金融円滑化法は平成21年の12月から、平成23年3月末までの時限立法として成立しました。
 それが今では一年延長され平成24年の3月末までとなっています。
 
 この法案が施行されてからは、リスケに対する銀行の対応が180度変わりました。
 一言で言えば、非常に簡単にリスケに応じてくれるようになりました。
 
 現在、中小企業金融円滑化法が施行されていますので、
 条件変更の承諾率は、約97%だといわれています。
 
 相談すれば、ほぼ何かしらの条件変更には応じてくれるということです。
 なぜ銀行はリスケに応じてくれるのでしょうか?
 
 それは、銀行はこの法律のお陰で、リスケしても顧客の格付を下げなくても良くなったからです。
 顧客の格付を下げれば、その顧客に融資した残高に応じて、
 銀行は貸倒引当金を積み増す必要が出てきます。
 そうなると銀行の収益は落ち、自己資本率も悪化してしまいます。
 
 勿論、それだけではなく金融庁に対して法律を守っているか、
 つまり何件のリスケに応じたかも報告しなければならないからです。
 
 ただ、これが永遠に続くわけではないのです。
 平成24年の3月末に時限立法である金融円滑化法が終了したらどうなるでしょうか?
 
 このまま甘い対応が続くとは到底思えません。
 だからといって、4月1日から態度が唐突に急変するとも思えません。
 
 ただ、最近、金融筋からは、「金融庁の検査姿勢が変わった!」
 という話がたくさん入ってくるようになりました。
 
 最近の金融庁の検査は、リスケに厳しくなって来たような動きをして来ているようです。
 
 リスケをしても助からないような企業の格付を下げないと言う事になれば、
 何れ破綻先が増え、不良債権化すれば銀行の収益を圧迫し、
 金融危機を招きかねないからです。
 
 また、多くの企業が1年間のリスケ後から通常返済に戻る事が出来ず、
 延長の申込みが続出している事が、不良債権の先送りになっているのでは
 ないか?との心配に結び付いているからです。
 
 また、こんな記事情報もあります。
 
 「利息分の支払いも困難な企業には、無理に2回目の変更申請に応じなくてもいい…。」
 http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-08-19_22263/
 
 この記事にはこう書いてあります。
 
 ある銀行担当者は、金融庁からこう指摘され、当局の検査姿勢の変化を感じたという。
 
 金融専門家は「急激な景気悪化を乗り切るための緊急措置として講じられた
 支援策も、経営が厳しい企業を延命させた結果不良債権が膨らみ、
 バブル期の二の舞いになれば本末転倒だ。
 リスク管理債権を厳しく見直す方向にかじを切り始めたのではないか」と指摘。
 
 「銀行は円滑化法の期限切れに向け、早期に取引企業の業績見通しを判断する必要がある」
 と話した。
 
 まあ、当然といえば当然の事ですが、
 「利息を払ってくれればお客さんではあるが、その利息まで払えないとなれば、
 もうそれはお客さんではない」
 という考え方もあながち間違いではないと思います。
 
 今後はリスケを安易に申込めば、どのようなケースでも応じると言う事は減ってくると思います。
 特に、経営改善計画を後回しにして、先にリスケに応じると言う事は減ってくるのではないでしょうか?
 
 やはり、経営改善計画をしっかり立てて、実現性があると判断されないと
 難しくなるのではないかと思います。
 また、既にリスケ中の方は、経営改善計画の達成度によって、
 リスケの延長が認められないケースも出て来るでしょう。
 
 ですから、形だけの経営改善計画を提出して、
 何の努力もしていない、結果を出していない企業には厳しくなるという事です。
 
 来年の3月に向けては一層、厳しい対応になっていくとも考えられるのですが、
 だからと言って、全く、条件変更に応じなくなるとは思いません。
 
 金融円滑化法によって、再生計画なしに、安易にリスケをする会社が増加したとの意見があるように、
 やはり、こちらの方が正常ではないかと思うのです。
 
 ですから、企業側は条件変更してる間に、本当の意味での事業再生を
 成功させる必要があります。
 
 本業を回復させるのか?
 新事業展開をするのか?
 
 など、様々な方向性があると思いますが、売上・利益をしっかりと回復させることが重要です。
 
 それこそ、その後は金融機関に対して、その企業の交渉力だと思います。
 しっかりとした再生計画案を持って、何度も説得して
 リスケに応じてもらうことは今後においても可能だと思います。
 
 だからこそ、しっかりとした事業再生・リスケのイロハについて、
 経営者は知って欲しいと思います。
 解らなければ悩まずに、われわれ専門家に聞くべきだと思います。
 
 私も10月に九州のクライアントで、4度目のリスケを大手地銀及び
 日本政策金融公庫と交渉してまいります。
 この交渉で金融機関がどのような対応を取るのか見極めたいと思います。
 
 しかし、もっと重要な問題は、来年の3月に切れる法案が延長されるか
 どうかです。どうせ次も延長されると言う甘い考えで経営しても、良い事は何も起こりません。
 
 延長されないとすれば、金融機関の態度もいずれは元に戻り、かなり厳しくなるでしょう。
 
 今、リスケされている企業は、法案が延長されないと思って、
 全力で経営改善に取り組まれた方が良いでしよう。