先日より再開いたしました「ニッポンの恋」シリーズですが、今回は「蜻蛉日記」の「なげきつつ」編を取り上げます。


「蜻蛉日記」は、藤原道綱母の著作で、一夫多妻・通い婚社会の中で夫・兼家にイマイチまともに抱いてもらえなかった筆者の恋愛の記録です。「なげきつつ」編は、以前取り上げました、「百人一首」にも選ばれた和歌の出典作品です。筆者は基本的に「カレに遊ばれている」設定になっています。

今回の主役は、白石麻衣です。

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9月に入った頃のことでした。あの人が出かけて行ったあと、ふと箱を開けてみると、手紙が一通ありました。他のコに送ろうとしていたんです。
(カレのメールをチェックしたら、、、なんて、今でもよくありますよね)

【歌 1】うたがはし ほかに渡せる ふみ見れば ここやとだえに ならむとすらむ
→「私、知ってるよ!キミはあのコの方が私より好きなんでしょ?だったら、もうサヨナラした方がいいよね?」
(西野カナの「もっと...」ってこんな歌詞でしたね)

そしたら、しばらくは会ってくれたのに、10月の暮れになって、また3日も会ってくれなくなっちゃって。

カレ「うん、気が変わった」

「…何で、そんな平気な顔で、そんなこと言えるの?やっぱり私、遊ばれてる?」

それからというもの、カレは夕方に出かけるとき、「ちょっと仕事で外せなくて」なんて言い訳をするようになったんです。

「…アヤシイ。どう考えても」

執事に調べてもらったら、

執事「アッチの路地の、泉さんトコに出かけましたよ」

「…やっぱりな。遊んでる。でも、何て言ってやったらいいかなぁ?」

そして、気がついたら夜明け前になって、カレはやってきた。

「…会ってやるもんか!」

そしたらあの人、あのコのところに行っちゃったの。でも、やっぱり、このままじゃ収まらないわ!

【歌 2】なげきつつ ひとり寝る夜の あくるまは いかに久しき ものとかは知る
→「会ってくれないキミのコトで胸がいっぱいで、それでも会えなくて、一人寂しく明かす夜がどれだけ長いか、キミはわかってる?」
(このあたりなんて、加藤ミリヤの「aitai」の歌詞そのものではないでしょうか?)

「色の褪せた菊の花」に添えておきましたわ。
→どうせ私なんて魅力のない女、キミにとってはそういうことなんでしょ。

そしたら、カレからのお返事。

「いやホントだよ!ホントに急な用事で外せなくなっちゃったんだって!麻衣が怒っちゃうのも無理ないだろうけどさぁ。」
【歌 3】げにやげに 冬の夜ならぬ 真木の戸も おそくあくるは わびしかりけり
→「なかなか明けない真冬の寒い夜…でもないのに、なかなかキミが玄関を開けてくれないもんだから、、、」
(あくる = 夜が明ける・戸を開けるの掛詞。ついでに思いっきり開き直ってます!ムカつくー!)

それでも、カレは平気な顔で、今まで通り夜明け前になって私に会いに来るんです。せめて「仕事が忙しい」って誤魔化すぐらいはしなさいよ。もう知らんし麻衣。

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いかがでしたでしょうか?
この作品は、主人公(筆者)の「遊ばれ」っぷりが何より重要なので、原文以上に強調しました。一応本人の名誉のために申しておきますと、筆者は当時3本の指に入る美人とされていたのですが、どんな美人であろうとも、仮に白石麻衣のような美人でも、遊ばれる女は遊ばれる世の中でした。決して地位の低い女性ではなかったのですが…。
まぁ、これだけの美人を遊び捨てるカレの「ワルい男」っぷりを楽しんでいただくのもアリかもしれません。最後の言い訳&居直りなんて実にムカつくー!の一言に尽きます。

ストーリー中では3首の和歌が詠まれていますが、百人一首に選ばれたのは、2番目です。可愛く着飾って、髪もメイクもバッチリ、今夜は会えると期待していたのに、「やっぱ会えない」の一言でデートの予定が流れたときのガールの気持ちとは、こういうものです。結局、「もういい!知らない!」となるわけです。ただし、この後もストーリーは続くので、実は破局というわけではありません。うーん、わからない山あやの!

「カレのメールをチェックしたら」、「西野カナ、加藤ミリヤの歌詞」など、今でも通じる「あるある」要素満載。ガールの皆さんには共感できる作品ではないかと思われます。

次回も、気が向いたときにお送りします。またね!(笑)