チェ・ヨンは
ウンスの脚を自分の脚で
挟み込み
ウンスの背中に
自分の胸をぴたっと寄せて
ウンスの躰を後ろからすべて
囲い込むようにして
ピアノの椅子に二人座って
弾いていた
ウンスの細く白い手の上から
自分の手を被せ
「俺を 感じて……」
「俺の指を 感じて……」
「俺の指が動くように
イムジャも 同じように……」
「俺とともに……」
「感…じ…て………」
ウンスの耳元で
その可愛らしい小さな耳に 唇はつけず
ただ 熱い息を吹きかけながら
そうささやく
二人瞳を閉じ
何度も何度も
同じSay Somthing を弾き続けていた
もうキム・タンは歌っていない
ウンサンを抱きしめ
チェ・ヨンとウンスが繰り返し弾く
そのSay Somthingの
緩やかなリズムに乗りながら
二人 踊っていた
「イムジャ…上手…ですね……」
「ヨンが………」
「ん? 何ですか……」
「ヨンの指が………」
「俺の指が…どうしたのですか?」
「離れ……ない…から……」
「離れない? 離れるでしょう?」
「くっついて…る……私…に……」
「くっついてる?」
「ヨンの指が 私を離さない……」
「ぴたっとくっついて」
「密着して………」
「その先…が…私を捕らえて……」
「繋がって……る……から……」
「イムジャ……」
「感じて……いるのですね……」
「……………」
「俺を……感じて……」
「いる……の……です…ね……」
「……………」
「言って……」
「感じて……いると……」
「俺を 感じていると……」
「言ってくださらぬのか?……」
「感じて……る……」
「何を?……」
「何を 感じておられるのですか……?」
「言って」
「ヨ……ン……を……」
「俺を……感じて……いるのですね?」
「もう一度……」
「言って……」
「ヨンを……感じて……る……」
はああああああっ
そうチェ・ヨンはウンスの耳に
痛くなるくらいの熱を吹きかけると
「では 最後 もう一度弾いて……」
「参りましょう……」
「この熱い躰冷やしに 参りましょう…」
そう言って 再び
自分の脚で ウンスの脚を
ぎゅっと 押さえつけると
ウンスのその指を まるで自分の指のように
操りながら
一つになりながら
最後の演奏を
二人瞳を閉じながら
ゆっくりと 感情を込めながら
躰を 縮めたり 伸ばしたりしながら
Say Somthing に感情を込めて
「何かを 言って」
「諦めないように」
「俺に 言って」
「愛してると 言って」
「俺に 言って」
「俺だけを 愛していると」
まるでそう言ってるかのような
唇の動きをしながら
二人は弾き続け
そして 最後の音を 鍵盤に置き
その鍵盤を 押し込んだまま
そこから指を離さず
二人の指が一つになり
果てた快感を 感じ
その鍵盤の音がなくなっても
チェ・ヨンとウンスは
そこから 指を離さなかった
桟橋から離れた蒼々とした草むらの中
ブランケットをばさっとひいて
その上に倒れこんだ
チョン・チノとパク・ケイン
「ケイン 俺………」
「会いたかった ずっと……」
そうチノが言った
そして ケインの服をゆっくりと
脱がしていく
「いい……?」
そんなケインの表情を伺うような顔で
ケインの意思を確かめるチノ
「ここで…恥ずかしい……」
「みんなもいるし……」
「私たちしてること わかっちゃう……」
そうケインは言ったが
チノは
『我慢できないんだ』
そんな顔をして
「俺たち 夫婦だし……」
「皆 あそこでそれぞれ……」
そう言うと ケインを静かに横たわらせ
その白い肌を その柔らかく赤い唇で
ひた ひた
と伝い始めていった
もう チノを止められなかった
ケインも
もうチノを止める気などなかった
「もう いい……」
そう想い
二人 久しぶりの愛の中へと
落ちていった
