今回は、「貸借対照表」の見かたについて、ご説明いたします。
お手元に決算書や試算表の貸借対照表をご準備いただきまして、
ご確認いただけたらと思います。
お手元に決算書や試算表の貸借対照表をご準備いただきまして、
ご確認いただけたらと思います。
なぜ「資産=負債+資本」が成り立つのか?
「資産=負債+資本」が成り立っているのは理解できるけど、
それでどう「企業の財政状態」を確認できるのか?
と思う人にも、わかっていただけるように説明したいと思います。
「資産=負債+資本」が成り立っているのは理解できるけど、
それでどう「企業の財政状態」を確認できるのか?
と思う人にも、わかっていただけるように説明したいと思います。
■貸借対照表(Balance Sheet・B/S)とは
貸借対照表とは、企業の一定時点(決算日)における資産・負債・純資産の
総括表であり、「企業の財政状態」を表したものです。
貸借対照表の右側、『負債・純資産の部』は、事業活動を行うために、
どうやって資金を調達したかを表しています。
どうやって資金を調達したかを表しています。
そして左側の『資産の部』は、調達した資金をどう使ったを表しています。
もっと簡単に言いますと、会社の資産と負債がそれぞれどれくらいあるのかを、
表しているものになります。
表しているものになります。
■なぜ「資産=負債+資本」が成り立つのか?
これは、会社を立ち上げたときから考えるとわかりやすいと思います。
会社を経営するには、もちろんお金が必要です。
例えば株式会社の場合、まず資本金を用意しますね。
例えば株式会社の場合、まず資本金を用意しますね。
(仕訳)
現金 1,000,000 - 資本金 1,000,000
現金 1,000,000 - 資本金 1,000,000
例えばこれだけの仕訳で、貸借対照表を作成してみますと、
●貸借対照表
(資産の部) (負債・資本の部)
現金 1,000,000 │ 資本金 1,000,000
(資産の部) (負債・資本の部)
現金 1,000,000 │ 資本金 1,000,000
となり、
「資産(100万円)=負債+資本(100万円)」が成り立っていますね。
「資産(100万円)=負債+資本(100万円)」が成り立っていますね。
ここで、会社を設立するためにかかった登記代などを、仕訳してみますね。
創立費あるいは設立費という資産の勘定科目になります。
(仕訳)
創立費 200,000 - 現金 200,000
創立費 200,000 - 現金 200,000
●貸借対照表
(資産の部) (負債・資本の部)
現金 800,000 │ 資本金 1,000,000
創立費 200,000 │
(資産の部) (負債・資本の部)
現金 800,000 │ 資本金 1,000,000
創立費 200,000 │
調達した資金のうち、20万円を創立費に使いました。
「資産(100万円)=負債+資本(100万円)」が成り立っていますね。
「資産(100万円)=負債+資本(100万円)」が成り立っていますね。
例えばここで、社長から50万円借入れ、営業車を購入したとしますね。
営業車は、資産の勘定科目になります。
借入は、負債の勘定科目になります。
(仕訳)
車両運搬具 500,000 - 借入金 500,000
車両運搬具 500,000 - 借入金 500,000
●貸借対照表
(資産の部) (負債・資本の部)
現金 800,000 │ 借入金 500,000
車両運搬具 500,000 │ 資本金 1,000,000
創立費 200,000 │
(資産の部) (負債・資本の部)
現金 800,000 │ 借入金 500,000
車両運搬具 500,000 │ 資本金 1,000,000
創立費 200,000 │
「資産(150万円)=負債+資本(150万円)」が成り立っていますね。
このように、最初にも書きましたが、
事業活動を行うために、どうやって資金を調達したかを
「負債・純資産の部」で表しており、
その調達した資金をどう使ったかを「資産の部」で表していますので、
『負債・純資産の部』の総額と『資産の部』の総額は、必ず一致しますし、
「資産=負債+資本」の関係が成り立つということになります。
「負債・純資産の部」で表しており、
その調達した資金をどう使ったかを「資産の部」で表していますので、
『負債・純資産の部』の総額と『資産の部』の総額は、必ず一致しますし、
「資産=負債+資本」の関係が成り立つということになります。
■貸借対照表を構成する項目
主なものを説明します。
●資産の部
「資産の部」は、会社が資金を何に使っているかを表しています。
