコよかったです!』と声をかけてくれた。
バンドをやってたらこんな気持ちの起伏がボコボコあるのか。驚いた。バンドってすごいぞ。やみつきだ。恐ろしい。その子が去った廊下で、学校が蜃気楼につつまれるくらいの闘志に燃えていた。
まことは未だにコンバースハイカットに下半身タイツでバンドを続けている。ギターの事もバンドの事もまだよくわからない。今のところ分かったのは、ロマンの塊だって事、そしてまことの行った高校の野球部員はチノパンとジーパンしか知らないいわゆるチンパンジー、という事だけだった。