ク・ジュンピョは先ほどの
自分の激しい口づけに
酔いしれていた
クム・ジャンディはジュンピョの
胸をばんばん叩いて
苦しい
そう言っていたが
本当は口づけをしながらも
息も吹き込んでいた
ジャンディが窒息しないように
息を ふうっぅっと吹き込むジュンピョ
その肺活量ははんぱなかった
だから ジャンディが恥ずかしがって
そのようにしているのは
よくわかっていた
ジャンディに言った
「俺たちも 少し 大人に……」
「大人の愛をしよう……」
そう言った
驚くジャンディ
ジュンピョが そんなことを言うなんて
自分よりも本当に子供みたいで
子供そのもので
小さなこと動物園に言った時も
自分の方がはしゃいでて
本当に可愛いくて 一生懸命で
一途すぎて
そのまっすぐな気持ちが
怖くもあった
突き刺すような視線で自分を追うジュンピョ
ジュンピョに嘘はつけなかった
ジュンピョには いつも真剣勝負でないと
だめだった
でないと 去ってしまう
そんな男
ジャンディは それが怖かった
「もう少し 子供で……いたい……」
そうジュンピョに言ってみる
もう20歳もすぎて 大人なのに
もう少し 子供でいたい
ジュンピョとは もう少しそんな関係で
いたかった
楽しかったから
ジュンピョとのそんな愛が
嬉しくて 幸せで
そんな 初々しい恋が 好きだった
ジュンピョは そんなジャンディの気持ちが
わかったのか
「俺 そんなに 待てないぞ」
そう言うと
ジャンディの頭をくしゃっとなでて
ユンソンたちが座っていた桟橋に
同じように腰掛け 足をぶらんぶらん
そうさせ始めた
二人 鍵盤の上に指を置いたまま
ずっと じっとしているチェ・ヨンとウンス
躰が震えているように見えた
二人椅子に座って
ただ鍵盤の上に二人の手を一つに重ね
置いている
そのように見えるが
二人の躰 ぶるぶると震えているように
見えた
ユンソンには 二人の愛がよくわかった
だが キム・ナナもまだ子供
子供すぎて あんな愛はまだ無理だ
そう想った
俺は ジュンピョのように子供じゃない
俺は 知りすぎてる
いろんなことを
いろんな 汚い世界も たくさん見て
たくさん経験して
知りすぎていた いろんなことを
だから ジュンピョとジャンディが
羨ましかった
キム・ナナに 悪いとも思った
こんな俺と いいのだろうか
こんな俺と ナナのような女が
つきあっても
「いいのか? 本当に……」
ストレートの髪を
目までかかりそうなその髪を
ふっと揺らしながら
そう 潤んだ瞳でキム・ナナを見つめる
ユンソン
「私が 選んだの」
「私が ユンソンを選んだ」
「ユンソンでなきゃ 私だめなの」
「私が ユンソンを護る」
「そう言ったでしょ?」
「ユンソンは私を護ってくれるし
私のこと 心配ばかりしてるけれど」
「私 ユンソンがいれば 強くなれる」
「なんだって はねのけて
ユンソンが危険な時だって 私が……」
「私が護ってあげられる」
「大丈夫 私強いから こう見えて」
また強がってる
お前 いつもそうやって強がって
確かに強いのはわかるけど
俺のために 躰を張るな
俺のために 戦おうとするな
俺のために 傷つくな
俺のために 泣くな
俺のために ………
ユンソンは キム・ナナのほっぺたを
つねりながら また同じことを
同じ注意を 繰り返していた
そして ナナの唇に 軽くキスするのでなく
今度は あの電灯キスの時のように
左右から貪った
その可愛い唇を
ちゅうっっっ
そんな音が聞こえる
吸い付くような音
唇を大きく開け 右から
ちゅううぅぅぅううぅっ
そう吸い
そして 左に向きを変えて
また大きく唇を開けると
ちゅううぅぅぅううぅっ
そう ナナの唇を吸い尽くしていった
キム・タンが チェ・ヨンに言った
「湖 入るんだろう?」