別の言い方で・・
会社が保有するすべての資産が記載されています。
会社が保有するすべての資産が記載されています。
さらに別の言い方で・・
お金や資産がどれだけあり、また将来、現金として入金されそうなモノ
がどれだけあるのかが記載されています。
お金や資産がどれだけあり、また将来、現金として入金されそうなモノ
がどれだけあるのかが記載されています。
資産項目は、「流動資産」「固定資産」「繰延資産」に分かれます。
単純に流動資産が多ければ資金が豊富とはいえず、中には不良債権化している
売掛金や不良在庫となっている商品などもありますので、流動資産といえども
その内容をチェックしなければ企業の実体は見えません。
売掛金や不良在庫となっている商品などもありますので、流動資産といえども
その内容をチェックしなければ企業の実体は見えません。
1.流動資産
1年以内に現金化できる資産。
・当座資産(現金預金、受取手形、売掛金、有価証券)
・棚卸資産(製品、仕掛品、原材料)
1年以内に現金化できる資産。
・当座資産(現金預金、受取手形、売掛金、有価証券)
・棚卸資産(製品、仕掛品、原材料)
2.固定資産
1年以上長く会社に留まる資産。大きく分けて次の3つになります。
・有形固定資産(建物、機械装置、車両運搬具、備品、土地など)
・無形固定資産(のれん、借地権、特許権、ソフトウェアなど)
・投資その他の資産(流動資産にならない投資有価証券、長期貸付金など)
1年以上長く会社に留まる資産。大きく分けて次の3つになります。
・有形固定資産(建物、機械装置、車両運搬具、備品、土地など)
・無形固定資産(のれん、借地権、特許権、ソフトウェアなど)
・投資その他の資産(流動資産にならない投資有価証券、長期貸付金など)
3.繰延資産
繰延資産とは流動資産にも固定資産にもならない資産で、
それ本来は損益計算上は費用として処理されるもの。
しかし、費用としての支出の効果が長期に渡って期待できるので、
支出時に一気に費用化せずに貸借対照表上は資産として扱っています。
(創立費、開業費、株式交付費、社債発行費等、開発費など)
繰延資産とは流動資産にも固定資産にもならない資産で、
それ本来は損益計算上は費用として処理されるもの。
しかし、費用としての支出の効果が長期に渡って期待できるので、
支出時に一気に費用化せずに貸借対照表上は資産として扱っています。
(創立費、開業費、株式交付費、社債発行費等、開発費など)
●負債の部
言葉の通り、会社の負債を表しています。
負債項目には、「流動負債」と「固定負債」があります。
両方とも他人資本であり、いずれ返済しなくてはなりません。
両方とも他人資本であり、いずれ返済しなくてはなりません。
4.流動負債
決算日から1年以内に返済期限の到来する負債。
・支払手形、買掛金、短期借入金、未払費用など
決算日から1年以内に返済期限の到来する負債。
・支払手形、買掛金、短期借入金、未払費用など
5.固定負債
決算日から1年以後に返済期限の到来する負債。
・長期借入金、社債、退職給付引当金など
決算日から1年以後に返済期限の到来する負債。
・長期借入金、社債、退職給付引当金など
●純資産の部
純資産は自己資本と呼ばれる返済不要の資金のことです。
お金をどれだけ出資者(株主)から預かっており、
そのお金でビジネス活動を通じてどれだけ儲かったかを表しています。
そのお金でビジネス活動を通じてどれだけ儲かったかを表しています。
6.株主資本
・資本金(株主から払込みを受けた資本)
・資本剰余金(調達した資金などのうち、会社法により準備金として
積立が強制されている留保分と、それ以外の留保分)
・利益剰余金(事業活動で得た利益のうち、会社法により準備金として
積立が強制されている留保分と、それ以外の留保分)
⇒蓄積された利益
・資本金(株主から払込みを受けた資本)
・資本剰余金(調達した資金などのうち、会社法により準備金として
積立が強制されている留保分と、それ以外の留保分)
・利益剰余金(事業活動で得た利益のうち、会社法により準備金として
積立が強制されている留保分と、それ以外の留保分)
⇒蓄積された利益
■貸借対照表から「企業の財政状態」を見る
貸借対照表には、決算日における会社の財政状態が示されていて、
そこに記載されている数値からさまざまなことを読み取ることができます。
そこに記載されている数値からさまざまなことを読み取ることができます。
「資産=負債+資本」が成り立っているのは理解できるけど、
それでどう「企業の財政状態」を確認できるのか?
と思う人は、こちらを読んでみてくださいね。
それでどう「企業の財政状態」を確認できるのか?
