●消費税事業者免税点制度の見直し
 
 将来の消費税増税のための、消費税に関する課税の適正化として、
 事業者免税点制度の見直しという影響の大きい改正が行われました。
 
 これまでは、基準期間(個人の場合は前々年、法人の場合は原則前々事業年度)
 での課税売上高が1,000万円以下の場合および、個人事業者の事業開始後原則2年間、
 資本金1,000万円未満の新設法人の設立後原則2事業年度は、消費税が免税されて
 いました。
 
 しかし、平成23年度税制改正法(平成23年6月30日公布・施行)により、
 免税業者となるためには、従前の条件である2年前の課税売上高が1千万円未満で
 あることに加え、直前の事業年度等の上半期(特定期間)の課税売上高も
 1千万円未満であることが条件として加えられました。
 言い換えれば、直前の事業年度等の上半期(特定期間)の課税売上高が
 1千万円を超えた場合は、自動的に消費税課税業者となります。
 
 この改正は、平成25年1月1日以降開始する事業年度より適用されます。
 ※以下のようになります。
 
・個人事業者
 24年1~6月の課税売上高又は給与等支払総額が1,000万円超になる場合
 25年分から課税事業者となります。
 
・3月決算法人
 24年4~9月の課税売上高又は給与等支払総額が1,000万円超になる場合
 25年度から課税事業者となります。
 
・9月決算法人
 24年10~25年3月の課税売上高又は給与等支払総額が1,000万円超になる場合
 25年度から課税事業者となります。
 
 個人事業者や新設法人の場合に、大きな影響が出そうです。

●消費税「仕入税額控除95%ルール」の見直し
 
 平成23年度税制改正法(平成23年6月30日公布・施行)により、仕入税額控除制度が
 一部改正されました。
 
 現行法では、課税売上割合が、
  95%以上→課税仕入れに係る消費税額を全額控除
  95%未満→個別対応方式or一括比例配分方式
 となっていましたが、
 
 平成24年4月1日以後開始する事業年度より課税売上高が5億円を超える事業者は、
  100%以外→個別対応方式or一括比例配分方式
  ※課税売上割合が100%でなければ個別対応方式か一括比例配分方式で
   仕入控除税額を計算しなければならないということになります。
 
 例えば、課税売上割合が95%、非課税売上割合が5%の場合、支払った消費税のうち
 5%分は控除できなくなり(一括比例配分方式の場合)、消費税の納税額が増えます。
 
 仕入税額控除の方法は、個別に税額控除を計算する方法(個別法)と一括して比例配分
 する方法(一括比例配分法)があり、有利な方を選択できます。
 しかし一度選択した方法は2年間継続しなければならないので注意が必要です。

 <一括比例配分方式>
 一括比例配分方式では以下の計算式によって控除可能な金額を計算します。
 
 控除できる仕入税額=課税仕入れにかかる消費税の全額×課税売上割合
 
 課税仕入れにかかる消費税の金額が全部で5000万円、課税売上割合が95%だとすると、
 控除仕入税額は5000万円×95%=4750万円となります。
 ※250万円増税
 
 一括比例配分方式のメリットは、後述する個別対応方式と異なり、
 課税仕入を区分する必要がないという点です。
 つまり消費税がかかる取引かどうかだけ間違えなければよいので、
 個別対応方式よりも記帳担当者の手間が軽減されると考えられます。
 
 <個別対応方式>
 個別対応方式の場合は、課税仕入れを以下の三つに区分して取扱います。
 
 ・課税売上のために必要な課税仕入にかかる消費税
   ⇒すべて控除
 ・非課税売上のために必要な課税仕入にかかる消費税
   ⇒控除しない
 ・課税売上・非課税売上に共通して必要な課税仕入にかかる消費税
   ⇒課税売上割合で控除額を算定する
 
 個別対応方式は、すべての課税仕入れを売上との対応関係で区分している場合
 にのみ認められるため、一括比例配分方式よりも手間がかかると考えられます。
 記帳時にどの区分にすべきかというような判断が必要になります。
 
 対象事業者 :その期間の売上が5億以上
 対象時期  :法人・・・平成25年3月期から
        個人・・・平成25年分から
 
 5億円超の売上があって受取利息(非課税売上)が全くない事業者は無いでしょうから、
 広く影響しそうな改正です。