自分の下に

ウンスを組し抱き

 

また

あの刻のように

自分自身を

 

たぎる想いのまま

止めることもできず

我を忘れたあの姿で

あのひとを征服し

 

終わってみれば

 

「すまぬ」

 

とそう一言

 

震える声で

伝える

チェ・ヨン。

 

 

そんな風に

謝ることしかできない自分に

幸せそうな顔から

哀しそうな瞳へと

一瞬で表情を変えてしまう

あのひと

 

どうしようもなく

どうすればよいのか分からず

 

ウンスのその先まで

貫いてしまったままの

その姿で

力なくうなだれる。

 

 

息ができぬほどのこの想いを

制御することが

チェ・ヨンには

どうしてもできない。

 

今、この絶頂の刻に

自分のありったけの力で

抱きしめてやりたいのに。

 

そのひとを。

本当は。

 

してやりたいのではなく

抱きしめたい

抱きしめられたいのに

 

そのひとにこれ以上

触れることが

怖くて

 

そうしてしまってもなお

我に返ったチェ・ヨンは

その先を迷う。

 

 

この先一度ひとたび触れたら

もっとありえないまでに

自分でも想像できないほどに

どうなるか分からないまでに

きっと、激しくしてしまう。

 

命令し、強要し、

そして

壊してしまう。

 

そのひとを。

 

 

あの死角で

初めて一つになった

 

愛し合う男と女は

こうなるものなのだと

初めて知った

 

気づいたら自分の躰が

そうしていた

 

そんなあの刻が

そうだった。

 

我慢し続け

我慢に我慢を重ね

耐え、堪え

その果てが

あの自分の姿だった。

 

無理矢理に

強引に

自分の女の腕を捻り上げ

壁に押し付け自分を放ち

 

結果、自分の女になった

ウンスは

 

チェ・ヨンが戦いへ向かい

いなくなったら

自分はどうなるのかと

一人でなどいられないと

我を忘れて半狂乱になり

 

その気持ちを落ち着かせるのに

どれほど大変だったか。

 

強く明るいひとであるはずの

自分の女は

実はもろく壊れやすく

自分がいないと

そのひとでなくなってしまう。

 

そんなひと

 

誰もそんなこと知らぬが

あのひと

 

自分の無事だけを想い

心を壊すほどに心配し

自身の命など省みずに

自分を助けようとするひと

涙を溢すひと

何も言わずに

じっと、極限まで

我慢するひと

 

自分がそうであったから

そのひとの心は

痛いほど手に取るように分かる。

 

だから、チェ・ヨンは

またしても

そうしてしまったのに

その先へ

もっと先へ

チェ・ヨンの知らぬ

自分の世界へ

行けずにいた。

 

きっと、あのことが

頭にちらつき

自分を御せなくなる。

 

たがが外れ

自分でも初めて知るような

そんな男に

またきっと

なってしまうはず。

 

 

そんな自分が、

清廉とは程遠く汚く想え

ならばただそっと

微かに触れて

息を僅かに感じられる

それだけのキョリでいいと

そう我慢したのに。

 

なぜ、いつも

こうしてしまうのか。

 

気づけば

そうなっている自分。

 

なぜ、どうして

あの口づけほどまでに

しておけぬのか。

 

その姿で

いつものように

その先へは行かず

 

伏し目の

うなだれた

チェ・ヨンに

成り果ててしまった。

 

 

 

 

自分が重ねてきた

瞳と表情と

躰の熱のそれぞれを

想い出す。

 

ウンスを貫き

その奥深くまで

行き着いてしまった

そのままの姿で。

 

ウンスの躰の両端に置いた

その腕を

砂の中にぐぃっと伸ばし

押さえつけ

 

「それ以上は潜り込まぬ」

 

「これ以上、このひと

近づいてはならぬ」

 

そんなことを自分に

何度も命令しながら

耐えている。

  

 

何度見つめたのだろう。

分からぬように

自分は。

 

何度行きたい自分を抑え

我慢したのだろう

この瞳だけで。

 

何度あの人に触れたいと

思ったのだろう

この唇で。

 

 

想い出せないほどの

我慢のキオクが

その男には

ある。

 

 

この愛がこれほど

辛いものだとは

いや

恋も愛も

そのようなものとは無縁で

知らずにずっと

生きてきた。

 

 

「知ってまったからこそ

こうして課せられるのか」

 

「この先、ずっと」

 

 

そう、想いながら

 

白い砂に埋もれそうになっている

チェ・ヨンは

 

 

「行くときはウンスと一緒」

 

「この砂に埋もれ」

 

「消えてなくなってしまうときは」

 

 

「そのときは」

 

「このひとと一緒」

 

 

そんなありもしない

卑怯なことを考えながら

だが、そんな刻を

心の中で期待している

自分が

まだそこにいる。

 

 

 

何も考えずに

ウンスといられる場所を。

 

 

何にも縛られず

強要されない

世界にいる

自分とウンスの場所を。

 

 

 

この期に及んでも

まだ

期待してしまい…

 

 

 

その腕は

もう

砂の力に

抗うのを

すっかりと

 

やめ

 

その瞳は

狂いそうなまでに

愛おしそうに

欲しそうに

 

だが

我慢して

堪え耐え

 

じっと

見つめる

 

 

だけだった。

 

 

 

 

すみませぬ

 

インジャ