と思う人は、こちらを読んでみてくださいね。
こちらでは、計算機を使用して比率を出し、財政状態をチェックすのではなく、
大きい、小さい、プラス、マイナスなど、ぱっと見てわかるような方法で、
財政状態を見てみます。
大きい、小さい、プラス、マイナスなど、ぱっと見てわかるような方法で、
財政状態を見てみます。
チェックポイント1:負債と資産の比較
「資産>負債」
会社は資金があればあるほど事業を積極的に展開することができ
新たな利益を獲得することができます。「資産の部」が大きくて
「負債の部」が小さければそれだけ会社は資金が潤沢で健康な状態といえます。
会社は資金があればあるほど事業を積極的に展開することができ
新たな利益を獲得することができます。「資産の部」が大きくて
「負債の部」が小さければそれだけ会社は資金が潤沢で健康な状態といえます。
「資産<負債」
逆に「負債の部」が大きければ会社は資金が不足気味で不健康な状態です。
このように負債が資産を上回った状態を「債務超過」といいます。
債務超過の状態に陥ると、手持ちの債権や不動産などの資産をすべて売却
したとしても、借金などの負債を解消することができない、経営危機の状態です。
逆に「負債の部」が大きければ会社は資金が不足気味で不健康な状態です。
このように負債が資産を上回った状態を「債務超過」といいます。
債務超過の状態に陥ると、手持ちの債権や不動産などの資産をすべて売却
したとしても、借金などの負債を解消することができない、経営危機の状態です。
チェックポイント2:利益余剰金
「利益余剰金がプラスの状態」
資本に含まれる利益剰余金は過去の利益(当期純利益)の蓄積なので、
利益剰余金が大幅にプラスということは、今までそれだけ多くの利益を
出してきたということです。健康な状態といえます。
資本に含まれる利益剰余金は過去の利益(当期純利益)の蓄積なので、
利益剰余金が大幅にプラスということは、今までそれだけ多くの利益を
出してきたということです。健康な状態といえます。
「利益余剰金がマイナスの状態」
逆に大幅にマイナスということは、今までそれだけ
多くの損失を出してきたということです。
逆に大幅にマイナスということは、今までそれだけ
多くの損失を出してきたということです。
利益剰余金は経営安定性を判断するうえでの重要なポイントです。
チェックポイント3:流動資産と流動負債の比較
「流動資産>流動負債」
近い将来(原則として1年以内)、「現金として入ってくる流動資産」が
「現金として出ていく流動負債」より大きいなら、問題が少ないと言えます。
近い将来(原則として1年以内)、「現金として入ってくる流動資産」が
「現金として出ていく流動負債」より大きいなら、問題が少ないと言えます。
「流動資産<流動負債」
逆に、流動負債が大きいようなら、支払いに固定負債や自己資本が
使われることになり、資金ショートのリスクも高いということになります。
逆に、流動負債が大きいようなら、支払いに固定負債や自己資本が
使われることになり、資金ショートのリスクも高いということになります。
チェックポイント4:自己資本と総資本の比較(自己資本比率)
自己資本は、株主から集めた資本金や、企業の営業活動により獲得した
利益(剰余金)などで構成されており、返済する必要がありません。
調達資金全体(=総資本(=負債・資産の部合計))に対して、
自己資本の割合が高いということは、借金が少ないということになるので、
長期的に見て、財務面での安全性は高いと言えます。
利益(剰余金)などで構成されており、返済する必要がありません。
調達資金全体(=総資本(=負債・資産の部合計))に対して、
自己資本の割合が高いということは、借金が少ないということになるので、
長期的に見て、財務面での安全性は高いと言えます。
これを自己資本比率といい、こちらの式で求めれます。
自己資本比率(%)=自己資本÷総資本(負債・資産の部合計)×100
自己資本比率(%)=自己資本÷総資本(負債・資産の部合計)×100
■貸借対照表を見るにあたっての注意点
1.売掛金、受取手形、商品の金額や中身の確認
・回収不能の売掛金がないか
・売れ残り(売れない)商品がないか
・売れ残り(売れない)商品がないか
2.仮払金、貸付金、立替金等の中身を確認
・回収不能のものはないか
3.有価証券(株式)や所有不動産に含み損がないか
など、項目をチェックし、
異常があった場合、その科目は価値がないものとみなし、
貸借対照表の株主資本の部から、損失として控除した状態で、
貸借対照表を見るようにします。
異常があった場合、その科目は価値がないものとみなし、
貸借対照表の株主資本の部から、損失として控除した状態で、
貸借対照表を見るようにします。
■貸借対照表と経営指標
貸借対照表の各科目の数値を、それぞれの式に当てはめて比率を出し、
財務状況を判断します。こちらも主なものを紹介します。
財務状況を判断します。こちらも主なものを紹介します。
・流動比率=流動資産÷流動負債×100
→ 企業の短期支払能力(200%以上が妥当)
→ 企業の短期支払能力(200%以上が妥当)
・当座比率=当座資産(※1)÷流動負債×100
→ 即座支払能力(100%以上が妥当)
→ 即座支払能力(100%以上が妥当)
・固定比率=固定資産÷自己資本×100
→ 自己資本に対する固定資産の比率(120%未満が妥当)
→ 自己資本に対する固定資産の比率(120%未満が妥当)
・負債比率=負債÷自己資本×100
→ 自己資本に対する負債の割合(100%未満が妥当)
→ 自己資本に対する負債の割合(100%未満が妥当)
・自己資本利益率=純利益÷自己資本×100
→ この比率が高い程、収益力が大
→ この比率が高い程、収益力が大
・自己資本比率=自己資本÷総資本×100
→ 比率が高い程負債が少なく健全(30%以上が妥当)
※1:当座資産=「現金・預金」「受取手形」「売掛金」「有価証券」を足したもの。
→ 比率が高い程負債が少なく健全(30%以上が妥当)
※1:当座資産=「現金・預金」「受取手形」「売掛金」「有価証券」を足したもの。
こちらの説明は改めてしたいと思います。
貸借対照表の見かたは以上です。
今回の説明で、貸借対照表の見方がわからなかった方が、
少しでもご自身の企業の財政状態がわかるようになっていると嬉しいです。
次回は、損益計算書の見かたをご説明したいと思います。