「イムジャ…そのように酔っ払って、だめではありませんか」

「イムジャは女人でしょう?女人は酒など飲むものではありませぬ」

 

「あのさ〜、どうして男はさ〜、酒飲むなって言うの?」

「なんで女は酒を飲んじゃいけないの?」

「今時、酒くらい飲むでしょう。むしろ、男より女の方が強いんじゃないの?最近は」

 

 

「イムジャ…そのような訳の分からぬことを」

「酔っ払っているではありませぬか」

「誰がこのように飲ませたのです。イムジャに」

 

「そいつをこらしめねば」

「このようなか弱い女人に、無理強いして酒を飲ませるとは、不届き者め」

 

「許さぬっ」

「断じて許さぬっ」

 

「どこのどいつだっ。俺がぶった切ってやる」

 

「イムジャ、早くそやつのもとへ、俺を」

「俺を連れていくのです」

「早く」

 

 

「あの〜、もしもし?」

 

 

「イムジャ早く。なんなのですか。その呪文のような言葉は」

「そのような変な言葉。言ってる場合ではないでしょう」

 

「イムジャをこのような目に合わせる者は、一掃しなくては」

「ですから、早くっ。ほら、早くっ」

 

「イムジャがこうして困っておられるから、俺は参ったのです」

「時間もないですから、早くしてっ」

 

「ほらっ」

 

「あ、あ、あの〜〜」

 

「なんです、先ほどから」

「はっきりしないお方だ」

 

「苦しいのでしょう?辛いのでしょう?そんなに顔を真っ赤にして」

「目もとろんとさせて」

 

「もう、見てられぬ」

 

「水は飲まれたのですか?」

 

「なんなら、水を頭から浴びた方がすっきりするゆえ」

「水をかけてやりましょうか?」

 

「浴槽はどこです。水はありますか?」

「私がかけてやりましょう。ざばんと。頭から」

 

「浴槽は?水は?まずはそれからだ」

 

「だ、だから、あのさ〜〜」

 

「あのさ〜とはどう言う意味です」

 

「なぜ、動かぬ」

「イムジャ」

 

「俺は手が貸せないのです。ですゆえ、自分で動いてくださらねば」

「辛くてもほら、早く」

 

「水を飲み、水を頭からかぶり、着替えて、俺をその男たちの元へ」

「こんなにもやるべきことがあるではありませぬか」

 

「早くっ」

 

「早くっと言っておるのだっ」

 

「イムジャ」

 

 

「く〜〜〜〜〜」

 

 

「い、い、イムジャ?」

「イムジャ!」

 

「イムジャ、どうされた」

「どうされたのです」

 

「もう。私が触れられぬのをよいことに」

「ま、まさか…い、イムジャ…」

 

 

「寝たのではあるまいな」

「まさか」

 

 

「イムジャ!!!!」

 

「イムジャ〜〜〜!!!!」

 

 

「も〜なに〜、うるさいな〜」

「静かにしてよ〜〜」

 

 

「イムジャっ。このようなところで寝たらだめでしょう」

 

「それに水も飲まず、水浴びもせず、男どもも成敗してないではないか」

 

「しっかりして」

「イムジャ」

 

「このままで放っておけないでしょう?」

「起きて。お願いですから」

 

 

「も〜むり〜」

 

「無理とはなんです。無理とは」

「イムジャ」

 

 

「私をなんだと思っておるのです」

 

「こ、高麗から、わざわざ」

「このようなところまで来て」

 

「無理とは、寝るとは、どういうことなのです」

「服をきたまま、顔も手も洗わず」

 

「イムジャ、お願いだから」

「しっかりして」

 

 

「も〜い〜から〜〜」

 

 

「もういいからではありませぬっ」

 

「ああ、どうすればよいか」

「モノにもイムジャにも触れられず」

 

「ああ、ここに」

 

「ここにいっぱいの水が入ったコップがあるではないか」

 

「これをイムジャにかければ」

「そうすれば目が覚めるだろうか」

 

「このままでは、明日が大変なことになる」

 

「それに寝台で寝なければ」

「風邪をひいてしまう」

 

