銀行などが中小企業などにお金を貸すときに、経営にかかわらない人を
 連帯保証人にすることが、7月14日から原則禁止されました。金融庁は同日、
 金融機関に対する監督指針を改正しました。
 
 この話は本年1月5日の日本経済新聞に、こんな記事として取り上げられていました。
 
 「金融庁は中小企業向け融資で、原則として連帯保証の対象を経営者本人に限定
 する方針だ。経営者以外の第三者は連帯保証人にしないよう金融機関に求める。
 実際に保証を求める場合も資産や収入などへの配慮を要請する。
 企業経営に関係のない第三者に債務履行を求める融資慣行に批判が出ていることに
 対応する。金融庁は行政処分をするうえでの目安となる監督指針を2010年度中に
 改正して対応する。(以下略)」
 
 連帯保証人制度の廃止(または見直し)については、以前知り合いの与党の国会議員
 さんや弁護士さんに随分聞いたのですが、結論としては「法改正はかなり難しい」
 とのことでした。理由としては、連帯保証人制度に問題意識を持っている議員が
 そこまで多くないこと、世論も自身が当事者ではない限り、自己責任の範疇だと
 そこまで問題視していないこと、連帯保証人は民法に属するが民法改正は非常に
 時間がかかり難しいこと、そして連帯保証人制度を撤廃してしまったときの金融機関
 の貸し渋り懸念などがよく挙げられていました。
 
 第三者の連帯保証人を取らない融資は、民主党のマニフェストに上げられていたのは、
 皆様もご存知の通りです。
 中々実現しませんでしたが、ようやく一つの形が見えてきました。
 法律を改正する事はありませんでしたが、金融庁の監督指針の中に盛り込まれました。
 
 表現としては、「経営者以外の第三者の個人連帯保証人を求めないことを原則とする
 融資慣行の確立」となっており禁止とまでは言っておりませんが、銀行からすれば
 禁止と言われているのと同等の効果があります。
 また、信用保証協会については「信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止」
 と原則と言う言葉はあるものの禁止されております。
 
 今回の改正では、「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする」
 と金融庁は監督指針に明記し、すでに連帯保証人になっている人については、
 金融機関などが無理な取り立てをしないように金融庁は各金融機関に指導しています。
 
 指針に反して連帯保証人を求めた金融機関は、行政処分の対象となる大変厳しい内容
 になっています。
 
 企業が倒産した時などに、保証人を引き受けた知人や親戚が借金を肩代わりする
 連帯保証には以前から批判が強くあり、東日本大震災前から金融庁は指針改正を
 検討していました。
 
 今回、震災で被災した債務者が破産した場合や二重債務ローン問題等を鑑み、
 連帯保証人への請求が頻発する恐れがあるため、金融庁は改正を行ったようです。
 
 指針での連帯保証の対象から外すのは、経営に関与していない家族、親族、
 先代経営者、仕事上の関係者です。
 
 積極的な申し出があれば連帯保証人になれますが、その場合は書面による確認を
 徹底するよう各金融機関に求めています。
 
 今回の措置によって第三者保証の問題は一応の決着を見たかのよう思われますが、
 保証協会付の借入はともかく、銀行プロパー融資の場合、第三者保証を取れないこと
 により、他の担保の要求や融資そのものが厳しくなる可能性もあります。
 
 信用保証協会は、数年前から第三者の連帯保証人を取る事を自粛しておりましたので、
 この事で保証が受けにくくなると言う事はないでしょう。
 それより、むしろ80%保証が思ったほど進まず、特別保証(100%保証)が中心と
 なっている方が問題で、時限立法的な特別保証が無くなれば貸し渋りが起きるでしょう。
 
 もう一つ気がかりなのは、日本政策金融公庫です。ここは、
 連帯保証人を付ければ金利を安くしたり、貸せない融資も連帯保証人を増やせば
 貸せるようになったりしますので、原則禁止になると貸し渋りは起きるかも知れません。
 ただ、政府系ですから実際に酷い貸し渋りが起きれば、法律改正をしてでも是正は
 されると思いますが、その狭間で犠牲が出る事はあると思います。
 
 今回の金融庁方針は、法律の改正ではありません。法律はそのままです。
 立法サイドではなく、行政の運用サイドで改善を図ろうとするものです。
 これはこれで、大きな前進だと思います。評価に値します。
 
 中小企業の経営者が自分の会社の債務を個人保証することは、さほど問題ないと
 思います。そのくらいの覚悟と責任がないと経営者は務まりません。
 金融機関サイドも、経営にタッチしていない第三者(社長の親兄弟や義兄弟、取引先、
 友人など)を連帯保証人に立てなければ融資できないというのは、明らかにおかしいと
 思います。
 不景気であるないにかかわらず、中小企業に倒産や返済不能状態はつきものです。
 身近な問題です。そんなとき、経営にタッチしていない第三者の連帯保証人から財産を
 むしり取るのは、有限責任の考え方からも大きく逸脱していますし、
 (経営者の個人保証くらいなら他国でも当たり前のように存在しますが、
 第三者の、しかも連帯のつく保証人なんてありません)
 社会貢献の観点からもマイナスのほうが大きい。
 国際比較してみてもそんな国はほとんどありません。
 
 こうした動きの中で、これから金融機関の実質的な動きが見えてきます。
 それら情報をまた、お知らせしようと思います。
 今後の金融機関の対応に目が離せません。
 
 資金調達は、早めに余裕を持って行う事をお薦めします。