以前、伝説の教師ということで紹介した私の憧れの先生のお話。

その先生は、とても容姿端麗で同性でもドキっとするくらいの美人さんです。
肌も透明感があってまるでこの世のものではないのでは?と感じてしまうほどの美人です。
四半世紀も過ぎて、人生の折り返し地点になろうとしている私が今まで生きてきた中で知り合った人、芸能人も含めて…これほどまでに美しいと思った人に出会ったのはありません。

本当に綺麗な女性で、モデルにでも余裕でなれそうな人でした。
ちなみに、ほぼ化粧はしていないすっぴんに近い感じでした。
すっぴんであの先生の美しさに勝てる女性は、おそらく少ないでしょうね。

しかし、異性の同僚たちからは全くモテませんでした。
学生の間でもあまり人気はありませんでした。

なぜなら、全くと言っていいほど笑わない先生だったからです。
学生や先生たちの間で「鉄仮面」というあだ名で呼ばれていました。
本人ももちろんその噂はご存知だったようですが、全くの無表情でニコリともムッとすることもありませんでした。

私は、それがすごく気になって…「この人、絶対きれいな笑い方する人なんだろうな」と感じていたので、絶対笑わせてみせる!と毎日作戦を考えてたった一人のためだけにピエロを演じる日々が続きました。。。

流石に最初の方は、全く笑ってくれませんでした。
でも、毎日…本の返却と貸出をする度にしつこいくらい色々なことをやって…徐々にだけど、口元がニコッとしてくれるようになって…次に本の物語の登場人物を大げさに演じてみたりしているうちに目元がニコッとしてくれるようになって…

ほんの少しづつだったけれど、私にだけ笑顔を見せてくれるようになりました。
それが本当に嬉しかったです。それで、ますます頑張っちゃうって感じでした。

そんな日が2年くらい続いたある日、いつものように図書室に行くと…
私の姿を見つけて、他の生徒が出て行ったのを確認したら、その先生が私のところにやってきて「これは、まだ皆には内緒なんだけれど…先生、プロポーズされたの!結婚するのよ」と。

以前から少しずつプライベートな話をするようになっていたので、先生に彼氏さんがいらっしゃることも知っていたから、プロポーズされたということには、納得できたしあまり驚きもしませんでした。

一番、驚いたのは…
それを告げた時のその先生の笑顔でした!!

私が見たくて見たくてあの手この手とコントめいた事やらパントマイムみたいなことをやっても決してみることのなかったとびっきりの笑顔でした。

思っていた以上に綺麗に笑う方でした。
その笑顔を引き出したのは、残念ながら…私ではなく最愛の方だったようです。
その笑顔を見れた嬉しさと笑顔を引き出せなかった悔しさと…そして、その先生が結婚のために学校を辞める寂しさで、複雑な思いになったことを覚えています。

やっぱり、愛する人からの一言って偉大なんだなということを知った小学2年生でした。

あれから、何十年という月日を重ねてきましたが…
私は、今も形を変えて誰かの笑顔を引き出すためのお仕事をしています。

私が作ったものたちで、たった一人でもいい…クスッと笑ってくれたら幸いです。

※先生が辞めた日は、家に帰ったあと一人ずっと泣いていました。でも、泣いているとバレたくなかったから、洗面器に水をはってそこに顔をつけてワシャワシャしていました。