「ああ、どうすれば」

 

「どうすれば」

「どうすれば」

 

「そ、そうだ」

「あの手が……」

 

 

「ふ〜〜〜〜〜っ」

 

「イムジャ、起きて」

 

 

「んんん〜〜〜」

 

 

「ふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

「ふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

「イムジャ、起きてっ」

 

 

「も〜くすぐったい〜〜」

「やめて〜」

 

「んんんっ。な、何を言っておるのだ」

 

 

「くすぐったい…やめて……とは……」

「この前、酒屋で飲んだ時聞こえてきた、あのチュンソクが連れ込んだ部屋から聞こえてきたのと同じような変な言葉を」

 

 

「い、イムジャ」

 

「これは大変だ」

 

「このようなこと、他の男の前で、もし言っているとしたら」

 

「あああああ」

 

「禁酒させねば」

「とにかく起こさねば」

 

 

「イムジャっ」

「起きてっ」

 

 

「も〜うるさい〜〜」

「帰って。いいから〜も〜〜」

 

 

「イムジャ…イム…ジャ…」

「これほど言っておるのに…」

「そのようなことしか、言えぬのか……」

 

 

「もう、知らぬ」

「もう、よい」

「一人で、そうして寝て、明日ひどい頭痛になればいい」

「ひどすぎる」

 

 

「もう知らぬ」

「本当に知らぬぞ」

 

「俺は本当に、帰るぞ」

 

「よいのですか?それでも。本当に、イムジャは」

 

 

「ヨン…さん…って言ったよね…」

 

 

「だって、無理じゃん」

 

「は?」

 

「無理でしょ?」

 

「は?」

 

「だから、は、じゃなくて、無理でしょって」

 

 

「ですから何が無理と」

 

「触れられないでしょ?」

 

「私一人で後でベッドいくし、水も飲むし、風呂も入るから」

 

「もういいから」

「大変だから、こんなことでいちいち来なくていいから」

 

「高麗っていうとこで、やらなきゃなんないことやって」

「私なんか心配しないで」

 

「私は一人で生きていけるから」

「だから、私なんか、触れられない女なんか相手してないで」

 

 

「高麗できれいで素敵で触れる女の人見つけて」

「早く」

 

 

「…………」

 

 

「し………」

「幸せに…なれば…いいじゃんっ」

「もうっ」

 

「なんでいっつも、来て欲しい時に来るの?」

「なんでして欲しいとこと言うの?」

 

「でも、できないでしょ」

「でも、触れられないでしょ?」

 

 

「私、男と飲んでないから」

「一人でやけ酒だから」

「だから、なんで、来るのよ」

 

「私が苦しくて」

「私がヨン…を思って」

 

「そんな酒を飲んでたのが」

「分かったの?」

 

「そんなこと、分かっちゃうの?」

「私の気持ち、全部分かっちゃうの?」

 

「だったら、触って」

「触れて!私に」

 

「無理なら来ないで」

「お願い」

 

「辛くて」

「寂しくて」

 

「無理…な…の……」

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

「ここに、水がありますから」

「それを飲んで」

 

「風呂に入って頭冷やして」

 

「服を着替えて寝台に入って」

 

「そして休んで…くださ…い…」

 

「俺は帰りますから……」

 

 

「抱いて寝台まで行ってやりたいが」

「おっしゃる通り、できませぬ」

 

 

「水を飲ませてやりたいが、それも、できませぬ」

「風呂にいれてやりたいが、それも、できぬ」

 

「すべて俺にはできぬ」

「口で言うことしかできぬ」

「イムジャに触れること……できぬ」

「今は………」

 

 

「今はって、じゃ、待てばできるようになるの?」

 

「わかりませぬ」

 

「できるかもしれぬし、できなかもしれぬ」

「とにかく、俺が生身の体で来れた時こそが、イムジャを連れていける時…」

 

「え……」

「連れて…いく…?」

 

「あ、いや、勝手にすまぬ」

「連れていけるなどと…」

 

「いや、聞かなかったことにしてください」

「言い間違えですゆえ」

「ただの…言い間違え…です…ゆえ」

 

