『仏教文学を読む事典』からメモ。田山花袋 | 空・色・祭(tko_wtnbの日記)

田山花袋を先駆とする自然主義文学が、岩野泡鳴や近松秋江のニヒリズム、デカダンスを経て、「現実暴露の悲哀」の果てに人間救済の危機意識をかきたてた大正の宗教ブームにつながっていく過程は、花袋個人にとっては自己暴露の告白『蒲団』を起点として、愛する女性に対する不安と懐疑そして生の空虚さなどの動揺から大乗仏教に救いを求めることを主題とした『残雪』に展開していく道筋と並行している。

愛欲の洗礼を受けて東洋的虚無主義を越え、浄土教的境地へ転身していくのが花袋の『残雪』から『白夜』そして『時は過ぎゆく』の過程であった。


『仏教文学を読む事典』武石彰夫