今回は、アウトソーシングの活用にあたり、どのようなメリット、デメリット
があるのか、ご紹介したいと思います。

●アウトソーシングとは
 
 アウトソーシング(outsourcing)とは、「外部委託」という意味で用いられ、
 企業がコストダウンのため、あるいは自社の中心業務に専念できるよう、
 戦略的に専門業者へ外注することをいいます。
 
 専門的なスキルが必要な人材育成や設備投資に手間やコストが掛かる業務を
 アウトソーシング(外部委託)すれば、企業は本業やコア業務に集中しながら
 コストの削減を図ることが可能になります。
 
 また、コスト削減だけではなく、外部リソースの有効活用により、
 業務の流れの効率化や新たな付加価値の追求が可能となり、
 積極的な戦略経営を実現可能とします。
 

●主なアウトソーシングの種類
 
 ・一般的アウトソーシング(処理委託型)
  社内業務の一部を外部へ委託する。
 
 ・部分的アウトソーシング(機能雇用型)
  実務業務のみを全面的に外部へ委託する。
 
 ・包括的アウトソーシング(組織雇用型)
  自社ノウハウのない業務を外部へ委託する。
 
 ちなみに、アウトソーシングは1980年代初頭よりアメリカで用いられるように
 なった手法で、日本でも1990年代頃から採用する企業が増加してきました。
 

●アウトソーシングのメリット、デメリット
 
 >>アウトソーシングのメリット
 
 (1)固定費の変動費化
 
  企業の状況に合わせて、必要なときに、必要なスキルを、必要な分だけ
  提供してもらえるので、固定費を変動費化することができます。
  人件費を変動費化することで、景気状況に対して柔軟な対応ができます。
 
 (2)労務管理費の削減
 
  人材の採用コスト(媒体掲載費用、面接の人的コスト)や教育コスト、
  退職金、福利厚生等の費用が不要となります。
  契約期間内の一時的な費用のみで、社員を増やさずに業務遂行の維持拡大が
  柔軟に対応可能です。
 
 (3)コア業務の強化
 
  一部の業務を他に任せて余分なコストを低減させることにより、
  新規事業や新商品の開発等、基幹業務へ優れた人材や費用を注力することが
  可能になります。
 
 (4)高い専門性の確保
 
  ITや会計、技術開発等の一部の高い専門性が要求される業務に対し、
  比較的容易に高い専門性を確保することが可能です。
 
 (5)業務のスピード化
 
  外部の機能や資源を有効に活用することで、短期間で企業構造を変えていける
  ような柔軟性を持った組織形態を保つことが可能となり、スピードある経営が
  実現可能となります。
 
 (6)その他
 
  ・品質の向上・安定化
  ・業界の標準化された業務を採用できる
  ・成果物の納期も期日どおり納品される
 
  
 >>アウトソーシングのデメリット
 
 (1)業務が見えなくなる(=統制不能になる)
 
  アウトソーシングした業務を任せきりにすると、現在の業務状況が
  わからなくなり、統制もできなくなります。
  そのため、アウトソーシング後は、委託先が行う業務処理に関して、
  進捗管理、品質管理、セキュリティ管理、障害管理といった
  さまざまな管理業務を適切に行うことが重要です。
 
 (2)社内ノウハウが蓄積されない
 
  アウトソーシングした業務を任せきりにすると、
  技術やノウハウが社内に蓄積されなくなってしまいます。
  そのため、ノウハウが必要な場合は自社の社員を業務に参加させるなどして、
  ノウハウを吸収させる必要があります。
 
 (3)情報漏洩・自社ノウハウの流出のリスクがある
 
  アウトソース先の内部統制がしっかりしていない場合、外部に社内の重要な
  情報や自社ノウハウが流出してしまうリスクがあります。そのため、
  事前にアウトソース先の企業調査やセキュリティチェック、契約内容などを
  十分注意する必要があります。
 
 (4)余剰社員の発生
 
  自社で対応していた業務を新たにアウトソーシングする場合、
  当然その業務を担当していた社員の業務が無くなってしまいます。
  アウトソーシングの対象となる機能の社員は他部門に異動もしくは
  削減リストラの対象となるので、社員のモチベーションやモラルが
  低下してしまう可能性があります。
  アウトソーシングを導入する際は、なるべく早い段階で従業員全員に告知し、
  アウトソーシングへの理解と意識改革に努める必要があります。
  さらに労働法上、一度雇用した社員を解雇することは難しいので、
  余剰人員の処遇にも配慮が必要です。
 
 (5)情報の伝達の煩雑さ
 
  アウトソーシングでは、必要な情報の伝達が重要になりますので、
  それら橋渡しする業務が必要となり、かえって負荷が増大するケースがあります。
  例えば今まで口頭で伝えていたような小規模企業では、決められたフォーマット
  での伝達になり、用紙に書き込むこと自体を煩わしく感じることもあるようです。
  さらに業者によってはマニュアルや作業スケジュールが画一化されており、
  急な変更や修正に対応できないところもあります。
  自社処理に比べて制約の多いやり方に窮屈さがあるようです。
 
 (6)その他
 
  ・逆にコスト増大
  ・責任の所在
  ・品質の低下

 アウトソーシングにはコスト削減という大きなメリットがある一方で、
 無視できないデメリットも多く存在します。
 うまく活用できないと、逆に効率が悪くなってしまう事にもなりかねません。
 
 アウトソーシングを有効活用するためには、
 自社の強みと人材、リソースを見極め、進むべき方向の中で、
 自社が抱える問題点そして、自社に必要な機能は何か?
 どの業務をアウトソーシングするのが有効か?を、見極めることが最も重要です。
 
 アウトソーシングを活用するか、しないかは別としても、
 まずは自社の業務効率化について一度見直してみてはいかがでしょうか?