「ただの……」

 

「ふ〜〜ん…そう……」

 

「もう、寝るから」

「じゃ」

 

「一応お礼言っとく」

「ありがとう」

「来てくれて」

 

「酔いも覚めたし」

「助かった」

 

「でも、いいから」

「大丈夫だから」

 

「自分の仕事、頑張って」

「私なんかいちいち……」

 

「来ては……」

 

「迷惑………」

 

「です…か………」

 

 

「え………」

 

「そのように迷惑であれば、もう来ませぬ」

 

「これまでも、もう来ないと言いながら、来てしまい、すまぬ」

 

「そうであった。いつもそう言われていたのであった」

「それを、俺。ついつい忘れて、このように押しかけ」

 

「すまぬ……」

 

 

 

「では」

「さらば」

 

 

「あの…」

 

 

「なんです」

 

 

「ああ……」

 

 

「なんなのです」

 

 

「えっと…。お仕事頑張って……」

「大変なんでしょ?その…怪我とかしないよね?」

「怪我したらすぐ来てね。治してあげるから……」

 

 

「え……」

「来てよいのですか?」

「俺が?」

「来ても?」

 

 

「え…。あの……。怪我しないで」

「とにかく」

 

 

「怪我はだめ」

「絶対にだめ」

 

「いい?だめだから」

「危険なこと絶対にしないで」

 

「命かけるとかもだめ」

「いい?分かった?」

 

「話し合いで」

「喧嘩しないで」

 

「ね……」

 

「誰かの身代わりとかそういうのもだめ」

 

「自分の命。大切にして」

「怪我は、しちゃ、だめ」

 

「もし、万が一、しちゃったら……」

「すぐ来て。治してあげるから」

 

「ああ、触れられないのか」

「んん。大丈夫。なんとかするから」

 

「なんとかなる」

「だから、危ないって思ったら」

「自分が危ないって思ったら、ここへ」

 

「来て」

 

「いい?」

「分かった?絶対よ」

 

 

「俺は怪我などしませぬ」

 

「そのように弱くないのです」

「俺は、強いのです。こう見えても」

 

「怪我をしなければ来てはいけぬのですね?」

「怪我をしたら、来てよいのですね?」

 

 

「そう」

 

「怪我をした時は必ず、来て」

「それ以外は……もし……暇だったら…」

 

「どうしても暇だったら」

「たまには相手してやってもいいけど」

 

「できれば、幻さんじゃなくて、リアルがいいけど」

 

「私、待つの苦手で」

 

「いつもいてほしくて」

「好きな人にはいつも側にいてほしくて」

 

「だから、無理なら無理って」

「言って」

 

 

「好き…な…人……?」

 

「とは……」

 

 

「もしや……」

 

「ああ、それは物の例えで」

「言い間違えだから」

「聞かなかったことにして」

 

 

「イムジャ」

「ここへ」

 

「俺の前へ」

 

「何?」

 

 

「俺の前に来て」

「くださいませぬか?」

 

「なんで?」

 

「いいから」

「ほら」

 

 

「酔いが覚めたといっても」

「ちょっとふらついてて」

 

「ああっ」

 

 

「イムジャ……」

「危ないではないですか」

 

「俺が支えなければ、今頃柱にぶつかる…」

 

 

「あ…イムジャ…」

「触れられ…た……」

 

 

がたんっ

 

 

「いたたたた」

「もう〜。支えるなら最後まで支えてよ」

 

「力無いの?」

 

 

「い、いや」

「力ならすごくありますが」

 

「俺、触れられぬはずが一瞬」

 

 

「触れた」

 

 

「この腕で」

「イムジャをっ」

 

 

「イムジャ」

 

 

「さらば」

 

「え…?」

 

「試してみたいことがあるのです」

「高麗で」

 

 

「それを試したらまたすぐきますゆえ」

「今はひとまず」

 

「さらば」

 

「水を飲んで」

「たくさん飲んで」

 

 

「風呂に入って、布団に入って」

「ちゃんと寝るのですよ」

 

