金融円滑化法が平成25年3月終了した後の金融機関の方針はどうなるのか?
 
この金融円滑化法の効果については、賛否両論あると思いますが、
これはこれで、一定の効果があったのは間違いありません。
 
金融円滑化法の発動により、この期間における企業倒産は確実に減少しました。
その点においては、一定の効果があったと言って良いと思います。
 
実際に、この法律スタート後に条件変更等に応じた件数は、約290万件にも及びます。
実行率は実に90%を越えています。
 
<参考資料>
http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20120719-2/01.pdf
 
ただし、この間に依頼企業側での根本的な解決が図られていないとすれば、
それは単なる先送りに過ぎず、円滑化法の失効と同時に、
倒産あるいは廃業が激増するという懸念が現実化する可能性を秘めています。
 
法律の失効に伴う倒産等については、様々な予測が出ておりますが、
件数でいえば3~4万社以上、金額で言えば5兆円以上に上るとも言われております。
 
来年3月末には期限を迎えますが、その後の銀行や金融庁の対応について
様々な問い合わせがあるということで、4月以降の金融庁の銀行等に対する
検査・監督の方針について明確に示したいということから、
11月1日金融担当大臣から、「談話」という形式で情報発信されました。
 
「中小企業金融円滑化法の期限到来後の検査・監督の方針等について」
 
 
金融円滑化法終了後、金融庁の方針はどうなるのか、
そして金融機関の方針はどうなるのか、という話です。
以下内容がコメント趣旨概要です。

 ○金融機関の役割
  ・借り手企業の状況をきめ細かく把握して
  ・他の金融機関と連携を図りながら、条件変更や円滑な資金供給に努める
  といった円滑化法の主旨は、期限到来後も変わることはない。
 
 ○検査・監督の対応
  ・金融庁は、これまでと変わることなく金融機関を検査・監督していく
  ・以下の、「条件変更等を行っても不良債権とならないための要件」は
   期限後も永続するものである
 
   ★不良債権に該当しない要件
   「経営改善計画が1年以内に策定できる見込みがある」や
   「5年以内(最長10年以内)に経営再建が達成される経営改善計画がある場合」
 
 ○借り手の課題解決
  ・すべての借りて企業が抱える経営課題に対して、来年3月末までに何らか
   の最終的な解決を求めるということはない
  ・金融機関には、借り手企業の課題解決に対する解決策を提案できるよう
   コンサルティング機能の発揮を促していく
 
 ○「中小企業の経営支援のための政策パッケージ」(本年4月20日公表)の推進等
  ・企業再生支援機構および中小企業再生支援協議会の機能・連携強化
  ・再生支援協議会においては、相談機能の充実に取り組んでいるので
   積極的に利用してほしい
 

この談話により、法律としての金融機関のリスケジュール努力義務はなくなるものの、
金融庁の方針として金融機関に対しリスケジュールは引き続き推進していくこと、
またリスケジュール企業でも債務者区分が良くなるよう引き続き便宜が図られる
ということ、が分かります。
 
しかし、気をつけなければならないのは、すでにリスケジュールを行っている企業です。
 
リスケジュールは6か月や1年で期限が区切られ、その期限ごとに更新していくもの
ですが、次のような企業は、リスケジュール更新交渉時において金融機関は厳しい
対応を行ってくることが予想されます。
 
 ・経営改善計画を作らないでリスケジュールを行い、1年たってもまだ計画
  を金融機関に提出していない企業。
 
 ・経営改善計画を提出しても、その計画通りに経営改善できていない企業。
 
 ・経営改善が進んでいないためリスケジュール更新時に返済を少しずつでも
  再開していけない企業。
 
このような企業は、債務者区分が「その他要注意先」から「要管理先」「破綻懸念先」
に落ちることになります。
そのような企業への融資は不良債権となり、金融機関はいつでも不良債権処理を
行いかねないということになります。
 
そもそもリスケジュールを金融機関に交渉する時、経営改善計画を作ること、
その計画に沿って経営改善を進めること、そして経営改善して計上できた利益で
少しずつでも返済を再開することは、リスケジュールの大前提です。
  
その大前提ができない企業に対し、金融機関は厳しい対応をしてきます。
金融円滑化法が終了する前まではそれでも金融機関にリスケジュールの努力義務が
あったのですが、それが法律上なくなる平成25年4月以降は、そこに気を付ける
必要があります。
 
多少なりとも景気が上向きであるのならば、まだ救われる気持ちになるのですが、
景気のなお一層の低迷が予感される現状では事態は深刻です。
 
金融円滑化法という後ろ楯を失った、既に条件変更を受けている大多数の小規模企業では、
 ・単一事業で零細だから、上記の政策パッケージも利用できない
 ・コスト削減はやり尽くしたが、景気の長期低迷で業況改善の見通しが立たない
といった状況にあります。
 
私たちのコンサル現場では厳しい面も見えるようになりました。
金融円滑化法が施行されたばかりの頃は、金融機関は一律にこだわって対応を
行っていました。
つまり、よその金融機関がするのなら私の所も・・・みたいな感じです。
どこか一行が元金据置を了承すれば、他行も右へ習えで比較的簡単に応じて
くれていました。
 
しかし最近は、他行の事より自行の都合と言う事を主張し、
他行との足並みを揃えたがらない金融機関が増えてきました。
 
「他行が元金据置で了承しても、当行は返済金額を下げるだけしか認められない。」
「他行に合わせなければならないと言う規定はない。」
と強気で言うところが増えてきました。
 
特に、プロパーで融資している金融機関は、
「保証協会付だけしか融資をしていない金融機関と一緒にしないで欲しい。」
と一律据置を拒否する金融機関も出て来ました。
 
話し方、交渉姿勢とも金融機関の優越的立場(貸してやってるんだぞ!)の
濫用とも思えるような強気の態度の金融機関担当者が増えて来ました。
金融円滑化法が始まる前に戻って行っていますよね・・・
 
そのような側面も実際の現場では起きて来ていますので、
やはり来年4月以降の金融機関の出方には、
借り手企業個々の実態に応じて、予測のつかない面もあります。
 
取引金融機関から、回収強化の標的とされることがないように、
業績向上に向けて一歩でも前進、アクションを起こしましょう。
 
交渉が難しい場合はお気軽に私たちにお任せください。