シャンパングラスを手に持ち、チェ・ヨンとウンスは隣同士座って飲んでいた。
ただ、隣に座りシャンパンを飲んでいるだけのはずなのに、そのチェ・ヨンから出ているように見えるオーラが、隣に座っているウンスをも抱き込んだ瞬間、チェ・ヨンはウンスをぎゅっと抱きしめ、自分の口に含んだシャンパンをウンスに、
つぅぅぅぅぅっと
口から垂らすように流し込んでやっていた。それを当たり前のように美味しそうに飲むウンス。
まるで恋愛映画のワンシーンのような、幻想のような、だが、現実でもあるようなそのような光景を目にしたク・ジュンピョとクム・ジャンディ、そしてパク・ケイン、チョン・チノも実はその光景を見ていたが、そのようなこと有り得ないと頑なに否定して
「俺は見ていない」
そう言い張っていた。
そのうち、真っ白なスクリーンがリムジンの中に自動で降りてきて、チェ・ヨンとウンスの周りに、若々しい緑が、いや、それは蒼い草むらにも見える、そんなどこまでも続く草原が映し出されると、二人はまた熱く切ないキスをして、涙ぐむウンスをチェ・ヨンが抱きしめ、その大きすぎる手で背中を撫でてやっている。
こちらも先ほどの恋愛映画の続きのような、幻想のような、だが現実でもあるようなそんな光景を、チョン・チノとク・ジュンピョたちが吸い込まれるような瞳で見つめていた。
「お前ら、何がそんなに哀しいんだ?」
ストレートに想ったことをチェ・ヨンたちに聞くク・ジュンピョ。ジャンディが肘でジュンピョをつつき、ひそひそ声で言った。
「哀しいんじゃなくて嬉しいのよ」
「きっと今まで 何か辛かったのね」
「それが今解放されて喜んでる」
「そうじゃない?」
パク・ケインに言った。
「そう そう」
と頷くケイン。
そのケインをチョン・チノが横目で睨むと
「静かにしていろ」
「お前ら何にもわかってない」
「ヨンとウンス…」
「あんなに真剣に愛し合ってるじゃないか」
「見ているのだって失礼なのに、そのような勝手なことを言って……」
「恥ずかしいと思わないのか?」
そう至極正論を、チョン・チノらしく言った。
その時、リムジンが音もなくすっと止まった。
「ジュンピョ様。到着いたしました」
そう伝える執事。
ジュンピョが
「開けろ」
そう言うと、ジュンピョが座っていた場所の窓が
「すぅ~っ」
と開いた。
すっかり夜になったボストン近郊。はっきりとは見えなかったが、目を細めてジュンピョが先を見つめると、キム・タンとチャ・ウンサンが、ハーバード大学の門の奥に、二人佇んでいるように見える。
「何をしているんだ?」
そういうジュンピョ。
「あれ 喧嘩しているのか?」
「タンがウンサンを後ろから抱きしめているのに、ウンサンが何か困っているようだぞ」
そうすごく目のよいジュンピョが、二人の様子を解説した。
「俺、ちょっと言ってくる」
そう言い、ジュンピョが外へ出て行く。ジャンディも
「私も」
そう言って後をついて行った。
後ろでキム・ナナと熱い、チェ・ヨンのように熱いキスを交わしていたユンソン。
思い出していた。まだナナと思いが通じる前、自分の正体がバレる前のことを。
自分も怪我をしているのに、ナナの事ばかり思い、鼻にかかったユンソンとジュンピョにしか出せない甘すぎる声を出して
「驚いただろうな」
そう言った。
そのあとの、あの電灯キス。
「あいつらも、俺たちと同じ事しているだけじゃないのか?」
そうぼそっとユンソンが言った。昔のあの思い出を手繰り寄せるかのように、そう言った。
そのあとユンソンは
そう言い、キム・ナナの元を去った。
さきほどのチェ・ヨンとウンスの切なすぎるキスが、もっと、もっと、と、どんどん激しさを増すキスが、その時の自分のようでもあり、そして今向こうに見えている、キム・タンとチャ・ウンサンも、自分たちのあの時と同じように見えた。
キム・タンのところに走っていくク・ジュンピョ。
「お~いっ、お前ら何してるんだ!」
そう声をかけると、二人の気まずそうな雰囲気など押しのけるように
「行くぞっ」
「あそこへっ」
「行くぞ、今から」
そう言うと、いつものタンとウンサンらしくないそんな二人を連れてリムジンへと戻り
「飛行場へ」
そう一言、伝えた。
するとまたそのリムジンは、す~っと、夜のボストンの街へと滑り出して行った。
追記)
これを書いた2016年。
今思い出しました。
この話。実はあるところで相当止まっていますが
最終目的地はパリを想定したことを。
・___・。
パリ・・パリパリパリ
パリパリ?笑
パリ、行きましたよね。私。
直近で。
これの続きを書くためだったのか!もしかして?
ww
本当に不思議と、自分と何かがつながるために、結果必然になるために、常に何かをしている、自分の人生。
そう感じてなりません・・・。
ただの偶然でしょうけど・・・。笑