静かに二人ピアノの椅子に座っていた
チェ・ヨンとウンス
ふうっ
そんな息とともに いったんウンスの指から
その指を離すと
チェ・ヨンはすっと立ち上がり
ウンスの手を引っ張りながら
湖の前に立ち
いきなりその衣を脱いで
いや全部は脱がなかった さすがに
二人きりではなかったから
上着だけ脱ぐと
ざぼんっ
そう湖に飛び込んだ
いったん奥深くへと潜っていく
姿が見えなくなり
皆が心配する
「大丈夫か? あいつ……」
そうユンソンはつぶやいたが
「まあ 大丈夫だな」
そうすぐに言った
ウンスは いつものこと
そんな表情で 見つめている
その湖を
すると 自分も上着を脱いで
薄い下着一枚になると
ざぶんっ
そう水音をさせながら湖へ飛び込んだ
そしてチェ・ヨンの後を追って
潜ってみる
チェ・ヨンがすぐに来てくれるのが
わかってるから
何も気にせず 潜ってみる
やっぱり すぐチェ・ヨンが
下から戻ってきて
ウンスを抱きかかえると
「一人で 危ないでしょう?」
「イムジャは 無謀すぎる」
そう言って湖面へと引き上げた
「ここはあそこほど透明ではありませぬ」
「きれいですが あそこほどではない」
「だから 潜るのは止めましょう」
「月が 満月がきれいなのだから」
「ここでは 月でも見ながら」
「浮かんでいましょう」
「二人ではないから できぬし……」
「ん? できない?」
そうとぼけてウンスが言う
「イムジャ 分かっておるくせに…」
そうチェ・ヨンは少し拗ねた顔で言うと
湖の奥の方へウンスの手を引っ張りながら
泳いで行った
二人 何をする気なのか
なんとなく 皆分かっていた
キム・タンが ウンサンに
「俺たちも 水浴びしよう」
そう言って上半身裸になると
ウンサンもタンクトップ一枚にして
手をつないで飛び込んだ
驚くウンサン
「ねえ キム・タン!」
「ひどいじゃない こんなっ」
ずぶ濡れになるウンサン
そんなウンサンを自分に引き寄せると
と湖の中に突き刺さっていた
杭のところまで
ウンサンの手を引っ張りながら
泳いでいき
その杭にウンサンをぐいっと押し付けた
「俺たち 結婚するんだろう?」
「だから いいだろう?」
「もう 母さんの目を盗まなくても」
「もう 父さんの目を盗まなくても」
「誰の目もごまかさなくていいんだ」
「だから………」
そう言うと ウンサンの顎をぐいっと
力を込めてつかみ引き上げると
すごい激しさで ウンサンの唇
自分の唇が裏返るくらいの勢いで
奪っていった
吸うというよりは押し込んでいる
自分の唇を
ウンサンの中に 押し込むような
そんな激しさで
ウンサンの手を杭のうしろに回し
自分に抗えないようにして
その顎も動かぬように捉えて
そして 自分の唇ウンサンの唇に合わせ
どんどん中へと
どんどんその中へと
侵入していく
ユンソンが言った
「すごいな………」
「みんな すごいな」
「こんな 愛って あるのか?」
「俺たち まだまだだったな」
「ナナ……」
そうキム・ナナの肩を抱きながら
足をぶらんぶらんさせながら言う
ジュンピョは
「ああもう 本当に……」
「困った奴らだ 本当に……」
そう言うと
執事に タオルやら飲料やら水着やら
いろんなものを用意させて
ほら お前ら 好きなのとって
着替えるとこほしければ
あそこの部屋があるから
そこで着替えて……
そうぶつぶついうと
「おいっ 入るぞ みんなで湖」
「もう ここで泳ぐぞ」
「今晩は この満月のもと 泳ぐぞっ」
「チノっ! 先に泳いでるからなっ」
そう大きな声で言うと
一生懸命練習して泳げるようになった
その泳ぎ 早く見せようと
「ジャンディとキム・ナナ」
「あっちで着替えてこい」
「ほら 早く」
そう言うと 自分はその場で着替えて
ざばんっ
そう湖へと
勢いよく 飛び込んでいった