本多孝好、三冊目。
恋愛短編集かと思いきや、やはりミステリーチックでした。
本多さんなら仕方ない(笑)
『FINE DAYS』
不思議な少女に関わる、奇妙な物語。
結局、主人公と安井の前に現れた彼女は何だったのでしょうか?
彼女が持つ不思議な力が作り出したもう一人の彼女なのか、それとも主人公と安井の心が生み出した幻想か。
真実がわからない為、正直、後味はあまりすっきりしません。
でも、そんな中に読者を惹きつける何かがある。
本多さんらしい作品です。
恋愛小説かと思って読んだら、ミステリーでした(笑)
『イエスタデイズ』
父親の悲しい恋物語。
どんな人にも、若く純粋な季節があるものです。
たとえそれが年老いて死にかけた父親でさえも。
輝いていたその時期の本人達に会うことが出来たなら、きっと心動かされるはず。
しかし、美しすぎる恋愛は、もう既に過去のもの。
未来を変えることなど、決して出来るはずも無く、ただただ悲しい物語。
夢を捨て、現実と向き合うようになった二人に、過去の美しさはありません。
真山さんは、以前のままで居て欲しかったです。
『眠りのための暖かな場所』
終盤の展開がめちゃくちゃ怖かったです。
思いのままに人に不幸を与える力。
そんなものが人間に備わっていたら、みんな結城の姉のようになってしまうのかもしれませんね。
心残りは、結末がはっきりしないまま終わってしまったことです。
できれば、続きが知りたい。
それと、主人公が抱える過去の過ち。
それは仕方ない事だと思えます。
例え、誰かを蹴落としてでも、人は生きたいと思うもの。
きっとそれが人間のあるべき姿でしょう。
初めは悲しい立場の脇役かと思っていた立川明美は、意外にいい人物で大好きでした。
誰かの為に必死になれる女性って素敵です。
『シェード』
「恋をしましたか」
「ええ、もちろん」「それはもう、数え切れないくらいに」
その印象的な老婆の台詞。
本作、唯一の恋愛小説。
一人の人だけをずっと大切に愛し続けることができたなら、どんなに素晴らしいのだろう。
しかし、それは現実じゃない。
きっとそれは夢物語。
この長い人生の中、何人もの人と出会い別れていく。
たとえ、永遠の愛を誓ったとしても。
それが現実。
それ故に、人は苦しみながら愛を語り続ける。
苦しくも温かい、温かくも苦しい現実の恋愛を書き綴った物語。
「FINE DAYS」の中では一番好きな作品です。
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