昨日取り上げた東京エレクトロンは時価総額が7兆8千億円にまで達しており、国内のランキングでは10位につけている。半導体関連企業でそれに匹敵する時価総額に達しているのが信越化学工業であり、現在7兆2千億円となっている。

 

 

信越化学は総合化学大手で、半導体シリコンウエハー世界シェア1位。半導体シリコン事業で全事業の営業利益の約4割を稼ぐ。メモリーなどに使われる主力の300㎜ウエハーでは需給がタイトな状況が続いており、生産能力の増強も進める。200㎜ウエハーも同様に品不足に陥っている。さらに感光材のフォトレジストも手掛けており、その世界シェアは2位。フォトマスクブランクスは世界シェア2位であり、1位のHOYAとあわせると9割を占め、寡占状態となっている。

先月発表された2023年3月期連結業績の予想では、売上高2兆5500億円、営業利益8250億円、純利益5880億円となっており、過去最高の増収増益となっている。

では信越化学はなぜここまで強いのか。半導体シリコンウエハーの側面だと、昨今の半導体不足からサプライヤーがより優位な立場になったのが主な原因となっている。

 

半導体不足によってユーザー、つまりは半導体メーカーやファウンドリーなどの製造側の調達リスクが浮かび上がったのである。それにより、サプライヤーはユーザーとの間で長期契約を結び、さらに値上げも通すことまでできた。一般的には、材料を選ぶ側のユーザーが優位な立場となり、材料メーカーは価格競争や値下げ圧力にさらされるのだが、サプライヤーが限られる状況だとサプライヤーの存在感が一気に高まり、サプライチェーン上の必要不可欠なパートナーとなるのである。製造側としてはいくら量産したい半導体チップがあったとしても、製造に必要な半導体シリコンウエハーがなければ何もできないのである。いわゆるマイケルポーターの5 Forcesにおいて、まさに売り手の交渉力が高い事例なのである。

長期契約を締結することで信越化学は安定した供給先を確保でき、今後さらなる技術開発に専念できることとなる。