「いいですね」

「してやりたいけれどできませぬから」

 

 

「ひとまず」

 

「さらば」

 

 

「いいですね」

 

 

「水を飲んで…」

「風呂に……」

 

 

「あ〜あ〜また、いっちゃった」

「忙しい人」

 

「でもなんか…」

「さっき……」

 

 

「感じた。初めて」

「胸……」

 

「厚かった」

 

 

「やば。ドキドキする」

 

 

「厚すぎて、あれは腕が回らないな…多分…」

「それに固くて、でも弾力があって」

 

 

「やば。私、何考えてるんだろう」

 

 

「寝よ寝よ」

 

「水飲んで〜」

 

「お風呂入って、水かぶって〜」

 

「布団に入って寝ると」

 

 

「ちゃんとやるよ〜」

「ヨン〜」

 

「くくく。ヨンって呼んじゃった」

「どさくさに紛れて」

 

「あの人、連れて帰るって」

「私を連れてくって」

 

「ふふふ」

 

「早く水飲んで風呂入って、布団入って寝よっと」

「寝よ〜っと」

 

「なんかすっきりした〜」

「連れて帰る〜」

 

 

「連れてく〜」

 

「ヨン〜〜」

 

 

ぶるぶるぶるっ

 

 

「さ、寒気が」

 

「悪寒が」

「鳥肌が」

 

 

「なぜだ」

「なぜこのような」

 

 

「好きな…好きな人…好き…好きな人の側にいたい」

 

 

「好きって」

 

「なんだ?」

 

 

 

生身の俺がそちらへ行けたら

連れて帰りますゆえ

強引にでも

肩に背負ってでも連れて帰りますゆえ

 

それまでしばしお待ちを

 

俺が生身であったら

大変です

 

耐えられますか?

 

こんな俺に

イムジャは……

 

イムジャ…

夜に…

 

会いたい…

 

イムジャ俺を待っていて

 

 

 

2017年1月10日

シンイヨン物語サイトに

初掲載

 

 

こちら

「幻ヨン」シリーズの説明を

もう一度…

 

 

 

幻ヨンも不定期物語です。

話数がついていた気がしますが

また後日。

 

この話は、時系列に規則性がありません。

話が戻ったり進んだりしています。

 

設定としては、生きる希望を失い

次の生を求めるために

湖底へ沈んでしまったチェ・ヨンを

助けたのがウンス(とある女性設定)。

 

チェ・ヨンはウンス(同女性)を

探し求めるあまり、ついに、

ウンスを発見。

しかしそれは、天界・ソウルに住む人で、

ヨンは幻として会いにきている。

そういう設定です。

 

まだ二人は、リアルで出会っておらず

ゆえに、チェ・ヨンは幻。

ウンスに触れることが一切できません。

ウンスも、この人が誰なのか

最初はまったくわかっていませんでした。

それに、ウンスが困り果て、ヨンを

深く想った時しか、

チェ・ヨンは天界のウンスの元へと

来ることができません。

 

そんな少し複雑のような簡単なような。

チェ・ヨンがコエックスでウンスを

捕まえる前のお話。

実は二人は運命の糸で

それ以前からつながっていた

そんなお話です。

 

会話だけで進める

そんなお話です。

 

 

 

PS. 2020.1.3追記

 

ダラダラ子は今そろばん侍

を見てました。

 

日本のドラマを見るのは

久しぶり

 

しかも、向井理は

超大好きな俳優です。笑

 

ゲゲゲの女房は

全部見てました。

その昔・・。

 

久しぶりに見ましたが

やっぱりめちゃかっこよかった。

 

超強い侍で

ばっさばっさ斬り捨てるのですが

ヨンの刀捌きが

思い出せないまったく

 

なぜだろう・・ああ

なんてこと・・

 

でもヨンの刀捌きは

やっぱり

すばらしくかっこよかった

 

それだけは覚えてます。笑

 

というわけで

書きたいのに書けない

ジレンマと向かい合いつつ

正月3日になってしまいました・・

 

すまぬ・・・

 

(って誰も期待してないか)笑

 

じゃあ〜