「減価償却とは」の続きです。
 
■「旧定額法」「旧定率法」による減価償却方法
 
 ●旧定額法 
 
  旧定額法 = (取得原価-残存価格)× 旧定額法償却率
  (残存価格は取得原価の10%が一般的)
 
  取得価格100万円の設備の耐用年数が5年で残存価格が10%だとすると、
  毎年の減価償却費は次のようになります。
 
  減価償却費(1~5年目)=(100万-10万円)×0.2 = 18万円
  減価償却費(6年目)= 期首帳簿価額-取得価額の5% = 10万円-5万円 = 5万円
  減価償却費(7~10年目)= 取得価額の5%÷5年 = 1万円
  減価償却費(11年目)= 取得価額の5%÷5年-1円 = 9,999円
  
 ●旧定率法 
 
  旧定率法 = (取得原価-減価償却費の累計)× 旧定率法償却率
  (償却率は、耐用年数経過後に残存価格が10%になるように設定するのが一般的)
 
  上と同じように、取得価格100万円の設備の毎年の減価償却費は次のようになります。
  (耐用年数が5年で残存価格が10%になるように償却率は0.369に設定)
 
  減価償却費(1年目)=(100万円-0)×0.369 = 369,000円
  減価償却費(2年目)=(100万円-369,000)×0.369 = 232,839円
  減価償却費(3年目)=(100万円-601,839)×0.369 = 146,922円
  減価償却費(4年目)=(100万円-748,761)×0.369 = 92,708円
  減価償却費(5年目)=(100万円-841,469)×0.369 = 58,498円
  減価償却費(6年目)=(100万円-899,967)×0.369 = 36,913円
  減価償却費(7年目)= 期首帳簿価額-取得価額の5% = 63,120円-5万円 = 13,120円
  減価償却費(8~11年目)= 取得価額の5%÷5年 = 10,000円
  減価償却費(12年目)= 取得価額の5%÷5年-1円 = 9,999円

 「減価償却とは」にも書きましたが、
 以前は、取得価額の95%を減価償却し、残りの5%は 「残存価額」として
 残しておきましたが、現在は、取得価額の95%相当額まで償却し、
 残り、取得価額の5%分を、5年間で均等償却します。
 最後1円を残すのは、備忘価格ですね。(平成20年分から適用)
 

■「定額法」「定率法」による減価償却方法
 
 ●定額法 
 
  定額法 = 取得原価 × 定額法償却率
  (残存価格は取得原価の10%が一般的)
 
  取得価格100万円の設備の耐用年数が5年の場合、
  残存価額が廃止されたので、最後の年は1円を引いた値となります。
 
  減価償却費(1~4年目)= 100万×0.2 = 20万円
  減価償却費(5年目)= 100万×0.2-1 = 199,999円
 
 ●定率法 
 
  定率法 = (取得原価-減価償却費の累計)× 償却率
  取得価格100万円の設備の毎年の減価償却費は次のようになります。
 
  償却率 0.500 
  改定償却率 1.000 
  保証率 0.06249
  償却保証額 62,490円(=1,000,000×0.06249)
 
  減価償却費(1年目)=(100-0)× 0.500 = 50万円
  減価償却費(2年目)=(100-50)× 0.500 = 25万円
  減価償却費(3年目)=(100-75)× 0.500 = 12.5万円
  減価償却費(4年目)=(100-87.5)× 0.500 = 6.25万円
  減価償却費(5年目)=(100-93.75)× 1(改定償却率)-1(備忘価格)= 62,499円
  【計算上の注意点】
   (1) 調整前償却額の計算
    (1,000,000-前年までの償却費の合計額)×0.500=31,250円
   (2) 調整前償却額31,250円が償却保証額62,490円に満たないので、
     改定取得価額(注)に改定償却率を乗じて償却費の額を計算します。
   (注) 改定取得価額は(1,000,000-前年までの償却費の合計額)です。
 

■「新たな定率法」
 
 計算方法ではなく、定率法の償却率が変わっているだけです。
 ※定額法は変更ありませんので省略します。
 
 ●定率法 
 
  定率法 = (取得原価-減価償却費の累計)× 償却率
  上と同じように、取得価格100万円の設備の毎年の減価償却費は次のようになります。
  ※これまでと税率が変わっています。
 
  償却率 0.400 
  改定償却率 0.500 
  保証率 0.10800
  償却保証額 108,000円(=1,000,000×0.10800)
 
  減価償却費(1年目)=(100-0)× 0.400 = 40万円
  減価償却費(2年目)=(100-40)× 0.400 = 24万円
  減価償却費(3年目)=(100-64)× 0.400 = 14.4万円
  減価償却費(4年目)=(100-78.4)× 0.500(改定償却率)= 10.8万円
   【計算上の注意点】
    (1) 調整前償却額の計算
     (1,000,000-前年までの償却費の合計額)×0.400=86,400円
    (2) 調整前償却額86,400円が償却保証額108,000円に満たないので、
      改定取得価額(注)に改定償却率を乗じて償却費の額を計算します。
    (注) 改定取得価額は(1,000,000-前年までの償却費の合計額)です。
  減価償却費(5年目)=(100-89.2)× 0.500(改定償却率)-1(備忘価格)= 107,999円

 ▼「平成23年12月改正減価償却制度の改正に関するQ&A」(国税庁)
 http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2011/pdf/1112kaisei_faq.pdf
 
 
 ●減価償却費計算ソフト
 
 インターネットで「減価償却費計算ソフト」というキーワードで検索すれば、
 無料で使えるソフトやEXCELファイルなどいろいろ出てきます。
 そういうのを活用されると面倒な計算もあっという間、便利ですよ。
 

■減価償却資産の対象
 
 取得価額により、減価償却の処理方法が異なります。

 (1)取得価額20万円以上(減価償却資産)
   減価償却資産に計上し、通常の減価償却を行います。
 
 (2)取得価額が10万円以上20万円未満(一括償却資産)
  1.資産計上
   減価償却資産に計上し、通常の減価償却を行います。
  2.一括償却資産
   一括償却資産に計上し、3年間で均等額を損金算入します。
 
 (3)取得価額が10万円未満(少額減価償却資産)
  1.資産計上
   減価償却資産に計上し、通常の減価償却を行います。
  2.一括償却資産
   一括償却資産に計上し、3年間で均等額を損金算入します。
  3.少額減価償却資産
   少額減価償却資産は、即時償却(購入期に全額損金算入)できます。
 
 ※一括償却資産・少額減価償却資産としては、資産ごとにどの方法を選択するか判断し、
   一括選択ではありませんので注意してください。
   なお、減価償却資産として計上した場合には、償却資産税の対象となります。
 
 ※特例として、中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を
   平成15年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合には、
   一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。
   (=即時償却(購入期に全額損金算入)=一括で費用計上)
   こちらは、償却資産税の対象となります。
 
 
今回の説明は以上です。
わかりやすくしようとして、いろいろ説明を書きすぎて、
逆にわかりにくくなってしまったかもしれません。
しかし、まだまだ説明できていない部分もあり、後日説明しますね。
 
また、今回の減価償却の処理は、途中改正などもあり、難しい面もあり、
私が勘違いして認識しているところもあると思います。
もし、間違いがありましたら、ご指摘いただけたらと思います。